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鬼刻の夜明け―卒業式。鬼になった彼女を、守れなかった俺は  作者: MASAO
五章

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決意 2

 ウォンー

 シフトダウンで回転数を合わせる轟音が真夜中の峠にこだまする。驚く速さで疾走するライトが一つ。まるで、昼間のように見えているかの走りをするバイクが一台あった。

 ヘアピンコーナーをフルバンク、リヤタイヤをスライドさせながら駆け抜ける。夜でなければ路面についたブラックラインが目を釘づけにするであろう。峠道とうげみちは上りから下りへと変わり速度が更に増して行く、時折ステップペダルのバンクセンサーが路面と接地し火花を散らす。荒削りだがWGPレーサー顔負けのライディングテクニックだ。きついS字コーナーを過ぎたところで信号が黄色に点滅をしている。

 ウォンー

 バイクは減速をして右のパーキングに滑り込んだ。

 一台も車の止まっていないパーキング。

 普段なら峠のゲートも、そしてこのパーキングも夜は閉鎖されているのだが、どうやらこじ開けられたようだ。

 ブルーメタリックのスーパーバイクはトイレの前に停車をした。

「ははは、借り物にしちゃあ、よく走るぜ。楽しかったなぁ、さすがだ。コイツも悪くねーな」

 スーパーバイク1000cc。軽量モンスターのタンクをポンと叩き男は言った。

 白い革ツナギを着た隆司は単車を下りるとトイレに入っていった。

「ところで、どの辺なんだ、俺がパワーアップできる所はよ?」

 隆司は内に潜む鬼精体きせいたいに話しかけた。

 心の底でモゾリと動く。

(山深き所)

 以前より、はっきりと意識を感じられるようになっていた。

「ここから入るのか?」

(そうだ)

「そんじゃ、案内頼むわ」

 隆司は友人に対するように気安く言った。

承知しょうち

 鬼精体きせいたいがそれに答えた。

 隆司はパーキングの上にあるレストランの方へ坂を上り、登山道へと向かって行く。ここには今、隆司一人しか存在しない、夜の静寂が辺りを取り囲んでいる。隆司は外灯さえも消えている、レストランの脇から闇が広がる登山道へと入って行った。

「しかし、よく見えるなぁ」

 隆司の眼は赤く光っていた、夜目が利くようになったのではなく暗視ができるのだ。

「それに昨日、直人に斬られたこの腕もくっついちまうし、俺はもう人間じゃねえな」

 左肩をさすりながら隆司は誰に言うでもなく言った。

人外じんがい

「人外…つまり、ダークヒーローって事だよな?」

 鬼精体きせいたいは何も答えない。

 それからしばらくの間、夜の森の中を歩き続けた。時折、鬼精体の声に従い隆司は登山道を進む。山に入ってから一時間程たった頃、再び鬼精体の声が隆司の頭の中に響いた。

(左だ)

「またかよ。どこに行くんだ…左に道なんてないぞ」

 隆司は面倒くさそうに獣道を見て言った。

(もう少しだ)

「わかったよ」

 隆司は声に従い、うっそうと茂った道無き道を進み出す。所々で鬼精体きせいたいの声に従い岩を砕いて歩く。その際、必ず隆司を耳鳴りが襲った。どうやら結界を破っているようだ。

 三十分ぐらい進むと視界が開けた。

「ここかぁ?」

(そうだ)

 隆司に鬼精体きせいたいが答える。

 そこは野球でも出来るのではないかと言う程の平地だった。山間の途中で開けた土地、しかし山道から、かなり離れているので人目につかない。結界といい、明らかに人目をたばかってきた空間だ。

「で、ここに、その力があるのか?」

 隆司は辺りを見渡しながら言った。

(そうだ)

「それは、どこにあるんだよ」

(あそこだ)

 鬼精体の示す方向に隆司は目をこらした。

「…あれか」

 隆司は闇の中、平地の中央に辺りの風景と一体化している小さな、今にも崩れてしまいそうな古いほこらを見つけた。

(あそこに、お前の望む力がある)

 鬼精体の言葉に誘われるように隆司はほこらへ向かった。今まで気づかなかったが、この開けた地には草も木も生えておらず土が剥き出しになっていた。それどころかほこらから何か、力がにじみ出しているようにさえ隆司は感じた。

(気がついたか)

 鬼精体きせいたいが語りかけてきた。

「何なんだよ? ここは。異様な雰囲気だぞ」

 隆司自身が異常な状態なので、周りの気配に鈍感になっていた。特に同質の気に対しては。

(異界のようなもの)                         

「このほこらの中から何かを感じる」

 隆司は小さな祠を開けた。

 ドクンッ

 心臓が一際ひときわ大きく拍動はくどうすると隆司の全身に悪寒が走った。

 中には楕円の庭石に似た、何やら護符の張られた石が入っていた。

「何だぁ、こりゃあ!?」

 隆司は拍子抜けした声を上げた。

「おい。こんな漬物石つけものいしが俺の何に役立つってんだよ!」

鬼石おにし

「…オニシだあ?」

(そうだ)

鬼石おにしって何だ。俺に直人をれる力が得られるのかあ?」

 隆司は半信半疑に返した。

(そうだ)

「それじゃよ。手っ取り早く力をくれよ…割っちまえばいいのか、この石を?」

 そう言いながら隆司はほこらの石に手をかけた。

(待て)

「何だよ」

鬼石おにしの中には、お前の望む力があるが、お前の憎むべき男の前で絶対的な力を手に入れ、絶望させるのも一興だ)

 珍しく鬼精体きせいたいが提案した。

「それも、そうだな…おもしろい! それ、いいじゃんかよ。でもどうするよ?」

(ここにおびき寄せればいい)

「そうか、そうだな。俺様のパワーアップを直人の奴に見せつけてやるぜ。そしてゆかりちゃんは俺の物。頼んだぜ相棒。ぎゃははははははっ」

御意ぎょい…)

 鬼精体きせいたいが微かに笑ったように答えたが、隆司はそのわずかな変化に気づく事はなかった。


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