平凡と嫌なもの
ポカンと椛は口を開けながら校長の目を見る。
え?うちが選ばれし者?頭が追いつかず、脳内がだんだん白くなっていくような感覚に包まれた。
「まぁ、そんなに堅く考えるのはやめようじゃないか。じゃあ……審査をしよう。」
審査……?椛は何も言えなかった……何も出来なかった。校長を見つめるだけしか。
「じゃあ、手を出してくれ」
椛は戸惑った。急に手を出せと言われてもこの状況では反射神経が余程良くない限り、即座に出せない。だが勝手に、自分の意思では無く、手が動いた。動いた手が校長の手のひらの上にゆっくりと置かれていく。
「なに……これ…は、はははっ……」
椛は震え声で言葉を投げ出した。何も抵抗が出来ない恐怖から来た声。笑える…彼女は全てがもうどうでも良くなっていく。最初からこんな運命を望んではいない。これは普通ではない。
嗚呼、今頃普通の生徒はグループとか作って新しいフレンド増やしてんだろうな……
「君に特別授業をしてあげよう。嫌だと言っても君には拒否権も無いしこの学校で一番の権力者は私だからね。君は私に逆らえないのだよ」
「そんな……あんまりですよ……」
口角を上げて笑顔を作りながら言葉をあげる。
脳内の隅では、特別授業めんどっちいな。とか思ってたりはしたけどそんなことはどうでもいい。
「君にはこの学校の守り神をやってもらう。守り神というのは自分自身の《能力・魔法》を使って、学校に来る被害等から守ってほしいのだよ。」
話についていけない。守り神なんてやってられない。全てを投げ出したい。自分は平凡な日常を送りたかったのに。
「属性についても説明するね。属性は自分自身が生まれ持っている性質のことを表す。そしてその属性は全部で4種類ある。一つ、自分の身体から高温な熱、又は炎を操れる火属性。二つ、自分の身体から自由な温度で操れる液体を出せる水属性。三つ、大地の力を借り自分の意思で植物を自由自在に操れる草属性。四つ、相手と接触することで接触者の体力を奪ったり、身体能力を下げる事が出来る妖属性。おーけー?理解出来ました?」
椛は真顔で訴える。理解出来ないに決まってるではありませんか。
急に能力だの魔法だの存在しないものを語ってるんですか……
「んん?君、魔法とか存在しないと思ってるでしょ。私が握ってる君の手に植物を生やすことだって出来るんだよ?」
「えっ……」
でも、科学的に考えて魔法なんてありえない。うちは小さい頃から思ってた。何とも夢を持たない子どもだ。
「はい。じゃあ属性を調べよっか。ーーー」
属性……火、水、草、妖か……うちはどれなんだろう。
「うーん……君は水属性の反応が強いから水属性は確定だね。薄い線は火と妖かな。」
「え?属性って一つでは……無いんですか?」
思わぬ回答に驚いてしまった。某スマホゲームは二つまで属性がある。それを基に椛は属性は二つまでと勝手に決めつけてしまった。
「属性に数なんて、関係ない。」
じゃあ、四属性持ってる人もいるかもしれないってことか……
「次に能力を調べよう……腕。出して。」
う……腕?なんで出す必要があるのだろうか。脈を調べる為かと思ったが、脈を調べるだけで自分自身の能力が分かるのはちょっと簡単だ。
「じゃあ、血取るから。じっとしててね。」
「……は?採血……?」
なん…だと…?
椛は採血ということが大っ嫌いなのだ。自分の血の色を見るのが恐怖でしかない。それにあんな細い棒を自分の腕の中に入れるなんてもってのほか。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい……身体の血液が取られるような感覚に陥る。
貧血……血が足りない……
「校長……加減を…かんが…えてください……」
校長に大量の血を取られ、椛は意識を失った。