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第一話 イオロス、最初の冒険の始まり

お知らせ


この作品は連載を中断しました。

この作品につぎ込むはずだったアイデアは、新連載「争いはすべてテーブルゲームで解決する世界の物語」

につぎ込むことにしました。

もしよろしければそちらの新連載に興味を持っていただけると幸いです。

 少年、イオロスは意気揚々と薄暗い森の中を進んでいた。

 明るいオレンジ色の髪。キリッとした目つきで、顔立ちは整っているが、15歳という年齢の割には幼く見える顔つきだ。

 着用しているのは革の服。野外活動によくある軽い怪我から身を守るのには十分だ。冒険の際にこれを着用する冒険者は多い。

 そんな彼はつい昨日、憧れの冒険者になったところだ。

 別の言い方をすると、冒険者ギルドでギルド員として認められたということだ。

 人によってはこの段階で苦労する。

 冒険者としての実力を何らかの方法で示さなければ、冒険者ギルドのギルド員とは認められないのだ。

 しかしイオロスの場合は違った。

 彼の生まれつきの才能が物を言ったのだ。

 彼のような才能を持つものは冒険者ギルドとしては大歓迎なのだ。

 即日でイオロスはギルドの会員証を発行され、翌日にはクエストを斡旋された。


「この辺りのはずなんだけど……」

 イオロスは独り言を言った。

 今、イオロスが受注しているクエストの内容は、「ゴブリンに奪われた指輪を奪還する」というものだ。

 木こりの老人が大事にしていた妻の形見の指輪が泥棒ゴブリンに奪われたので、奪還してほしいという依頼。ギルドが認定した危険度は2。危険度は0が最低なので、下から三番目の難易度。

(多分楽勝だな。)

 イオロスは楽観している。

 故郷の村にいた時から、冒険者の真似事はしてきた。

 今回違うのは、冒険者ギルドの正式な依頼というだけ。

 そんな事を考えていた、その時だった。


 ゴッ。


 鈍い音が、防具をつけていないイオロスの頭のあたりで鳴った。

 大きさが握りこぶしほどもある石が、飛んできてイオロスの頭に命中したのだ。

 その場に崩れ落ちるイオロス。


「ケケケッ、馬鹿な人間だぜ」

 草むらから数匹のゴブリンが姿を見せた。

 緑色の皮膚、手にはかぎ爪を持つ小人のような生き物だ。

 ゴブリンの一匹は投石紐スリングを手に持っていた。あれで石を投げたのだろう。

「我ら【森イノシシ】氏族クランの縄張りにノコノコと一人で入ってくるとは、とんだ間抜け野郎だぜ」

「背丈的にガキっぽかったな。捕まえて奴隷にでもするか?」

「めんどうくせえ。身ぐるみ剥いで殺しちまおうぜ?」

 ゴブリン共は口々にかってなことを言いながら、イオロスが倒れた辺りに向かう。

 背の高い草が茂っているので、近づかないとイオロスの姿は見えない。

「たしかこの当たりだ、お、いたいた」

 三匹のゴブリンが倒れているイオロスを取り囲んだ、その時だった。


「わっ!」


 イオロスが突然起き上がって、大声を出したので、ゴブリンたちは大いにびっくりした。


「う、うわぁあぁぁ?」

「な、何だこいつ!?」

「気絶してねえ!」


 ゴブリンのうち一匹は、後ろに飛び下がった時にバランスを崩してズデーン! と派手に転倒した。


「ずいぶんご挨拶じゃない、君たち? こりゃ、お仕置きが必要かなあ?」

 にこやかな笑顔で、イオロスはそう言った。


「ば、馬鹿な、たしかに頭にぶち当てたはず……!」

「ケッ、【飛び道具(ミサイル)無効】の魔法でも使ってやがったか。しゃらくせえ!」

 ゴブリンの一匹が剣を抜いた。

 他の二匹も武器を構え、戦いの態勢を取る。


「君たち、僕は木こりのおじいさんが取られたっていう指輪を取り返しに来ただけなんだ。それを返してくれれば、君たちに危害は加えない……」


「ケッ!」

 ゴブリンたちは醜い声を出すと、三匹同時に、違う方向からイオロスに斬りかかった。


 剣の鋭い切っ先が、同時にイオロスの体に振り下ろされ……。


 何も、起きなかった。


「はあ。」

 イオロスはため息を付いてみせた。

 すっと手を伸ばして、一匹のゴブリンの襟首を掴み、宙に持ち上げる。


「て、てめえ! 何する! やめろ!」

 持ち上げられたゴブリンは、短剣でイオロスの腕を攻撃するが、何故かその攻撃は全く通用しない。


「まさか、【物理攻撃フィジカル無効】か……!」

 別のゴブリンが震える声でそう言った。


「チッ! こいつを使う時が来るなんてな!」

 三匹目のゴブリンはそう言うなり、懐から赤い透明な石を取り出し握りしめる。

 次の瞬間、ゴブリンの握った拳から凄まじい炎が吹き出し、イオロスの顔面を直撃した。

 イオロスは捕まえていたゴブリンを取り落した。


「やったか!?」

「ああ、いくら何でも魔法を食らって平気なはずはない!」

「だけどよ、どうしてこいつ倒れないんだ?」

 3匹のゴブリンはお互いに顔を見合わせた。

 今、イオロスの頭のあたりは黒い煙に覆われている。


「君たち。いい加減にしてくれないと、僕も怒るよ?」

 不機嫌そうなイオロスの声が聞こえて、三匹のゴブリンは震え上がった。

「こいつ、魔法まで効きやしねえ!」

「まさか……まさかこいつは……!」


 三匹のゴブリンは声を揃えて、

「【ゲームプレイヤー】か!」

 そう叫ぶなり、一目散に逃げ出した。


「しまった、逃しちゃった……」

 イオロスは天を仰いだ。

 クエスト達成にはもう少し時間がかかりそうだ。


【ゲームプレイヤー】というのは生まれつきの適性がある者だけが就くことのできる職業クラスで、特徴としては、


・悪意、敵意をともなう攻撃をすべて無効化する


ということが挙げられる。


 ゲームプレイヤーの特徴はそれのみならず、更に強力な能力があるのだが、その説明、及び、なぜその職業クラスがゲームプレイヤーと呼ばれるのかの説明は後に行う。

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