3 あぁ,ジャイアン道!
映画を見るなら,ハリウッドの大作物?
いいえ。おバカな笑いのB級ムービーで。
手土産は,有名店のケーキ? 話題のロールケーキとかカップケーキ?
和菓子がいい! 出来れば季節の生菓子がいいなぁ。自分が食べたいだけか。
あぁ……こう言えたら,スッキリするだろう。でも,言えない。
小心者の私は,今日も周りに合わせている。
どうも,自分の好みは,世間様の『平均的な二十代後半〜三十代の女性』の趣向からずれているようだ。
今でこそ,様々な個性や好みを認める多様性って考えがあるが,私の子どもの頃は『風変わりな奴』と烙印を押されたような記憶がある。世間での流行から外れれば,即座に。
今はオタク文化も認められつつある。いい時代だ。『風変わりな』子どもだった私は,肌で変化を感じてたりする。
天邪鬼では,ないと思う。身内からも友人達からも「詐欺にあうなら,絶対お前だ」と,妙な太鼓判が押されるぐらい,人の言う事を真っ正直に聞いてしまうので。
となると,やっぱり私の好みはずれているらしい。しかも子どもの頃から。
松田聖子より中森明菜。トシちゃんよりマッチ。まぁ,これなら判る。A or B だ。(二十代後半から三十代の方は,わかりますよね)
が,特撮戦隊ものでピンクの女性隊員のスカートが気になった小学女子児童は,当時どれだけいただろうか。
いつ敵と戦闘態勢になるか判らないのに,動きにくいミニのタイトスカートを履いているとは,すごい。そこまでして,履きたいのか。いや,ちらりと下着を見せるお色気攻撃なのか。本気で「考えてやってるなら,すごいなぁ」という理由でピンクが好きだった。もちろん,雑魚の全身タイツの彼らも。倒されても倒されても,毎回元気一杯登場してくる彼ら。今やB級の定番ですが,愛らしいですよね。
小学生でビートルズを聞いてギターに挑戦し(まだ手が小さくGとEで挫折),アイドルバンドブームの中で文学にはまり,洋楽ブームの中で香港の俳優やアイドルに傾倒していった私。当時アイドルっぽい歌を歌っていたアンディ・ラウが,いまや香港映画を代表する俳優だ。時は流れた。
でも,社会人になった頃にも『烙印』はあった。お給料を頂ける身になった私がハマッたのが,寺院巡りに仏像鑑賞。
今は立派な趣味として認知されつつあるが,大型連休になると京都で妹が下宿していたのを良いことに,よく行っていた。さすがに当時,女一人で仏像を眺める人はあまり見かけなかったなぁ。
もちろん,人に言えない。また言うべきではないという,分別というか保身の術は身につけていた。が,何かの折に職場で「今度の連休の過ごし方」の会話で,私はバカ正直に「寺を見に行く」と言ってしまった時がある。
途端,場は静まり返った。上司は「まだ若いのにエライねぇ」と感心して,お遍路さんをやっていると勘違いしてしまった。同僚は「宗教に入ってるの? 」と引かれまくった。いやはや。
今でこそパワースポットとか,スピルチュアルとか言えるけど。大失敗だったなぁ。
その失敗から,未だに寺院巡りは本当に心を許した人しか打ち明けていない。
まだあるぞ。周りと話が合わない趣味がっ。
ずばり,雅楽! 能! 狂言!
生のLIVEで目にする機会も増えてきました。嬉しいかぎり。
え? よくわからない?
私も深くは知りません。ふははは。いいんです。大体で。だって,私のキッカケは装束と所作の美しさですもの。能は未だに難しい。
最近は授業で鑑賞する学校も増えているそうなので,見た人もいるでしょう。一度でいい。テレビでもやってるのを見てください。かなり気力を使います。
だって,予習しないと難解です。題目のあらすじはもちろん,その時代の背景や登場人物の履歴も。
そしてなにより,舞台がシンプルすぎる! 麻縄と紙と竹細工の小道具のみで表される世界! それは美しいんだけど,見る側が想像力を駆使しないといけない。
でも,そこが醍醐味なんですけどね。謡い方と舞い手と鑑賞者の気が合わさった時の快感。舞台に広がる現実よりリアルな想像上の美しい光景。凄いものがある。
そんなん嫌じゃ……という方。狂言はいかがでしょう。
基本,予習はいりません。太郎冠者? 主人公 Aのサラリーマンと思ってください。……それは大雑把か。
とにかく,手軽でブラックユーモアもあり面白い。最近は実験的な舞台も多い。そして,かっこいいお兄様たちも。能と違い素面で行われるのも,親しみがわくというものです。
狂言も「何言ってるかわからん!」という方。とっておきを教えましょう。
ずばり,平成中村座!! はい。歌舞伎です。
なんだ。と思うなかれ。これが,現代劇顔負けなのです。大道具,ばっちり。舞台は華やか江戸時代!
なにより,言葉は理解可能。お江戸ですからね。相撲の行司さんの言葉が聞き取れれば平気です。古典が赤点ギリギリでもいけますっ。
そして,お勧めは海外公演の映像。
「はぁ?! 」と思われる方,理由があります。
現代の日本人は,お江戸に比べれば異人同然。文化のギャップがありますから。
つまり,日本以外の文化圏に住む人の事を考えて,その差を埋める創意工夫が溢れている。これが,現代に住む日本人にも予習もいらず楽しめる。
かなりの冒険だと思うけど,初心者はここから入るのがお勧め。台詞回しも早い。見せ場は華やか。年一回の海外公演は,テレビでチェックできます。今年のは終わったけど……DVD,なるといいなぁ。
あくまで,私の意見ですけどね。関東圏に住んでいないので,生の歌舞伎は見た事ありません。そんな人の意見ですから。
暴走した……。そして,心ある良心的な古典芸能ファンならお気づきでしょう。
私のはまり方は,底が浅い。かなり,入り口で止まっています。
そうなんだなぁ。その業界の全体像が覗けたところで,私は満足してしまう。
そして,次なる興味へと移ってしまう。アニメにせよ,少年漫画にせよ,音楽にせよ,宝塚にせよ。
しかも時間を追ってチェックしないのは,まずい。移り気でそんな時間が取れないのもあるんだけど。
広く浅くミーハーに,ってのが知識を得るために心がけている事なんだけど。
そんな私にも,駄目な領域がある。
ズバリ! 経済モノとハードボイルド,海外小説。
数字を見るだけで,全身鳥肌で体が受け付けない。そして,痛いのは大ッ嫌い!! さらに英語はさっぱり判んない!!
映画やドキュメンタリー物も駄目。翻訳物は苦手。
出来るだけ,企業買収モノは見ておきたいと思う。でもどのドキュメンタリーも,冒頭で寝てしまい結局ゴミ箱行きにしてしまう。
極道モノの映画さえ駄目。ホラー映画見て笑える私が,何故か見れない。リアルに考えすぎるのだろうか。
海外小説は,多分翻訳者の色が文章に入るのが駄目なんだろうな。じゃあ,原書で読めよって? 私,エイゴ,ワカリマセーンッ。
唯一,児童書なら読める。ハリポタとか,子供向けにした推理小説とか。児童書ゆえ,簡単な言い回しが多いから翻訳も色が付きにくいんでしょうね。多分。
来年の目標,かなぁ。雑食を自認する私ですが,この苦手分野を克服したいものです。
こんなミーハーで移り気な趣味を持つ人が,近くにいればいいんだけど。
なんにせよ,古典芸能も流行り,香港芸能にも華流なんて名前が付いて,寺院巡りや仏像鑑賞も立派な趣味と認められる時代となりました。
そろそろ,カミングアウトしても……いやいや,やっぱり『風変わりな奴』と烙印が押されるだろうか。
いつか言ってみたいものです。
出来れば,ジャイアンみたいに。
あの受け入れがたい歌を歌い,嫌われても図太く歌い続けるあの姿。
年とともに毛が生えた心臓が,あと二つぐらい増えれば出来るでしょうか。
そして周りを巻き込んでいくっ。
「お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの」作戦だ!!
やがて周りは,同好の同志になっていくっ,なんて……書いてて虚しい。
……やっぱり,無理かなぁ。うん,身の程をわきまえよう。
となるとジャイアン,やっぱり貴方は偉大です。はい。