10 安く! 深く! 広く!
知識を得る。これはなかなか難しい。学生なら,毎日登校して講義に出席すれば,講師の話を聞いてれば,様々な事が耳に入る。が,社会人になるとこれが難しい事に気付くのだ。気をつけないと,自分の好きな分野か仕事関係の事しか入らない。物書きを趣味にしているモノからすれば,これはイタイ。というわけで,新聞は一通り眼を通す。経済面で鳥肌が立つ体質であろうと,とりあえず眼を通す。図書館に行けば,一通り歩いてみる。けど,難しい。どうしても好きなものに偏ってしまう。
自然に知識が広げられるものって,しかもお金をかけずに出来るものってないのか。いえ,あるんですよ。はい,TVです。
しかし,基本的に私はTVを見ない。ヘキサゴンなんざ,『羞恥心』がネット配信されてから知った。もちろん本家の番組は見たことはない。話題のドラマも見ない。これだから,周りと話が合わないんだよなぁ。でも,しょうがない。面白いと,思えないのだ。
何故だろう。恋愛ものだの,トレンディーものだの,同級生や同僚が騒いでいるのが,理解出来なかった。それでも,あまりに会話に入れないのはマズイかなと,見たりする事も。でも,どうも自分の趣味に合わない。理解も出来ない。海外ドラマなら,なんとか。韓国ものは時代ものの一話だけ見る。話は好きではないが,そのど派手な衣装は面白い。唯一例外は,アメリカもの。学生の時見てたのは,『フレンズ』『フェリシティーの青春』。ここ数年のだと,『24』『HERO』とかチェックしましたよ。でも,シーズン1で脱落。いやはや……脚本の暴走についていけないのです。話や映像は面白いんですが。アニメも,いわずがな。
さて,こんな私が唯一チェックするものがある。ドキュメンタリーです。
結構,役に立つんですよ。物書きしてると。あまり周りにドキュメンタリー好きがいないんですよね。だから,書くぞう! 叫ぶぞう! あ,引くなら今のうちですからね。
ドキュメンタリー。ひとつの事柄に,台本ナシで本質に迫る映像美。私はこう言い表そう。
それは,構造や映像の美しさだけではなく,対象の人や事柄の心を美しくも醜くも映し出すモノです。
対象をある期間追わねばいけないからか,取材するのに贅沢な手間が必要なのでしょう。中心は天下のN○Kとか教育番組となってしまいます。その手の回し者じゃないですよ。私,一介の視聴者ですから。ココ,強調です。はい。
日常的にチェックするのは,教育テレビの『地球ドラマチック』と『サイエンス・ゼロ』。対象は中小学校の子どもです。が,侮る無かれ。関心のない事柄も判りやすく,映像の力を駆使して解説してくれる。しかも週一で,海外の子供向けドキュメンタリーも見れる。最新の科学技術を紹介してくれる。子供向けって,馬鹿に出来ないんですよ。どんな高度な事柄でも,判りやすく噛み砕いて解説してくれますからね。入門から上級者までの知識を一時間で解説してくれるこの番組は,いいと思う。
あと,世界の子ども達の日常生活を追ったもの。四月から『カラフル』という番組に変ったんですが……。これは昨年度のものが良かったかなぁ。もう,ビルマの少年から,フィギアスケートの選手目指すフランスの女の子まで,貧富の差を誤魔化さず正面きって描いてました。食事内容から勉強時間まで,きっちりと。残酷なまでに,生まれた場所で生まれる格差というものを映していた。番組の趣旨は違うと思うのですが,色々考えさせられましたね。ナタを持ち,野山を駆け巡り鳥を絞める少年。夜の歓楽街で母親が切り盛りする屋台を手伝う少女。お手伝いさんの作る夕食を食べる少女。貧しくとも家族そろってその日暮らしをする水上生活の少年。どの子も,親の側にいる時はとびきりの笑顔だった。
去年のもので,私なりにヒットしたもの。
聖地エルサレムの紛争を描いたもの。これはどれも秀逸だった。見るたびに,恐ろしかった。考えさせられた。沈み込んだ。もう,一言とか,コメントとか,重すぎて書けない。
自爆する少女と,被害をうけて無くなった少女を描いたもの。その互いの親の叫びは,辛くて耳から離れない。
今年のアカデミー賞の候補作品にもありましたね。ほんと,ここを舞台にするものは,重い。西洋とイスラム。相対する文化が,ここまで牙を向き合うかと,考え込まされます。
あと,インドの民俗音楽を学ぶ少女もの。
これは,微笑ましいやら面白いやら。とにかく,少女の父親が音楽学校の先生で,消えてしまいそうな伝承音楽をテープに収めるのをライフワークにしているのですが……娘にも楽器を持たせるのですよ。巷で名人とされる老人に『ウチの娘に教えてくれ』と頼み込むわけです。だけど,娘は嫌々だったりする。これがまぁ,日本のお年頃の少女とお父さんのやり取りみたいで。笑いながら見てました。民俗音楽や楽器の資料になればと見てましたが……微笑ましかった。
イギリスの男子校に合唱を広めようと奮闘する教師を描いたモノも,面白かった!
これ,先日のGWにもやっていたので見た人いるでしょうか。『クワイア・ボーイズ』というタイトルだったかな。
いやもう,青春奮闘記ですね。こういうの,私弱いんですよ。もちろん,主役の合唱担当の音楽臨時講師の彼が私好みだったという事もある。あ,すいません。
でもね,「頑張れば,その結果が出てくるよ」というメッセージがいいんです。男子校ゆえに,合唱なんてという生徒達や教師達が,少しずつ影響されて唄いだしていく。なんか,青春モノなんです。素直に,楽しめました。
さて,最近のヒットも紹介しましょう。
これ,見ている人いたらうれしい。『タイムスクープハンター』です。5月一杯で終わる予定なので,是非とも見て欲しい! 再放送して欲しい! (5月13日現在)
ドキュメント? という疑問がついてしまう番組です。未来のジャーナリストが,歴史に埋もれた無名の人の奮闘を記録していく。という設定なんですが……とにかく時代考証が本気入ってます。その時代に入ってという設定ですから,その時代そのままの格好で役者さんが出てきます。飛脚役の俳優は,フンドシです。落ち武者は地毛でうっすら毛がはえた月代を作ってます。戦国の医僧は鎖帷子着込んでます。とにかく,俳優さん,リアルです! 時代劇や大河みるより,勉強になりますよ。リアル,追求しすぎ!
男ばっかと思っていたら,先週はチラリと女性も。明治初期の設定ですがまぁ……リアルさに息を飲みました。だって,江戸後期から明治に残っている写真そのまんま! 着物の柄や艶やかな着こなし方,その化粧法まで,そのまんま! 写真から出てきたかのような,白粉の塗り方! 感動しました。鳥肌立ちました!
時代劇とかって,現代風なんですよ。あんな今風の化粧してませんよ。篤姫だって,お歯黒してたはずだっ。いえ,……大河は好きですよ。今年も見てますよ。でもさ,割り切ってみてた面があるんです。歴史好きには「しょうがないな」と妥協してた所が。
でも,この番組は妥協しなくてもいい! お歯黒,結構! 地毛の月代,歓迎! フンドシ,万歳!
こう書くと,怪しい。でも,物書きに参考になるのは間違いない。一度,見てくださいな。あと数回しかやらないのが悔しい。これ,レギュラーなんないかなぁ。
とはいえ,物書きの資料の基本は本でしょうね。でも,映像資料もいけます。どちらにせよ,広く,深く,色んなものに興味を持っていく事ですよね。こうやってドキュメンタリーを探していても,録画したり視聴したりするのは,自然と興味があるものになりがちです。難しいなぁ。
こんな偉そうな事を書いてますが,一人の学者を中心に数学の理論を追求するモノを見ていながら,結局テーマの数学の理論は解説すら意味不明。視聴数分で『これは……一人の数学者の人生だ』と視点変換した私です。数字は苦手なんです……。歴史とか民俗学とか,そっちに流されてしまいがちだ。
そう。TVは色んな事柄を紹介はしてくれます。そこから,学ぼうという意欲を持っていないと駄目なんですよね。好奇心旺盛な心を持ち続けていく事。モノカキを長く続ける要素の一つなんでしょうね。ココまで色々書いた私も頑張らないと。