乙女ゲームの世界にヒロイン転生したら攻略対象の恋愛観は全員BLだった
攻略対象たちが同性愛者だったと知った瞬間の転生ヒロインの嘆き。
※BLイチャつき描写(R指定なし)は23行中1行のみ。念の為、ボーイズラブを入れておきます。
乙女ゲームの世界にヒロイン転生したら勝ち組だ思うでしょ?
悪役令嬢やモブですら逆ハーできる世界だから、ヒロイン転生なら勝ち組に決まってるって。
ヒロイン転生した今なら言える。
ヒロイン転生しても勝ち組じゃない。
でも、悪役令嬢やモブが既に逆ハー形成してたってわけじゃない。
そのゲームが苦手だってわけでもない。
私が転生した乙女ゲームは無課金でどこまでもやり尽くせたほど、得意なゲームだったから。
この『戦国の世でキミと逢えたら(略して、戦キミ)』は内政も合戦も攻略対象である武将との親密度で決まってくるから、それを上げておけばよかった。
武将たちはヒロインと恋するまで、妻どころか側女もいない状態。一部ではBL世界だと言われていたゲーム。
だって、強い国や豊かな国の場合、武将たちの能力は恋愛ブースターがかかっているってことになる。
だから目の前のリアルがキツイ。
攻略対象の一人目と出会った、ここから逃げ出したい。
逃げ出したらゲームが始まらないけど、逃げ出したい。
なんで、BLで盛り上がっていた『戦キミ』の世界に転生したとわかって、ゲーム通りに動こうとしたのかわからない。
どうして、ゲーム通りに動こうとしたのよ、私!
過去の自分に文句言ってやりたい。
ゲームとまったく同じ黒髪のワイルドイケメンが寄り添うように立つ男の腰をがっちりホールドして、ゲームと同じセリフを言ってくる。
「面白い奴だ。俺と一緒に天下をとろう」
承諾するより逃げ出したい。
ここは乙女ゲーム『戦キミ』の世界。ただし、攻略対象の恋愛観は現時点で全員BL。
彼らと恋に落ちる前に男同士でイチャつく姿を延々と見せつけられたら私の精神力が尽きる。
ゲームの時は気にならなかったけど、実際に目の前にBLを突き付けられた私は死んだ魚の目をして、乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
制作会社は何考えてこのゲームを作ったのよ!!!
ゲーム制作会社社内の会話:
「『恋愛観がBLだった攻略対象者があなたの愛で目覚めます』って、テーマはどうかしら?」
「もちろん、乙女ゲーだけじゃなくて、BL版も作るのよね?」
「これでBL版は作らない。作っちゃダメよ」
「え?」
「BLでビッチ主人公なんて却下!! ドS主人公以外はビッチ主人公に需要なんてない!!」
「言いきっちゃうんだ・・・」
「乙女ゲーの逆ハーは許せても、BLゲーのハーレムはみんな仲良しノーマルエンディング以外許しちゃダメでしょ!!」
盛り上がっている女性陣を、ただ一人性別が男であるプログラマーは遠い目で見ていた。