病院の悪夢
いやぁ、つい出来心で。やってみたかったんですよ、こういう話
「今日で検査も終わりましたし、内蔵に損傷は無いので次の食事から食べられます」
一体どんな体してるんですか、と若い医者は苦笑していた。
入れ替わりで結果を聞くために外に出していた優が駆け入ってきた。いつの間にか、師匠も来ていたらしい。
「んで、裕一どうだったんだい?」
優が僕に抱きついているのを尻目に師匠が聞いてきた。単に見慣れただけかもしれない。毎日来るとすぐにこれだから。
「臓器は無事だから、今日から食事ができるって」
言い終わらないうちに、師匠の目が細くなりニヤリと笑うとまだ時間はあるな、とかよく分からない事を言って急に出ていった。
「大丈夫かの、裕一?」
そろそろ夕食という頃になって師匠と一緒に歩水がひょっこり表れた。2人そろってニヤリと悪どい笑みを浮かべている。病室が急に、死刑台になった気分だ。
そこへ看護師さん(敢えて女性であると言及しよう。意味はないけど)が入ってきた。どうやら食事の時間らしい。思えば入院などしたことも無かったので、病院食というものを食べたことがない。やはり、よく聞くように不味いのだろうか? そこまで考えてふと気付いた。今僕の両腕は骨折等のせいで食事など到底叶わない。
…………やべぇ、どうしよう!?
「なんじゃ裕一? 別に気を使わなくて良いぞ?遠慮せず食べると良い」
「そうそう。遠慮はいらないからな?」
しかもこの2人確信班か!!
「裕一、これじゃご飯食べられないでしょ?わたしが食べさせてあげる!」
はい?…えぇ!?
いやちょっと待って!あ〜ん、じゃないって!外野2人が明らかに狙ってましたってしたり顔だから!
「む〜、早くぅ!」
「ちょっと待て、落ち着け!まぁ、僕も落ち着いてないけど!」
情けないけれど、一番錯乱してるのは間違いなく僕だった。歩水は隠すこともなく大爆笑してるし(笑い方が明らかに女の子のそれではない)、師匠に至っては笑い過ぎて悶えていた。…………どうやら逃げ道は無いらしい。
「あ、あ〜ん」
「はい、あ〜ん!」
恥ずかしさで、軽く意識が飛びそう。
「兄さん!」
空気が凍った。よりによってこのタイミングでなくても。
「何やってるんですか!?」
「何って、裕一にあ〜んをやってるんだよ!」
最悪な言い回しだった。しかも何故か紗奈も私もやりますとか言ってるし。
師匠と歩水は笑い死にそうな勢いだし。とりあえず、足掻いてみようか。
「師匠と歩水はもういいでしょ?他に何かする訳でもなさそうだし」
「なんじゃ裕一、ウチらにもやって欲しいんか?しょうがないの、ほい鼎さん」
してやったりと言わんばかりの顔でニヤリと笑みを濃くした歩水は師匠にもスプーンを渡した。おそらく持参。
……なんか紙一重で生き延びたはずなのに恥ずかしさで心が折れそうだ。いっそあの窓から飛び降りてしまおうか。
「騒がしいですよ〜」
新人っぽい医者が注意をしに来た。部屋から出ていく時のゴミを見るような彼女の目を僕はきっと忘れないだろう。
病院なんか大嫌いだ。
おまけ
このあと、数日におよび3食毎回こんな感じなことになり騒がしいとお説教(裕一のみ)をされ、病院ではピンク色の個室という伝説が残りましたとさ♪
と続きます(笑
次回も、どうぞよろしくおねがいします!




