むかしから今へ
「今まで生きてきてたぶんあの時が一番泣いたんだろうね」
二人の少女は何も言わない。困惑しているようだった。自分の感情、それがどういったモノなのかよく分からないんだと思う。
「でも、この話はもう少し続くんだ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
裕一少年はそれからほぼ半日泣き続けた。青年医師が看護師を呼ばなければもっとその場に居続けただろう。ベッドに強制送還される頃には肉体的にも精神的にもボロボロだったらしく翌日にひどい高熱だった。ただ頭だけは妙に冴えていた。
おかげで、熱が下がる時には何をすべきかは大体イメージできた。
遺体の状態等も考えて、翌日に通夜が行われた。来たのは数人の親族だけで裕一は形の上では喪主だったが呆然としていた。泣いている伯父に言われた
「お前のせいだ」
という言葉だけが鮮明に残った。
次に、形見分けという名の遺産争いがあった。裕一にとってこれだけは死守しなければならなかった。せめて、妹の学費や帰る場所だけは守ってやりたい。結局、遺産の全ては兄妹のモノで落ち着いた。揉めに揉めたが、叔父が
「人として恥ずかしくないのか!!」
と怒鳴ったのが決定打になった。そして叔父の家に引き取られる事も決まった。
叔父の一家はあたたかく裕一を迎えてくれた。特に裕一よりも2歳年上の紗弥加は弟を欲しがっていたのでとても可愛がってくれた。しかし、
「姉貴になるのってなんか憧れるのよね〜」
という発言からも分かるようにやや変わり者で、可愛がられ方も変わっていた。そんな風に4人めの家族として裕一も受け入れられたが彼自身の負い目や引け目、元々の家族に1人入っていくのは容易ではなくなんとなく家の中でも漂っていた。
その内裕一は学校でも浮く存在になった。元々あまり人付き合いは良くなかったし、学校外での出来事を友達に当たってしまってからは、まともに友達と呼べたのは帝と将だけになった。どんどん裕一は荒んでいった。
ある日の学校帰り、裕一はここ最近家に帰りたくなかった為に公園でただ座って時間を潰している。何をするわけでもない、ただベンチに座って時間を潰していた。
「何やってんだ?こんな場所で?」
突然、女の人に声をかけられた。裕一には声をかけられるような理由がわからなかった。そもそも見知らぬ人だった。
「……別に、ただ時間潰してるだけッス」
普通なら完全に無視する所だがもうこの人に会う事もないし、なにより暇だったので返事をした。この時の裕一の学校での様子を考えれば返事をしただけでもかなり珍しい事だった。
「お前、流の葬式からずいぶんと暗くなったな」
見知らぬその人は独り言のように呟く。
「俺の父さんを知ってるんですか?」
裕一は目を見開いた。父の葬式は急だったので親戚か、かなり親しい人しかいなかったはず。
「まぁな。それよりお前、ウチに来ないか?」
「遊びにですか?」
「そうじゃなくて。う〜ん、つまり養子?」
「なんで疑問文なんですか…。それ以前になんでです?」
裕一が見たところ、この人はまだ30いかないくらいの若さだろう。この人だって恋愛や他の個人的な事があるはずだ。そんな事の邪魔を裕一はしたくなかった。
「流との約束でな。万が一お前の親が死んで、お前がかなり参ってたら私が引き取るつう約束なんだ」
「俺、聞いてないッスよ!?いつ、そんな約束を?」
「確か……去年、流が星座占いで最下位だった時だな。占いがもの凄い不吉だったらしかったんだけど、あんなに真顔で頼まれてしかも理由が星座占いなんだから大爆笑したね」
「父さん何やってんの!?」
「まぁアイツがアホなのは元からだろ。んでどうする?」
「いや、これ以上他の人に迷惑かけたくないのでやめておきます」
葬式で伯父に
「お前のせいだ」と言われてから裕一の行動の基準は他人に、特に叔父の一家に迷惑をかけない事だった。その為なら我を殺してさえいた。
「迷惑ならこんな提案しないっての。むしろ家事の負担減るんだし」
最後の方はあまりに小声なので聞こえなかった。
「……でも俺は」
わずかに下を向く。公園の砂が風にのって飛んでいる。
「あ゛ー、もう決めた!もうお前、ウチに来い!決定だぞ!んで、もうお前一人称に俺って使うな。それは今から私のモノだ!」
〜〜〜〜〜〜
「そう言って、その日の内に僕は師匠の養子になったんだよね」
僕の顔は今、苦笑しているだろう。でも、師匠には本当に感謝している。苦しかった時期を終わらせたのはあの人だ。まぁその師匠の家でひどい目にあったのは確かだけどさ。
「秋ちゃん一人くらいウチにても問題ないよ。だけどさ、もう少し家族といてみてもいいんじゃないかな?それでもダメならウチに来ればいい」
秋ちゃんは小さくだけど確かに頷いてくれた。思っていたよりずっと聡い子だ。
「…やっぱり、今日は帰ります」
小さくそれでも決意の籠った声だった。
「分かった。じゃあ、またね」
もう今僕の言うべきことはない。ただ見送るのみだ。
「あの!」
「うん?何?」
突然呼び止められ振り向いた。
「裕一お兄さんって呼んでいいですか?」
正直なところ、これには面をくらった。
「別に良いけど、きっとすぐに使わなくなるよ」
なにせ、優が既に呼び捨てだからな。別に良いけどさ。
ありがとうございました!そう言って秋ちゃんは帰っていった。
「ねぇ裕一?」
「何?」
夕食を食べていると優が突然話しかけてきた。
「わたしってここにいても良いのかな?」
そう言う優はやっぱり寂しそうな顔をしていた。
「当たり前だろ。ここはお前の家でもあるんだから」
「えへへ。そうだね。これからもよろしく、裕一お兄さん!」
ガタッ!
「やめてくれ。なんか調子狂うから」
それから夕食中、僕は優に弄ばれた。それでも優の目の奥は揺れ続けていた。
因みに、その夜僕は師匠が出てくる《悪夢》を見た。翌朝は優曰く、ひどい顔だったらしい。
遅くなりました、すいません。
2話をつなげて、しかも暗めの話というのは無謀過ぎました。なんとか書きましたが、あまり良くないですね(苦笑)
この話については本当にどうしようもなく、僕自身改善策が分からないのでもし良ければ感想等でアドバイスをください。
次回からのんびりしていくつもりです!
ではでは、doubterでした!




