ウィズの世界
目の前に広がる青い空。もう何回この空を見ただろうか。町はずれの丘に寝ころびながらこんなことを考えていた。この世界に来て嫌というほどこの空を見てきた。晴れの日も雨の日も普通の世界と変わらない位普通に変わる。しかし、そのせいで元の世界がどんな感じだったかも思い出せない。実を言うともう元の世界の空がどんな感じだったかも正直な話よく覚えていない。何でこんなことをしているかというと、いわばたそがれたいのだ。定期的にこういうことをしないと元の世界を忘れてしまうようでとても怖いからだ。
「やっぱりここに居たにゃ。」
その声とともに草むらをかき分けてくる音が聞こえる。
「ごめん、ウィズ。急に一人になりたくてさ。」
「別に怒ってないにゃ、ただ探してただけにゃ。そろそろ晩御飯の時間にゃよ。」
「え、もうそんな時間?」
慌てて港付近にある時計台に目をやった。時刻はこの世界で6時を回っていた。
「ごめん、えーとご飯作る気力ないから今日は外でいい?」
「別にいいにゃよ、どうせ焼き魚なことは変わりないにゃ!w」
「はは、」
俺は苦笑いをすると立ち上がった。
「また、元の世界について考えてたのかにゃ?」
突然確信をつかれた言葉を言ったため俺は驚いた。
「まあ、そうだね、正直言ってこの世界でも学んだことはたくさんあって、正直に戻りたいとははっきりいえない、でも。」
「この世界は君を必要としてるにゃ、君もそれは同じなんじゃないかにゃ?」
再び口があかなくなったが、頭で思いついた。一言の言葉を言った。
「さすがは四聖賢だね。」
「にゃはは、今は猫だけどね。」
「そうだね、さあ、日も暮れそうだしご飯に行こう。」
「了解にゃ!。」
俺とウィズは町はずれの丘を離れ町に向かった。今日はどこで食べようかなーといわなくてもわかる顔で俺の隣をウィズが歩いている。
『君もそれは同じなんじゃないかにゃ?』
さっきウィズが言った言葉がこだまする。ほぼ毎日のようにあの丘に行ってここ世界について考えてしまう。この世界は現実とは違う、でも今この世界で生きていることは現実だ、つい数か月前までは画面の前で笑いながらゲームをいていた。でも今はこれがゲームとは思えない、むしろ思いたくない。この世界の人は生きている。それはまぎれもない事実だ、AIなのかNPCなのかわからないが。少なくともウィズは生きている。笑い、怒り、時に泣く。ますます現実世界とは何かわからなくなりそうだ。
俺は考えるのをやめ、夜でにぎわう町に急いだ。
港町トルリッカ
王都 ウィリトナ
森の村 ラリドン
108の異界のうちの一つ。数々の町から成り立つこの世界。
人はこの世界をこう言う『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』と
どうも、初めまして。赤鬼と申します。
今回が初投稿です。
前々から黒猫のウィズを題材にした話を書きたいと思っていました。
そんな中で今回このような機会が与えられたので書いてみました。
良ければ続きも書きたいと思っているのでよろしくお願いします。