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この世界の科学、あの世界の魔法  作者: SIM
第一章 この世界の科学
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2.ただの殺しの道具

 僕らは学校の屋上に戻ってきていた。それと同時に、途方に暮れていた。当たり前だ。

 すでに日は傾き、僕らの影は細く長く伸びている。

 何の手がかりもなく、あのロボットを探すだなんて不可能だ。

 まったく、あの図体でどこに隠れているんだ。

 この世界で使える魔法は使い辛くて敵わない。だから、上級上位魔法を使えるといってもそのほとんどを僕は使わない。

 必要に迫られた場合は使うが、違和感がありすぎて堪らない。やはり、世界の法則を捻じ曲げる魔術と、人の認識する事象を改変する魔法とでは感覚が違いすぎる。

 この世界の魔法は、気持ち悪い。

 まあそんな理由を抜きにしても、あのロボットを探し出すのに有効な魔法なんか無かった。

 結局のところ、僕らは手詰まりなのだ。

「どうする、ミナミちゃん」

 キタノもそれがわかっている。だからこそ、他の方法を模索する。

 僕らは考えることをやめない。

「どうするって言われてもなぁ……キタノは何か思いつかないわけ?」

「ミナミちゃんが土下座するとこを見せてくれたら教えても良いよ」

「え、あるの?方法」

「さあ、どうだろうね?それは土下座を見てからじゃないと教えられないなぁ」

 こめかみがピクピク動くのがわかる。

 やっぱこいつ、性格悪りい。

 ここで土下座するなんてナンセンス。あり得ない。そもそもしなきゃいけない理由がわからない。

「方法があるならさっさと教えろよ」

 そんな言葉にもキタノは耳を貸さない。澄ました顔でツンとしている。

 ……ちっくしょう……!

 僕は馬鹿だ。あのロボットを探す方法なんて思いつかない。

 だけど、キタノは頭の回転は良い。あのデカブツを探す方法を思いついたと言うのなら、本当に思いついているはずだ。

 ……………………。

「──お?」

 キタノの意外そうな声が頭上で聞こえる。

 僕は、土下座してこう言った。

「早く教えやがれストーカー」

 その言葉に、キタノの顔に青筋が浮かび上がる気配がする。

「ストーカー……ねえ、ストーカーってなんのこと?っていうかそんな言い方で教えてもらえると思ってるの?」

「いやいや、ストーカーでしょ。僕が転生したあとを追って異世界に来ちゃうとか怖いし。っていうかおまえが出した条件は土下座すること。その中に頼み方なんて入ってないし。だからさっさと──痛い痛い痛い、痛いッ!てめえ、頭踏むなよ!」

「いやぁ、ごめんねぇ?足が勝手にミナミちゃんの頭に引っ張られちゃってさぁ。靴脱いだだけ感謝してよ?」

「いや、靴下でとかむしろそっちの方が最悪だよ。臭っさいんだけど、どけてくれない?」

「あはははは♡」

「いだだだだだだだ!!」

 こ、この女ぁ……!

「お、教えてくださいお願いします──」

「最初からそう言えば良いのに、やっぱ馬鹿──」

「──クソビッチ」

 あ。

 思わず口が滑った。

「あっはは、嬉しいなぁ……こうして君と喧嘩できる日が来るだなんて、思っても見なかったよ。じゃあ、『喧嘩するほど仲が良い』って言うし──徹底的にやろっか♡」

 その後の展開は言うまでもないだろうが一応言っておく。

 喧嘩と言ったくせに僕から攻撃することを許さなかったキタノは、延々と僕をボコボコにし続けた。魔法による拘束を受けた僕は、それをただただ受け続けた。

 僕は何も悪くないはずなのに。

 拘束を解く魔法はある。中級下位魔法《解除》。だが、普段から使う魔法を極端に絞っている僕はその魔法を発動することができないまま──

 ちなみに、初級上位魔法《超反射》は役に立つので、反射的に発動できるように練習した。気持ち悪いけど。

 その点、キタノはそつがない。この世界の魔法にもすぐに順応し、使える魔法が初級下位魔法だけのクセして、機転の効いた魔法使用スタイルでこうして僕を圧倒するくらいには優秀だ。

 いや、まあ、こいつの場合女だから、ナノチップの《シャッター》を破るだけの力があるはず。

 《魔女》というのは、ナノチップの《シャッター》を自力で外すことができ、なおかつ上級下位魔法以上の魔法を使うことができる者のことを言う。

 そして、《シャッター》を外すことができるのは女性のみ。だからこその《魔女》。

 だから、キタノももしかしたら《魔女》になれるのかもしれないのだ。

 もしそうなったら、今度こそ僕はキタノの隣に立つことはできなくなる。

 なんだかんだで、キタノは僕より優秀なのだから。

 そんなことを置いといても、キタノには凶暴な面があるし、《シャッター》なんて枷、すぐに外れるはずだ。

 ようやっとキタノの暴力から解放され、僕は呻く。

「……やっぱりこの世界の魔法は、理不尽だ」




「私、街を歩きながら考えてたんだけど」

 そう切り出し、キタノはその方法とやらを語り出した。

「あのでっかさじゃ、ミナミちゃんの言った通り地上に隠れていられないと思う」

「でも、実際に見つかってない。どこかに隠れてるとしか考えられないよ」

「うん、でもさ、隠れられる場所って地上だけじゃないじゃん?」

「はぁ?……あぁ、なるほど。空か」

「そういうわけ。あの巨体を超速で動かせるなら、空に留まらせる方法があったっておかしくないし」

 やはりキタノは頭が良いというか、回転が速いというか。

「んー……じゃあ、試しに空一帯をぶち抜いちゃうか」

 空を見上げながら呟いた僕の案に、キタノは反対する。

「だ、駄目。それやっちゃ駄目」

「なんで。その方が簡単じゃないか。あんまり使いたくないけど、上級上位魔法ならそれができる」

「簡単かそうでないかとか、できるかできないかの問題じゃなくて……そんなことして、もし空を飛んでる飛行機とかにぶつかったらどうするの?ミナミちゃん、とんでもない犯罪者になっちゃうけど」

「うーん、それはそれで面白いかもなぁ。でも、ちょっと困る」

「でしょ?ならまずは落ち着いて──」


「でもまあ、大丈夫でしょ。飛行機、飛んでないし」


「ミナミちゃぁぁぁ──ん!?」

 中級上位魔法《超千里眼》。かなりの広範囲を、その場から動かずに視認することができる魔法。確か、魔力を飛ばしてナノマシンに、魔力が記録した映像を送るだとか、そんな感じの魔法。

 それで飛行機が飛んでないことはちゃんと確認した。ついでに鳥なんかも。

 その結果、屋上の上空に危険なモノは何もなし。

 というわけで、

 ──上級上位魔法《超爆咆哮ちょうばくほうこう

 上空に翳した右手に左手を添える。

 両の手から魔力が放出される感覚がはっきりと感じられる。

 空気が放出される魔力によってゆがんでいく。

 それに合わせ周囲の空気が低く唸る。それはまるで、獣の咆哮。

 右手の平で空気が圧縮される。

「こんな芸当を人間ができちゃうなんて──ホント、現代の科学まほうって凄いよなぁ」

 そして、放たれる。


 ────ゴウッッ!!


 圧縮された空気が解放され爆散する。

 押し出された空気は上空に向かって飛び、八方へとその威力を伝える。

 両手がビリビリと震える中、飛び散った空気が何かにぶつかる気配を感じる。

「──見つけた」




「──ッ、……なんだ?」

 操縦席の中でカグヤは呻く。

 空に浮かび、ステルスでその姿を隠していた《レオーネ》が揺れる。

 何者からかの攻撃……?

 いや、でも、今のは……上級上位魔法──

 まさか相手は自分と同じ──《魔女》?

 だがおかしい。東京区役所警察はまだ捜査に本腰を入れかねているという話だった。当たり前だ。これだけの混乱を前に迅速な対応を取れるなら、それはもはや人間ではない。感情を捨てた化け物だ。

 捜査がゆっくりと行われているのなら、今ここで《魔女》が出てくるはずがない。

 一体、誰が──?

 その答えは、すぐにわかった。

 《レオーネ》のアイカメラに映る影。

 ロクに手入れもしてないのであろうボサボサの黒髪が風に煽られ、まるで獅子のたてがみのようだ。

 背はやや低め。だが、細身のため短足な様子は見られない。

 学ランに身をまとったその青年を見据える。

「男じゃないか……なぜ、空を飛んでいる?」

 空を飛ぶ魔法は上級下位魔法、上級上位魔法にしか存在しない。

 民間人は、初級下位魔法しか使えないようにナノチップに《シャッター》が施されている。

 なのに、なぜあの青年は空を飛んでいる?

「──まさか」

 いや、そんなはずは。

 だって、そもそも上級下位魔法以上の魔法を使えるのは女性のみ。だからこそ、それらの魔法を使える者は《魔女》と呼ばれるのだ。

 だが現に、カメラに映る青年は空を飛んでこちらに近づいて来ている。

 なんなのだこの青年は。

「男のくせして──《魔女》なのか……!?」




 上級下位魔法《飛翔》

 体外に放出される魔力を、足の裏一箇所に集め反重力を発生させることで空を飛ぶ魔法。

 その出力は上級上位魔法《超飛翔》と比べると格段に落ちるが、僕一人の体重を支えて空に飛び上がるくらいなら問題はない。

 このまま、先ほど空気の反響があったところを目指す。

 そういえば、先ほど飛び上がる時キタノが何かを言っていた。

 だが、飛び上がる時の風でその声は掻き消されてしまい、僕の耳まで届かなかった。

 何を言ってたのかは知らないけど、ごめん。それ無駄だったよ。ざまあ。

「……おぉぅ」

 キタノに聞こえるはずはないのに、なぜか悪寒が走った。

「さてと……ここら辺のはず」

 流石に相手も気付いているだろう。この場を離れているかもしれない。

 ぬぅ……マズったか。ちょっと早とちりすぎたかな。

 もしかしたら、キタノはこの可能性のことを言っていたのかも。

 …………。

 はぁ、また小言を言われるだろうな──


「────ッ!」


 背中に氷を入れられたような感覚。鋭い痛みが背中を覆うような鋭利な感覚に、僕は呻く。

 これは……今まで体感したことはないほどに凄まじいが、間違いない。

 空気がピリピリしている、という、アレだ。

 これほどの魔力が空気中に溢れ出るなんてあり得ない。魔力送信施設が出力をミスった?んなバカな。そんなこと、50年も無かった。

 じゃあ、これはなんだ。


『──爆ぜな、ガキ』


 機械質な声が後ろから聞こえる。

 振り返れば、そこには魔力が空気中に放出されることで現れる空気のひずみが現れていた。

 間違いない。そこにあのロボットがいる。何らかの魔法で姿を消している。

「クッソ──!」

 慣れない飛行のため咄嗟に動けない。

 そればかりか、バランスを崩してしまい格好の餌食だ。


 ──そのまま空を飛んだら、あっちから丸見えで危ないんだけどぉぉー!?


 今になってキタノが何と言っていたのかを理解する。

 ああ、こういうことか。

 やっぱり僕は、馬鹿のようだ。

 こんなところで──ッ!

 背後の歪みはドンドン大きくなっていく。

「おいおい、そんな出力上げなくて良いでしょ。僕人間だぞ?それ、確実に消し炭になっちゃうんだけど。そしたらあんた犯罪者だぞいやだから待ってせめて出力半分くらいにしてくれぇぇぇぇええええ!!」

 上空で僕は一人叫ぶ。

 だが、その声は相手に届いていないのか、何もない空間にただ光が生まれ──


 ──僕に向かって、放たれた。




 ────ゴウッッッ!!


 上空で爆音が鳴る。

 それを、屋上で聞いていたキタノは額に汗を浮かべる。

「ミナミ──ちゃん?」

 ミナミは飛行に慣れていない様子だった。

 あんな状態で空を飛べば、格好の餌食だろう。

 だから言ったのだ。危ないと。

 だがその忠告を聞かず、ミナミは飛んでいってしまった。

 それを狙うように、何もない空間に魔力による空気の歪みが現れた。

 そしてそれが放たれ──

 こんな、ことって……ない。

 あの魔法の威力は恐らく上級上位魔法より上。

 つまり、《魔女》であるミナミでも防ぐことはできない。

 というか、防ぐことができる魔法があったとして、あの不安定な飛行中に咄嗟に発動できるほど、ミナミは魔法に慣れていない。

 あれでは確実に──

「──ザッケンナ」

 その声がどこから漏れたのか、キタノは理解していない。

「──ザッケンナ」

 もう一度、その声が漏れる。

 それはどこからだ。

 ──キタノからだ。

「ザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナザッケンナ」

 呪詛のようにブツブツ呟くキタノには、すでに理性がない。

 そして──




 葛飾無人放送局。

 魔法と前時代の科学によって成り立つ、無人の、東京区全域放送が可能な施設。

 テッペイとハルトはここで、テロ放送の手がかりになるものを探していた。

「特には何もなさそうですかね……」

 ハルトがぼやく。

「というか、他の人たちも呼んだほうが良いんじゃ──」

「必要ねえよ。むしろ邪魔だ。あいつら無駄に魔法使って、自分の目で探すってことをしやがらねえ。それじゃあ、相手の魔法に騙される可能性が格段に増す。

 マジックシガレットなんつーもんがあるんだぞ。幻覚なんて今じゃ珍しくもない」

「そしたら、それこそ人の目じゃ騙されませんか?」

「魔力も感じることができない俺が、魔力によって生み出される幻覚を感知することができるかよ。マジックシガレットみたく、体内に直接魔力を送って来るならまだしも」

 本来、魔力とは人体に害をきたすものだ。

 それをナノマシンが抗体になることで、己の力に変えている。

 つまり、ナノマシンがないテッペイはマジックシガレットを吸うと、体に毒を吸い込むことになる。

 テッペイがマジックシガレットを吸わない理由には、それもある。

 まあ単純に、幻覚で吸った気になる、という図式が嫌いなだけでもあるが。

「へぇ、そうなんですか……」

「おまえらみたく、魔力を受信するナノマシンがあるやつは幻覚に騙されるだろうな。自動的に魔力を受信しちまうんだからよ」

「ですね……そうなると、少し不気味ですね」

「あ?何がだ?」

「それって、もしかしたらこの街そのものが幻覚である可能性もあるってことですよね。志島さんみたいな人がいるから、そうじゃないってわかりますけど……」

 テッペイは素直に驚いた。

 最近の若者は、そんな考え方をしないと思っていた。

 前時代に、電気があることが当たり前であったように。

 現代において、魔法があるのは当たり前。それを疑う奴などいないと思っていたのだ。

 だがハルトは、この時代の人間でありながらその考えを打ち破っている。

 ──ははっ、一本取られたなこりゃ。

 部下の所業に嬉しく思いながらも、それを表に出すことはしない。

 今は、仕事に集中だ。

 そんな時だった。


 ────ゴウッッッ!!


 遠くで雷が落ちたような衝撃が二人を襲う。

「な、なんだ……ッ!?」

「そ、外に出てみましょう……!」

 放送局の外に出た二人を待っていたのは、強力な魔法を使ったと思われる魔力の残滓ざんし。まるでオーロラのように空を怪しく彩っている。

 視認できるまでに空気中に魔力が放出されるなど、普通の魔法ならあり得ない。

「なんだ、ありゃぁ……」

「あれが魔力ですよ……と言っても、あれだけ濃く放出されてるのは見たことありませんけど」

 志島は魔力に見惚れていた。

 柄にもなく、綺麗だと思った。

 だが。

「あれが……とんでもねえ魔法の痕ってことか」

 先の衝撃は、その魔法の余波か。

 あれほどの余波を伝える魔法が何に使われたのか。

 ……何かの、破壊か。

 結局、魔法なんてものは何かを傷付けるために生み出されたのだ。

「おそらく、今の魔法はあのロボットが使用したんでしょうね……となれば」

「あそこに、あの赤いロボットが──ッ!」

 この放送局に訪れたのはまったくの無駄足だった……とまでは言わない。

 だが、空にいるなどとわかってしまうと少し悔しいものがある。

「ありゃあ俺たちの手に負えねえな……機動課に任せるか」

「うぇ……あの《魔女》軍団ですか……?」

「露骨に嫌な顔をするな……俺も嫌だが。ところで、ロボットでも魔法は使えるもんなのか?」

「ああ……たぶん、使えると思いますよ。魔法って言っても、一応は科学ってことになってますからね。ロボットなんて科学の塊。ナノチップやナノマシンやらの代わりになるものが、あのロボットに取り付けられてもおかしくは──ああ、そうか。だから最近──」

「お、おい、どうした」

 急に考え込むハルト。

「──いや、最近空気がピリピリしてると思ったんですよ。ほんのちょっとなんですけど。で、それが一週間も続いてておかしいなぁと思ってまして」

「空気がピリピリって、あれか。魔力が空気中に散乱してるっつー」

「はい、それです。たまにあるんですけど……それが一週間も続くことなんて今までなかったので。でも、その理由がわかったかもしれないんです」

 先を促すテッペイに、ハルトは続ける。

「もしかしたら、ロボットに取り付けられたナノチップの代わりになるものが、東京区中の魔力発信施設から魔力を横取りしてたと考えれば……人間のナノチップに向かって放出される魔力が別のところに行って、それが空気がピリピリしてるんだと思っていたなら、説明がつくと思んですけど……」

「なるほど……確かに、あの巨体を動かすのに魔法は必須だろうからな。そのための膨大な魔力は、この区中から少しずつ奪ってたってわけか……。そんで、十分な量が集まったから動き出した、と」

 低く唸り、テッペイはこれからの方針を決める。

「まずは戻ってこのことを上に報告だ。その後のことは、……それからだ。機動課に任せるも、俺たちで捜査を続けるも、な」

「……はい」

 放送局を後にすることにした二人は、門から敷地外へ。

 その時、ハルトの視界にキラリと何かが映った。

「……ん?」

 少し気になったのでそれを拾ってみる。

「……ペンダント?」

 チェーン部分もないし、さらにはかなり小さいが、おそらくペンダントと見て間違いなさそうだ。

「なんでこれが、こんなところに……ここに放置されて、まだ新しいよな……」

「沖田、何してる!さっさと戻るぞ!」

「は、はい!」

 テッペイの声に、ペンダントを咄嗟にポケットに入れてしまう。

 そのまま、先を行くテッペイの背中を追いかけ走り出した。




「まったく……無駄な魔力を消費した。このロボットの難点は、威力を抑えられないことか……まあ、それでも良いか」

 むしろ暴れた方が良い。このロボットで暴れ尽くすことにより、他区のロボットを引っ張り出せる。

 魔力に関してももうすぐ解決する。このロボット起動時からずっと発動している魔法により。

 先ほどの青年は無事だろうか。いや、無事ではあるまい。

 神級神位魔法《覇破無怒バハムート

 あれほどの威力の魔法を食らって、生きていられたらそれこそ化け物だ。

 今の爆発を聞き、区役所警察の機動課が出てくるかもしれない。

 準備が整うまで隠れるつもりだったのだが……まあ良い。その時はその時。潰すまでだ。

 ふと、《レオーネ》のアイカメラがまた何かを捉える。

 今度はまだ幼く見える、セーラー服に身を包んだ女子だ。

「また《魔女》か……?しつこいな──!」

 凄まじいスピードで空を駆ける少女は、先ほどの青年よりも明らかに格上の《魔女》であることがわかる。

 まるで、最初から空を飛ぶ術を知っていたかのように舞う。

「まったく……計画通りには、いかないもんだなぁ……!」

 《レオーネ》のステルスは保持したまま、コア内で魔力を増幅させる。

 迎撃準備──開始。

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