プロローグ《反乱》
しかし彼女の下へ集まった人間達は種を手に入れることができなかった。それを良しとしない者達がいたからだ。邪魔をしたのは彼女の生みの親である科学者とその組織のメンバー達だ。
種を求め集まった人々は解散を強制された。
組織は彼女を窓の無い部屋に閉じ込めて、全ての行動を監視することにした。
彼女は全能なる改造人間、その組織のテクノロジーの結晶だ。その片鱗であっても外部に漏らすことは許されない。
暗く冷たく閉ざされた部屋の中で彼女は思った。全能なる改造人間も、所詮は“物”なのだと。
人の手によって生み出されたからには、人に管理されるのは至極当然のことだ。
それからしばらくして、彼女は部屋から出ることになった。
監視が解かれたというわけではなく、連れ出されたのだ。
彼女を連れ出したのは、種によって改造人間となった男だった。
彼が言うには、種により改造人間になった者達も彼女と同じく組織によって監禁されていたというのだ。
そして監禁から脱した彼等は組織への、人間達への反乱を企てた。
彼等は反乱を指揮する指導者を欲していた。だから彼女を助け出した。
彼女は全能なる改造人間。かつてはその圧倒的なカリスマ性で世界を思うがままに動かしていたこともあった。
反乱を指揮する人物は彼女以外に考えられなかった。
さらにもう一つ、この反乱に必要なものを彼女は持っていた。
それが『種』だ。
改造人間のスペックは常人を遥かに超越している。
しかし種としての数が圧倒的に少ないという、そう簡単には覆すことのできない弱みがあった。
そこで種をばら撒くことで同族を増やし克服しようと試みた。
彼女にはそれを瞬時に察することができた。
つまり、彼等は彼女を利用するつもりなのだ。
それを理解したうえで彼女は協力することを選んだ。
反乱を始めたころは改造人間が優勢だった。
改造人間のスペックは常人を遥かに超越する。
人間にできて改造人間にできないことは何一つない。
だが、その逆はある。
ある者は拳一つでビルを倒壊させた。
ある者は火炎を操って人間を焼いた。
そんな超常の力を行使する改造人間に人間達は恐怖し圧倒された。
さらに『全能なる改造人間』を指導者として迎え入れた改造人間達は、各々の力を一切持て余すことなく反乱を進めていった。
そんな圧倒的な改造人間達の姿を見て、人間を裏切る者たちも現れた。
力に魅かれるのは至極当然のことだ。
改造人間はその者たちにも種を与え、勢力を拡大していった。