葵(2)
「つめた……っ……」
小さく肩を竦めた千里。
でも、俺の手が冷たいんじゃなくて、俺が触れた千里の額が熱いんだ。
「ごめん、千里。プレゼントだよ」
「あ…………サンタ……?」
「うん。メリークリスマス」
起こしてしまったが、呉には無事にプレゼントを渡せた。
洸祈は部屋にいなかったからプレゼントは洸祈のお気に入りのぬいぐるみに抱かせておいた。
だから、プレゼント配りは千里で最後だ。
「プレゼント……何?」
「秘密。朝起きたら自分で確認して」
プレゼントの内容をサンタに聞くなんて野暮だ。喩え、千里が寝惚けていても。
「なら今……確認する……」
千里の熱い手が俺の手首を握り、
「え?……え!?ちょっ、千里!」
千里のベッドの中に俺は引き摺り込まれていた。毛布の中は熱と千里の体臭と汗の匂いが隠っていて、汗で湿った千里の胸にぶつかってしまう。
こいつ……汗だくだ。
「熱振り返してるぞ」
「うーん……サンタのお尻……若い……」
俺の尻を揉むな!
「俺はプレゼントじゃないから」
「でも僕には……最高のプレゼントだよ……あお」
「!?」
パジャマの隙間から千里が手を滑り込ませてきた。片手がズボンの方に入り、パンツ越しだが、尻を揉まれる。
だから、俺の尻を揉むな!
「プレゼントはこっちだから!」
俺は千里へのプレゼントを千里の眼前で振るが、
「プレゼントはあお……あおがいい……」
だから、俺はプレゼントじゃない!
それに、今回のクリスマスプレゼントは最終的には俺が決めて買ったものだというのに酷いぞ。
「熱に頭がどーにかなってるんだな。分かった、プレゼントは俺が開ける」
「あお……あお……何か苦しい……ぼーっとする……」
俺のズボンに手を入れたまま千里が体の力を抜き、長く息を吐いて目を閉じる。
俺が選んだプレゼントを千里に見せつけてやろうと思ったのに、散々俺の尻を揉んだ千里を怒るに起こることも出来ずに、ただ胸の内が温かくなった。
「もう何だかなぁ。…………おやすみ、千里」
「あう……服がぐちょぐちょで……気持ち悪いよ……」
はいはい。
先ずはパンツから千里の手を出さないとな。
千里のパジャマを脱がす前に、俺は剥がしかけたプレゼントの包装をそっと直した。
だってやっぱり、このプレゼントは千里に開けてほしいから。