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fairy tale  作者: トウリン
カクセイの兆
17/35

プロローグ

今回で全てのキャラクターが出揃います。

大事な相手を失ってしまった男と、惑う少女との出会い。

「ねえ、ママって、ムカつくよねぇ。『片付けなさい』、『勉強しなさい』、『早くご飯食べなさい』。怒ってばっか」

 そう言ったのは、絵里ちゃんだった。

「そうそう、弟ばっか可愛がるしさぁ。アイツが悪いのに、すぐ『お姉ちゃんでしょ』って」

 これは、真紀ちゃん。

「高木先生だってさぁ、ぜったい、ユウコのこと、ヒイキしてるよね!」

 プンプンしながら皆の顔を覗き込んだのは、美季ちゃん。

 それじゃあ。

「死んじゃおっか?」

 そう言い出したのは、誰だったっけ?

 覚えてないや。

 でも、誰かが言い出したことは、段々、皆に広まっていった。

「もうさ、生きてたってムカつくことばっかだし、いいことないじゃん」

「そうだよね、もう、みぃんな、おしまいにしちゃおうか」

「わたしが死んだら、きっとママだって、『ゴメンね』って泣くよね。そん時はもう遅いっての」

「ざまぁみろ、だよねぇ」

「高木だって、辞めさせられるかも!」

 キャー、と、高い笑い声が響き渡る。

 あたしはみんなの言葉を聞きながら、そっかぁ、そんなに死にたいんだ。だったら死んじゃったらいいじゃない。そうしたら、『楽』になれるのにって思ってた。

 死んじゃえばぁって。

 そうしたら、急にみんなピタリと黙って、フラフラ歩き出したかと思うと、団地の階段を上り始めたんだ。みんなは三階まで来ると、いっせいのせ! で飛び降りた。

 すぐに人がたくさん集まってきて、救急車が来たりおまわりさんが来たり、大騒ぎになった。

 結局、『サイワイナコトニ、シタガウエコミダッタカラ』3人とも怪我だけだったんだって。

 迎えに来た叔母さんに、「死ねなくて可哀相だね」って言ったら、スゴく変な顔をされた。だって、パパとママが『シャッキンク』で『ジサツ』した時、「オイテカレタあんたハカワイソウダケド、コレデぱぱトままハ『楽』ニナレルンダヨ」って言ったのは叔母さんだったじゃない。

 次の日に、気持ちが悪いくらいニコニコした『子どもの心のお医者さん』のところに連れて行かれて。パパとママの事まで、どういうふうに思ったのか、とか何とか、色々訊かれた。その日から、叔母さんがあたしの目を見なくなって、何だか変な感じだった。

 あたし、何かワルイコトしたのかな?

 叔母さんは、あたしのコトを怖がってた――気持ち悪がってた?

 とにかく、そんな感じ。

 そうして、三日後には、ここに連れて来られてた――この『研究所』に。

 初めて会った所長は、あたしのことを、スゴいって褒めてくれた。そして、『仕事』を手伝って欲しいって。

 褒めてもらえてあたしはとっても嬉しかったから、それからずっと、ここにいる。

 あたしの『仕事』は、『力』に怯えてつらい思いをしている子を、『楽』にしてあげることなんだって。あとは、時々、違う『仕事』も入るけど。それだって、『ワルイコト』をしているわけじゃない。頑張って頑張って、それでも報われなくてつらい思いをしている人を、助けてあげているだけ。

 そう、あたしは、みんなを『楽』にしてあげているんだから。

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