エピローグ
「どうだった?」
ヒラヒラと舞い戻ってきた紫の蝶に向けて、少女が問いかける。
――ふふ。楽しそうだったよ。愛璃も、馴染めそう。なんだか、拾われたばかりのノラの仔猫みたいだった。
「お姉さんは?」
――……元気だった。でも、何かに気付いたと思う。
「そうか。つらい?」
少女の言葉に、蝶はしばらく答えず、周囲をゆっくりと舞った。
そして、再び、鈴の音のような澄んだ声が響く。
――お姉ちゃんに、わたしの他に大事な人ができるのは……わたしよりも大事な人ができるのは、つらくない、と言えばウソになっちゃう。だけど、早くわたしのことを『思い出』にして欲しいと思っているのも、本当なんだ。わたしとお姉ちゃんの道は、もう、重なることはないから。重ねちゃ、いけないから。
蝶に、『表情』はない。
けれども、寂しそうな微笑を浮かべているであろうことは、少女には容易に想像できた。
だから、彼女は、微笑む。
「次に、行こうか」
――うん、そうだね。行こう。
また、新たな道を、作りに。
読んで下さって、ありがとうございました。
次はまた、別の主人公です。
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