あなただけに
探検隊が更新出来そうにないので代わりに短編です。月三回更新にしようと決めたのに。本当にすいません!恋の始まりのようなものを書いてみました。
ーー先輩。好きでたまらなかった人。先輩は誰を見ていましたか。
先輩はいつも優しくて美人というより可愛いかった。部活の中でも好かれていて友達が多い。まさかこんな文化系に可愛い人がいるなんて、と入部した時は驚いたぐらい。俺が運動部に入らなかったのは単純。文化系が簡単そうだから。帰宅部はなんだか嫌だったので簡単そうな、楽そうな部活にした。俺以外にも一年生の男子の同級生がいた。何人かいたので親しみやすく、すぐに入り込めたんだ。でも男子は一年生だけで二年生や三年生の先輩は全員女。俺が入ったら俺に寄ってくる先輩もいた。そんな中で唯一寄ってこなかった先輩がいた。それがあの優しく可愛い人気者の先輩。最初は目にも入らなくて名前も知らなかった。けれど同級生の男子達が先輩をからかって楽しんでいたから。先輩は笑いながら流していたけれど。その日から先輩が気になった。同じ部活に入っている同級生が時々俺に先輩のことを話す。からかって楽しんだ後に先輩の話が多い。
「なあ。あの先輩さ、可愛いよな! 細いし優しいし他の先輩はちょっかいかけてくるけどあの先輩だけ俺らがちょっかいかけないかぎり何にもしてこないんだよな」
「可愛いかもしれないけど喋ったことないし。ただ人気があるなって思ったぐらい」
「勿体ねえな。先輩と話したら結構楽しいぞ。天然なんだよな、あの先輩は。とりあえず挨拶でもしてみろよ」
こいつはその先輩が好きなんだろうか。そんなに優しいのか。一応、少し気になっていたしとりあえず挨拶だけでもしてみるか。噂の先輩を見ると仲のいい友達とお話し中。確かによく笑っている。笑わない日はないんだな。さっきまで話していた奴は先輩に話しかけられていたが適当に受け流すと人気者の先輩に近付いてからかい始める。先輩はニコリと優しく笑いながら受け流す。一応、声をかけてみた。
「おはようございます。先輩」
「あ、おはよう! ……えと。ごめん。君の名前は……?」
はあ? 覚えてないのか。まあ、俺も先輩のこと知らなかったけどさ。先輩は苦笑しながら周りにいる友達に俺の名前を聞く。すると友達は「自分で覚えな」と言った。先輩は俺に近付くと苦笑もまじった笑顔で俺に話した。
「ごめんね。私、人の名前を覚えるの苦手で。だから覚えるまで『君』って呼んでいいかな?」
「別にいいですけど」
この先輩はなんか先輩っぽくない。親近感がわく。先輩は花が綻んだような笑顔で俺を包み込む。
今考えれば俺はあの頃から先輩が好きだったと思う。優しい雰囲気と可愛い笑顔に惹かれたのかもしれない。先輩をからかい始めたのはあの日から。名前を覚えてほしくて、呼んでほしくて。だから同級生の男子も先輩をからかっていたんだ。先輩、まずは名前を覚えることから始めませんか?名前を覚えたら先輩と俺の本当の始まりですよ。だから先輩。今はからかうことしか出来ない俺を許して下さいね。
こんな先輩っていそうですね。私の周りにも後輩のことを『君』って呼んでる人がいるんですよ。後輩は「名前覚えてくれない」って残念そうに言っていたのでそれを元に。書いていたら続編とかも書きたくなりました。