インフェルノ
町の人々が後ろを振り返る。
「やはりきたようだな。殺せ。」
王が殺せと言った途端に町の人や兵士どもが襲ってくる。
助けるためだしかたがないと言い訳をして無差別に殴っていく。
ナイフだとか剣だとががからだに切り込みを入れていく。いくら強くてもこれだけ相手が多く。一人で戦うのは無理があった。
俺は使えない妖剣を振り回す。錆びた鉄のような匂いが鼻をさす。矢が降ってきて。周りの人や兵士、俺に突き刺さっていく。後ろから剣でいきなり。切られて倒れる。くそ、声も出せない。周りがぼやける。
俺は、またなのか。俺のせいでまた誰かが死んでしまう。そんなのは嫌だ。
「頼む・・・・・妖剣。俺に力を・・。」
ヨハネの顔を思い浮かべる。笑っているヨハネ。俺のために戦ったヨハネ、俺のせいでさらわれたヨハネ、そして今殺されようとしてるなんて。
「頼む・・・・これは俺の命令だ!。」
妖剣は全く動かない。
「命令が聴けないなら、ヨハネを助けるために・・力を貸してくれ!。」
しかし何も起こらなかった。仕方がないから。
立ち上がって周りの邪魔者を切り伏せる。何、妖剣なんかにたよってんだよ。
俺の力は意志の力だろ。ふざけんじゃねえ。あきらめてたまるか。ここで死んでたまるかよ。
町の人+αを倒すと。
とうとう、王が魔物の姿になって俺にとどめをさしに来た。
「意志の力はここまでだったの。」
俺の体が飛ばされて宙に浮く。なんでなんだ。なんでここで終わっちまうんだよ。
俺は助けたいんだ。なのになんで力を貸してくれねえんだよ妖剣。
王は俺が死んだと思って今度はヨハネを殺しにかかろうとする。
そんなことをさせたくない。でも体が動かない。処刑台に縛られているヨハネの目はどこも見ていなかった。
「何か言い残すことはあるか?ウィク。」
「ない。」
おいおい。なんかあきらめちゃってるよ。あきらめたら駄目だろ。ヨハネと目があった。
「やっぱりある。」
「なんだ?」
笑いながら王が聞く。
「マサヤ!!逃げろ!!。」
こっちを向きながら叫ぶ。でももう立っちゃたから。
「いやだね。逃げたくない。」
「どうして?」
「死んでほしくないんだよ。」
「そんな。自分が死ぬよりいいだろ。」
「俺はよくないんだよ。」
そういいながら俺は妖剣の刃を見る。
あいかわらず意味が分からない言葉だが何故か俺の頭は理解していた。
『俺の力を使いたいなら、お前の魂を消費するぜ』
と書いてあった。タマシイ?上等だぜ
あいつを助けるためなら、そんなのいくらでも払ってやるぜ。それに刃にはこうも書かれていた。
『俺に認められるためには、自分の欲望のためでなく、他人のために、使おうという覚悟がなければならない。そして今お前は私に認められた。』
俺が黙読し終わると妖剣が赤く光り出した。
「これが、インフェルノの力か。」
「貴様、何処でそれを!。」
「何驚いてんだよ。お前がこれを捨てようとしたわけが分かったぜ、お前これが使えないんだろ。」
「ふん。そんな物があっても、私には勝てない。今の天気は分るか?雨だよ雨。」
「だったらどうした。」
「いいか。雨が降っているということは、私の氷の力が増強されるんだよ。」
なんだそんなことか。俺は笑いだしてしまう。
「何がおかしい。」
「おいおい、強くなったのはお前だけじゃないんだぞ。俺はな妖剣だけ手に入れたんじゃないぜ。」
「なんだと。」
「まあいい。お前が死ぬ前に教えてやるよ。」
「人間風情が調子に乗りおって。」
氷の鳥が襲ってくる。前よりも素早く強くなっている。敵の攻撃をかわしながら、隙を探す。なかなか
ないな。でも今のおれには力がある。
「インフェルノ!!。」
妖剣の名を呼ぶと刃から炎が噴き出した。その炎が氷の魔物の魔法や攻撃を溶かしていく。炎と意味の分らない力を手にした俺の敵ではなかった。
「凍えて眠れ!!。」
氷の魔物がさけぶと口から凍結光線的な何かを出してきた。それが通ったところは、何もかもが凍りついてしまっている。しかし。
「インフェルノ!!。」
妖剣から炎を出す。凍結光線と炎がぶつかり合って妖剣が激しく震えている。俺は負けない。助けるん
だ。インフェルノの炎が凍結光線を飲み込んでいく。そしてそのまま氷の魔物の体を飲み込んでしまった。
「あきらめろ。今のお前じゃ、俺には勝てない。」
「わしは、わしは負けん。」
「無駄ですよ。」
!?。うしろからあの神父が歩いてくる。
「その妖剣は、あなたが取り込んだ宝玉の力を上回っている。その妖剣は、最強の炎属性の妖剣インフェルノですから。」
ほほ笑みながら、魔物に言う神父。
「そうだ、あきらめろ。戦いは終わったんだ。」
「わしは・・・・わしはあきらめ・・・。」
「うるせえんだよ!!。」
俺はそう叫んで、氷の魔物を消してしまった。