ツッコミどころ満載です
ー雅也ー
デュランダルと一緒に、男は地面に倒れて死んでいる。
俺は、頭の中に浮かんできた、葵を助ける方法とやらを試すことにした。
―ウィクはー
「ほい。ウィクちゃん。危ないからここ、離れようか。」
と声をかけられた。後ろを振り向き「誰?」と言う前に体が強く引っ張られる感覚がして、マサヤが助けようとしていたアオイの家がみえなくなっていた。
「誰だ?」
私は綺麗な女に声をかける。
なんか負けた気分。
「私は、ただの探求者。それにしても雅也君はなにをするつもりだと思う?あの死んだ葵ちゃんを助けられると思う?」
「無理だな・・・死者を生き返らせるのは無理だ。神もそれは禁忌だ。」
「そのとうり。で、この声は何?」
「は?」
何も聞こえないが、この女はふざけていないだろうから。耳を澄ませてみる。
「あ・・・これは、呪歌だな、複数の人で呪文を歌のように詠唱して強力な魔法を使うってやつだ。でもそんな呪文はなかったような・・・」
とてもきれいな音だ。複数の音程が混じっているように聞こえる。とても一人の人間が出している音だとは思えない。
「この歌・・・たしか、天界で流れてた。」
「本当か?」
天界なんてものがあるのか・・・。
「うん、『methバーガー』っていうハンバーガー屋さんで流れてた。たしかこの曲の題名は・・・・・忘れたけど」
・・・・・沈黙・・・・を破ったのは茜だった。
「さよなら、堕天使ダイモニアルコン・・・・。」
「ん?さっきの男と知り合いなのか?」
「ま・・・ね。ちょっと名前ぐらいは知ってるってだけの仲だけど。こうも簡単に殺されちゃうとは、やっぱり強いんだね。雅也君は。」
「こっちに炎が飛んできてるぞ!!あれ、マサヤが撃った奴じゃないのか。」
「あ・・・ほんとだ。」
炎はどんどんこっちに向かって飛んでくる。茜は微笑みながら妖剣を振り下ろし、炎の刃を消してしま
った。
「うん、こんなものかな。さて、そんなことより逃げた方がよさそうね。」
「なぜ?」
「え・・・・だって、禁忌を破るってことは神と天使に喧嘩売るってことだから。」
ー雅也ー
俺はひたすら唄っていた。
何故だか分からないが勝手に歌詞が頭に浮かんでくる。
俺ののどから出てる音とは思えない音が出ているんだが、ただなんとなくこれが葵を助けるために必要なことだと分かる。
俺は空に向かって右手を突き上げる。
―ウィクたちー
「おおおおおおおおお。すごいねえ、あの空に出てきた魔法陣。」
「あれは何なんだ、アカネ、お前なら知ってるだろ。」
自己紹介を終えた彼女たちはマサヤが禁忌を破るのを見続けることにした。
「あれ?たぶん冥界の門をこじ開けるための魔法陣でしょ、だから。」
といって指パッチン。
するとウィクと茜がぎりぎり入るくらいの円が出来た。
「この中にいれば、巻き込まれることはないね。」
「なにに?」
「見てれば分かる。2年ぶりだね、あれが開くのを見るのは。」
「お前は何歳なんだ。」
「97。」
「は?そんなわけないだろ。」
「だって堕天使だし。雅也君も永遠に生きられるね、殺されさえしなければ。」
まさか、年よりだったとは。空の魔法陣は巨大でこの町の空、全部を使って描かれていく。
「完成ね。」
97の堕天使が言う。
―雅也のところー
完成だ。あとは魔力を込めるだけ。
「こい!!葵!!。」
―ウィクー
「お、開いたね。」
茜がつぶやく。
空にひびが入った。
一瞬でこの世界の色が反転した。
「あれは・・・・。」
魂か?あの小さい淡い青のせつない光は。
雅也が光をつかんだ。もうないはずの左手で。
魔法で視力を強化したウィクが驚き、数歩下がろうとするが、茜に止められる。
「な、左腕が、再生してるだと。」
「ほう、すごいね。でも冥界の番人を怒らせちゃったみたいね。あなたはここにいなさい。
私は、ちょっと犬をぶっ殺してくるから。」
「おう。」
―雅也―
「葵・・・・。」
淡い青の光に向かって話しかける。
まだ駄目だ。呪歌をうたいつづけ葵の命を戻さなければ、だが魂は取り戻した。
空を見上げると、翼が生えた茜さんが、俺が無理やり開いたどこかの世界との門に入っていった。何を
するのか気になるが、俺は葵を助けるまでだ。
―ウィクー
なんなんだろうな。あいつらは、普通じゃない、翼が二人とも生えたし堕天使というのは本当だろう。
「堕天使がたどる運命は一つ。」
後ろから声がした。声の主は白く発光している布を体に巻きつけているだけの
「おっす。おら天使。」
と今すぐに言いそうな格好だった。
「お前は、天使か。」
「そうだよ、君は堕天使じゃないね。僕はガブリエル。神から、命令を受けて僕の兄たちを殺してこいってね。特に、冥界を開けたやつを優先しろってことらしいから。」
ガブリエルは笑う。
「マサヤのことか、だったら邪魔をさせてもらうぞ。」
「おいおい、魔法が使えても人じゃ勝てないよ、次元が違うんだ。人と僕たちは。」
「そうかも・・・しれない。でも、分かったんだ。」
「何が?」
「マサヤの、力の秘密が。」
「堕天使の力だろ。」
やれやれと首を振るガブリエル。
その態度が気に入らなかったのか。
「違う!!。あいつの力は、思いの力だ。まちがいない。あいつはいつも自分より弱い人のためにあの
力を使ってる。堕天使化というやつをしなくてもあいつは強かった。それは・・・あいつが。守りた
い。救いたいと思ってるからだ。だからあいつは知らないはずの人の蘇生術や冥界の門の開け方が分かるんだ。」
ウィクは怒鳴った
「ふん、あいかわらずだ、意思や意志などになんの意味もない。神が人に授けた面倒な荷物だ。」
「違う!!だったら今見せてやる。その意味もない力を!!。」
―茜―
茜は冥界の番人と話をしていた。
冥界の番人は、首が3つの犬『ケルベロス』と呼ばれていた。
見る限りでは話し合いでは済まなそうだ。
「なんか、地上で厄介なことになってるね、ウィクちゃんが殺されたら、雅也がキレて全世界ぶっ壊し
ちゃうじゃない。」
「我々には関係ない。」
「黙りなさい。この犬畜生が。」
「おい、言葉の使い方間違ってるぞ堕天使。」
「2年ぶりね。」
いきなり話題を変える茜。
「ああ、お前と戦うのもな。」
「あの時は負けたけど、今度はどうかな?」
「ああ、あの時は重傷で済ませたが今度は殺す。」
犬の口から炎が漏れる。
「あらあら、じゃあ。」
と言って茜はグラムを振りおろす。
「何!!。」
首が一つ切られて犬は驚く。
「あらあら、これで餌は減って冥界の飼い主さんもちょっとは楽になるかしら。」
「ふざけるなよ、まさか、妖剣を使うとは、それはグラムだな。」
「なんだ、もうばれたの。」
「ふん、まあいい。それを使って何度も冥界にこようとしたやつがいるんでな。それの対所法も分かっ
ている。」
「へえ。じゃあ試してみる?」
茜は犬の真上に瞬間移動した。犬は噛みつこうとするが茜は簡単にかわす。
「これは避けれぬ。」
といって口から巨大炎(二つ)を出す。
「なにこれ。しつこい!!。」
飛んでいくら逃げようが炎はどこまでも追ってくる。
「あ、そっか。」
茜は何かを思い出したように手をたたくと。炎に向かって飛んで行った。
「永く生き過ぎて正気を失ったか。」
「じゃ~ん」
といって炎から出てきた茜は無傷。
「なんだと。」
「この前は、レイナントを使わなかったけど、今回は使っちゃうからね~。」
「魔力無効化か・・・。」
「あははっは。そうそう。これであなたの攻撃手段は全部なくなっちゃったね。」
ケルベロスはたっぷり5秒考え。
「うむ。私の負けだ。」
あっさり降参する。
「いさぎよくていいねケロべロスは、じゃあ殺さないで上げるよ。」
「うむ。すまない。」
「首は飼い主に直してもらってね。あと、地上にいった魂を回収するのはなし。」
「分かった。」
茜はケロべロスに手を振ると地上に帰った。
「ありえないな。魔王は。」
ケルベロスがつぶやく。
そのとうりですね。
―ウィクー
「だから言ったじゃないか。そんなものに意味はない。」
ガブリエルの前にウィクはうつ伏せになって倒れていた。
「あらあら、ガブリエル?ずいぶんと変な格好してるね。」
「茜か、お前を殺せって言う神からの命令だよ。」
「ふふ、残念だけど、死ぬのは君だよ。」
「なぜ?」
「君は雅也君を怒らせちゃったみたいだから。かな?」
「ふん、堕天使には何もできない。こっちにはフロッティがある。」
ガブリエルは自慢げに剣を振り回す。
「無駄よ。月の力で雅也君は浄化できない。」
「何故?」
「彼は穢れてないから、私と違って、力を他人のために使ってるし、試してみれば?」
「分かった。彼に穢れがなかったら君たちを消すのはあきらめよう。まあどうせ俺が始末書書いたりす
れば済む話だし。」
彼は雅也の方に飛んで行った。
―雅也―
唄は終わった。葵の体の傷はすべて治っているし、脈もある。あとは魂を入れれば。
淡い光を葵の体に突っ込んだ。
「うわ!!雅也!!。」
葵が目を覚ました。
「葵・・・・・よかった。」
助けられた。いやあ、よかったよかった。
「あれ?その羽なに?」
そうだよな、羽が生えて、二足歩行の生き物なんて、普通いないよな。
「なんでもないさ。ただの羽だ。それよりもお前をどこかにとばさないと、中間地点でいいか。」
「だから何の話を。」
「これを持ってろ。」
俺はポケットからアトンからもらったペンダントを取り出す。
「何これ?」
「それを持っていれば闇がお前を守ってくれる。」
と言って、俺は知らないはずの魔法を使って葵をどっかの世界にとばした。
「やればできるな俺って。」
「えい!!。」
ブス!!。
腹から剣が突き出ているが、痛みはない。
「何これ!!俺の体に剣が!!剣が!!」
俺の体に剣がいきなり突き刺さったんだからビクる。
「あ、浄化できなかった。じゃ、またね。」
「は?なんだよお前!!。」
「君は知らないほうがいい。」
男は光に包まれ消えていった。
「何アレ?」
「大天使ガブリエル。」
「うわ!茜さんいつの間に!。」
「あ、びっくりした?でもそろそろ帰んないと。雅也君はこの世界に戻りたいだろうけどもうちょっと
我慢してね、いろいろと長い説明あるし。」