まだまだ
城下町に着いたのは昼だった。馬から降りて街の中を歩いているとあの果物屋があった。
リンゴに似たものがあったとこだ。俺はリンゴに似たものを指さして
「おじさん。これ一つ下さい。」
「おう。銅貨3枚な。」
「ほい。」
おじさんに金を渡しリンゴを一つ持ってギルドに向かう。
「あれ?」
ギルドに人だかりができていた。
急いで近づいて、中を覗こうとするが前の奴らが邪魔で見えない。
しかたがない。こいつらはこの世から強制退場してもらうとするか、インフェルノの柄に手をかけて抜こうとしたとき後ろから声をかけられた。
「あれ?マサヤさん。」
後ろを振り向くとギルドの受け付けのヴァンがいた。
「おうヴァン、中に何あんの?」
「中はギルドですよ。」
「知ってるよ。中で何やってんの?」
「えっと、この前話した巨人の緊急任務がお婆さんの勘違いじゃなくていたんですよほんとに巨人
が。」
「ええ!。報酬とか増え・・・あ、そうだヴァンほら銀貨4枚。」
金の話で約束を思い出2日前にもらった金をヴァンに渡す。
「おお、成功したんだ。おめでと。」
「ありがと。」
「えっとね、最近巨人が隣の町に現れて街の半分が破壊されちゃったらしくて。それで国からの緊急任
務になって報酬も増えたんですよ。」
「行きたい!。」
報酬が増えた?それだったら行くしかないだろ。
「分かりました。特別ですよ。」
「サンキュー。」
「さんきゅー?なんですかそれ?」
「えっと・・・ありがとうて意味がある言葉。」
「そうですか。じゃまた。」
「おう。」
今日泊まる宿を探すために走り出す。
「あ!・・・マサヤさん!出発するのは明後日にしてくださいよー。」
「分かってるー!。」
明後日までにいろいろ用意しないとな。妖剣はメンテナンスが必要なのか分からないんでよりあえず鍛冶屋っぽいところに行ってみるが。ごついおやじに。
「妖剣?そんなもの鍛えられねえぜ。」
なんて言われた。王様なら知ってるはずだが王様が暇なわけないからな。
~・・・~
「暇だのう。」
私は王の目の前にはたくさんの書類の山をみる。
「王様、仕事があるのに暇、と言うのはおかしいと思います。」
思ったことを言ってみる。
「えぇー。めんどい。本読んでたいのう。」
「王様!!。」
「分かったよ・・・やれやれ。」
と言って王は書類を書き出す。こんな王で大丈夫なのかと不安になった。
~・・・~
王様が暇こいてるなんて知らない雅也は宿屋に入ったあと服を探していた。なんとなく動きやすそうな、放浪者が着るような服を買った。
「これで準備ばっちりだな。」
うんうんとうなずく。
「全然だめですよ。」
「うわ!!」
いきなり後ろから声をかけられてびっくりする。
「ヴァン。なんだよ。」
「いや、巨人を倒しにマサヤさんよりランクが上の人が何人も行っているけど、倒せないで怪我して倒
れてるそうなんですよ。」
「それは・・・・チャンスじゃないか。」
「は?」
「他の奴が倒れてる間に俺が倒せば金は俺のものになる。」
よし。
「いや、マサヤさん魔法の知識もないじゃないですか。」
「は?魔法ってのは、火、水、土、木、風、金、氷の7種類の元素が元になっていて。」
「違います。」
「え・・だって、ヴァンからしえてもらった魔法陣は火、水、金、土、木、風、氷の6種類だろ。」
「えっと、今その氷の魔法陣持ってる?」
「おう。」
ポケットから紙を取り出して一言。
「即席魔法陣~!!。」
「しってますから、よく見て下さいね。この魔法陣は水と風の基礎の魔法陣がくっついて
るんですよ、それで・・。」
「氷になるのか。」
「そうです。」
「じゃあ、火、水、土、木、風、金の6種類の元素なのか。」
「そうです。そんな基本をマサヤさんは今初めて知った。でも他の人たちは他のことも知っています。そんな人たちが倒せなかったのを倒せるんですか?」
・・・・。
ヴァンはたぶん俺を心配して言ってくれているのだろう。しかし男には決して引いては行かぬときがある。
「大丈夫、俺強いし。」
間の抜けた声で言う。
「なんですかそれ。」
ヴァンは苦笑いしながらつけたした。
「だったら大丈夫ですね。」
「まかせとけ。」
俺は笑って返す。雷の元素はないのかって?雷は木に入る・・・・らしい。
~・・・~
一日たってまだ出発できないのでまだ城下町にいる。
そして今、迷子の幼女の親を探している。実は今朝。泣いている幼女をたまたま見かけて声をかけてしまい親を探すことになってしまった。特にやることのなかった雅也は内心暇つぶしができると喜んでいたのだがなんとなく。いやな予感がしていた。
「おい。お前名前は?」
幼女は俺を見上げて
「アトン。」
「そうか・・・じゃあ親の名前は?」
「えっと、リントヴルムって名前、みんなリントって呼んでるの。」
幼女はにこにこしている。
「じゃあ適当に町の人に聞いてみる?」
そう聞くと幼女の笑顔から一転して無表情になった。
「それは・・・無理なの。」
真面目な口調で言っている。たぶん何かウィクのように事情があるのだろうと勝手な解釈をすることに
した。
「よし分かった。人に聞かずに探そう。」
すると、アトンに笑顔が戻って「うん。」と言ってきた。笑い返しながら。面倒だな。と感じていた。
そのあといろいろと、(格好は?背の高さは?)など訊いてみたが
「服を着てる。」と「お兄ちゃんと同じくらい。」としか返ってこなかった。そんなの当たり前だあああと言いたかったが相手は幼女だ、と自分を抑えながら探していた。
~・・・~
「見つからないな・・・」
「うん・・・・。」
昼ぐらいから探し始めて今はもう日が落ちかけている。黄昏。っていうの?
「ごめんなさい。」
「いや、俺が見つけられないのがいけない。大丈夫だ、今日見つからなかったら明日、駄目だったら明
後日も探せばいい。俺も付き合うしさ。明日と明後日以外は。」
「明日と明後日、なにかあるの?」
「おう。光る巨人を倒しに行くんだ。」
またアトンの笑顔が消える。
「行っちゃだめだよ。」
ほい?
「なんで?」
「危ないから。」
俺は微笑む。
「そんなことかよ。だったら大丈夫。俺、強いから。」
「そうなの?」
首を傾けて聞いてくる。
「ああ。妖剣だって持ってるし。負けないぜ!。」
と言って立ち上がる。
「じゃ、またな。まだ見つからなかったら手伝うよ。」
「ありがと。」
さよなら。とは言わなかった。だってあいつの親絶対見つからなそうだから。しばらく歩いていて。振
り返ると。まだアトンは元気よく手を振っていた。
「なんなんだ。あいつ。」
手を振り返しながら呟く。明日、危機に陥ることを雅也はまだ知らない。