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シャロンは、豪奢な純白のドレスに身を包んでいた。
胸元と袖、裾にはふんだんに上質なレースを使用しているが、身に着けるアクセサリーは真っ白な真珠だけ。
それでもシャロンは輝くばかりに美しかった。
傍らで、ドロシーが顔をくしゃくしゃにして笑っていた。
よほど今日という日が嬉しいのだろう。
「シャロンお嬢様、いえ、シャロン王妃。
この日を迎えられて、私は本当に嬉しいですよ。
いや、私だけじゃないですね、メイド一同、シャロン王妃のこんなに美しい艶姿を見ることができて、本当に感動していますよ。
ああ、なんて美しいのだろうねえ」
鏡に映るシャロンは、長い首を活かすように美しく髪を結い上げ、滑らかな肌を透き通るような化粧で彩っていた。
優美に微笑むと、まるで海の泡から生まれし女神のように神々しく、皆一様に心を奪われてしまう。
シャロンは目に涙を浮かべ、これまで世話になった人々に、真摯な謝意を述べた。
「ドロシーみんな、本当にありがとうございます。
ここまでこられたのも、皆様の親切のおかげですわ。
わたくしは、人生で今日が一番美しく装えたと思います」
ドロシーもメイドたちも、目元を潤ませ頷く。
ノックされ扉が開くと、そこに見事な軍服姿のレスターと正装したルードが立っていた。
レスターは、白い軍服に礼装用の金肩章、金の総付きエポーレットはレスターの髪と相まって、輝くばかりに荘厳な出で立ちだ。
真っ赤な飾帯の上から、メダルや星の階級章といった武勲省をつけて、胸元から肩へと伸びる剣優等に贈られる徽章は、レスターが剣の名手であることを物語っている。
格調高いレスターの晴れ姿に、シャロンは魅入られてしまい言葉をなくした。
どうやらドロシーたちも同じ感想を持ったようで、ため息を落としている。
逆にレスターは、シャロンの美しさに驚いたようで、照れたように咳払いをひとつしてから手を差し出した。
「我が王妃、準備はよいか?」
「はい、我が王。
万端ですわ」
シャロンが優雅に立ち上がると、レスターがヴェールをめくり、目尻の涙をそっと指先で拭った。
レスターが、そのまま赤い唇に口づけようとすると、どこからか咳払いが聞こえてきた。
「レスター元帥閣下、キスは祭壇に立って愛を誓い合ってからお願いします。
時間に遅れますので、早くバルコニーへ向かいましょう」
レスターは、こんな晴れの日に笑顔ひとつ見せぬ副官に、呆れた顔でこう言った。
「ルードの生真面目さを、好いてくれる奇特な女性が見つかるといいのだが……」
控室には、嬉し泣きで涙がとまらない父と母もいた。
シャロンは、父母、ドロシーたち、そしてルードに向かって、鶴が舞うように艶麗なお辞儀をした。
「皆様のおかげで、素晴らしい日を迎えることができました。
心から感謝いたします」
透き通るような真っ青な空に、白い雲がぽっかりと浮かぶ。
緑の木々は爽やかなそよ風に揺らぎ、黄金色の陽光が燦々と降りそそいでいた。
この世の自然美全てが、レスターとシャロンを祝っていた。
ピンクと白の花が吹雪みたいに舞い散る中、城の最上階バルコニーからレスターとシャロンは、広場に集まった国民全員に手を振った。
あちらこちらから歓声が沸き上がり、祝いの宴が国中で開催される。
ルードの意向を無視してレスターがシャロンに口づけをすると、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
シャロンは、幸せな花嫁として、全国民から祝福された。




