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レスターは動揺するシャロンを安心させるように、その唇に、自分の唇を合わせた。
すでにお互いの唇は濡れており、すぐにも淫奔な音を立てる。
くちゅり、くちゅりと粘膜が絡み合う音、唾液を啜り上げる音、荒い息と、どくんどくんと跳ね上がる心臓音。
それら全てが入り混じり、官能のもととなって、すぐさまふたりの心と身体に、情欲の炎を立ち上らせる。
強く雄々しく、国家の英雄である軍人王レスターから、情欲的な口づけを求められて抵抗などできるわけがない。
素面の状態で熱情の口づけを何回も受けていると、心が千々に乱れ翻弄される。
シャロンは必死で欲望を押し殺そうとした。
(レスター様の唇……、欲しい、もっと奥まで愛を感じたい。
でも恥ずかしい……、だってもう夢ではないのですもの。
こんなにあられもなく欲するなんて、淫乱だと思われるわ)
シャロンの尻ごみに気がついたレスターが、ゆっくりと口を離した。
つうっと唾液の橋がかかり、それが更に劣情を煽り立てる。
「夢うつつで求めてきたそなたは、もっと情熱的で激しかった。
夢の中のほうが何倍も素直ではないか」
言われて、羞恥で顔が真っ赤に染まってしまった。
夢のことを言われると、どうにも気恥ずかしくて堪らない。
「うっ……、下手で、申し訳……、ございま……」
泣きそうなシャロンにレスターは優しい笑みを向け、額にちゅっと軽い口づけをした。
「下手などとは言っておらぬ。
夢ではなく現実でも、そなたの心を私に開放してほしいと言っているのだ。
ここには、私とそなたのふたりきりしかいない。
お互いの気持ちを尊重し、愛し合い、そして骨の髄まで確かな愛を感じたいと思っている」
「感じる?」
首を傾げて問いかけるシャロンに、レスターは艶やかな微笑みを浮かべた。
「そうだ。
私の愛を四肢全てで感じ、与える快楽を一滴の零れもなく受け止めてほしい」
「レスター様……」
愛の告白に感動したシャロンは、自らレスターの肩に手を置き、唇を寄せた。
口づけが上手くできなくてもいい、淫らな肢体を見られてもいい。
レスターの愛を全て受け入れ、そして自らも愛を与えたい。
シャロンは、ちゅっちゅっと小鳥が餌を啄むような可愛らしい口づけを繰り返した。
しばらく掠めるような口づけを繰り返すと、シャロンはレスターの顔を間近で見て、容貌の美しさに再び心を奪われそうになった。
頬は、骨が少し出ているが滑らかな稜線を描いているし、鼻梁も高くて形がいい。
何より耳朶は柔らかくふっくらとして、シャロンの小さな唇にちょうどおさまる厚みだと思えた。
あまりに美味しそうな顔の部位を、ついはむはむと食んでしまうと、レスターが首を傾げて笑い始めた。
「こそばゆいな、シャロン。
私も知らなかったが、どうやらそこは私の弱点のようだ」
(完全無欠のようでいて、ちゃんと弱点があるのね。
じゃあ、そこを集中的に責めたら、どうなるのかしら)
シャロンは舌をするっと伸ばして、耳朶から耳殻までをちろちろと舐めた。
レスターが、身を引き攣らせ反応したので、もっともっとそこに舌を這わせてみる。
とうとうシャロンが、事項の奥にまで舌を伸ばしたので、耐えきれなくなったレスターが、一陣の風のように華奢な身体を攫って、強い力でベッドに縫いつけた。
「悪いお嬢さんだ。
私の急所を知った途端、そこばかりを責めるとは策士だな。
今度は私の番だ、容赦はせぬぞ。
シャロンの弱点を見つけ出し、執拗に責め立ててやる」
焦りにも似た情欲に見下ろされ、シャロンの全身が悦びで打ち震えた。
熱を宿した艶美な視線に貫かれるだけで、ぞくぞくと身体中に痺れが走る。
「レスター様が、心を開放しろとおっしゃられたのに……」
レスターが困ったような笑みを浮かべたので、シャロンは押さえつけられたまま顔だけを上げ、再び軽い口づけをねだるように欲した。
呼応したように顔を下げ、幼い口づけを甘んじて受けていたレスターが、悪戯心なのか、時折舌をぬるりと差し込みシャロンを驚かせる。
そのうち双方とも物足りなくなり、角度を変えて舌を絡め、唇を濡らし、お互いの唾液を口腔に行き来させた。
「あぁ……、はぁ……、んんぅ……、も、もっ……と……」
もっとください、そう欲したかったが、レスターの舌と唇が、要望まで飲み込んでしまう。
「シャロンの潤んだ瞳が、私の情欲に火をつけたぞ」
「えっ……?
あ、あああ……、あん……、やっ……」
劣情的な口づけに、腰から脚にかけてまったく力が入らなくなったシャロンは、レスターの逞しい腕を、ぎゅっと掴む。
「……っ」
「レスター様……」
レスターの低い呻きに、シャロンははっと自分が傷口を掴んだことに気がついた。
うっつすらと軍服の左腕に滲む血を見て、シャロンは息を呑んだ。
蒼白な面持ちを確認したレスターが「気にするな」と安堵させるように言う。
「も、申し訳ございません……」
いかなレスターでも、傷口を直に掴まれては、顔をしかめるしかない。
シャロンを気遣おうとする、優しいレスターの心を胸に感じ、もっともっと親愛の情が湧き上がる。
愛おしいと態度で示したくて、その傷口に負荷をかけぬようそっと唇をつけた。
その行為がレスターの情欲の火に、更なる燃料を注いだのだろうか。
シャロンが着用しているガウンの紐を器用に解き、薄いネグリジェの胸元を緩め、柔らかく白い乳房を剥き出しにした。
大きな手のひらで乳房を包み込み、ゆっくりと上に揉み上げる。
滑らかな柔肌に、節の太い指が食い込んだだけで、説明しがたい愉悦に制された。
「はぁ……ん、ああっ……、あっ、あっ……」
手のひらでくるくると乳房を撫でまわされ、時折ぎゅっと強く揉まれ、突起を指先で摘ままれると、身に走る快感に背を反らしてしまう。
(わたくしの身体がおかしいの?
それともレスター様の指が巧みなの?
感じてしまう……、どうしよう、感じるのは胸だけじゃない、下半身はもっと熱い)
逞しい腕を必死で押し返して、性急な動きを堰き止める。
だがその腕の主は、こぼれ落ちた乳房をすくい上げ、揉みしだく動きを止めなかった。
「……やぁ……、やん……、そ、そこは、感じて……」
「可愛い喘ぎ声だ。
それに素直になってきたようだな、胸を揉まれて感じるならば、素直にそう言っていいのだよ」
衝動的に口にしてしまった言葉に、羞恥でピクピクと身を引き攣らせる。
意識せず放ってしまった、艶を含んだ自分自身の嬌声に頬を染めてしまう。
声を殺そうにも、レスターが指の隙間を使って、シャロンの薄紅色した突起を挟み、ぐりぐりと擦り上げてくる。
そうされると、もう喉奥から切ない喘ぎが自然と漏れてしまう。
「感じるならば感じたまま、正直に反応すればいい」
レスターが、耳元でそっとそう囁いた。
その言葉だけで、擦られている乳首の先が、ツンと硬い尖りを見せる。
ますます天に向かって先を尖らす乳首に、シャロンは、はしたない自分を感じながらも、豊満な膨らみを揺らして快感を示してしまった。
滑らかで真っ白い乳房と、紅く染まった乳首のコントラスが淫猥で、レスターはもっともっと可愛がらねばと弧を描くように膨らみを撫で回す。
「感じやすい胸だ。
私の手のひらにしっとりと馴染み、吸いつくようなきめ細かさ。
触れられるとすぐさま過敏に反応して、実に可愛らしい」
レスターはそう言うと、乳首を強く引っ張った。




