表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の軍神は至宝の真珠を庇護する  作者: アルケミスト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/55

44

「シャロンの身体も心も、全てを私のものにするつもりだ。

 嫌だろうか?」


「い、いいえ、わたくしは……、嫌だなんて、そんなこと……」


 シャロンはレスターの美しい容貌を、再度じっくりと見返した。


 天の使いのごとく神々しい軍神、困ったときに燦然と現れる、頼りがいのある救世主。


 金糸のようにしなやかな黄金の髪、端整な美貌と逞しい体躯。


 全てが賛辞と憧れの対象と言わざるを得ない。


「わたくしも……、レ、レスター様……が……」


 言葉の途中だがシャロンは恥ずかしくなって口を噤んでしまった。


 顔を直視することすらはばかられて、それ以上の愛を語れそうにもない。


 だがレスターは待っていた。


 レスターを欲する愛の言説が、シャロンの唇から囁かれることを。


 シャロンは揺れる強い眼差しを受け、羞恥の心を奮い立たせた。


「あ、愛して、おります……。

 どうか、わたくしをレスター様のものに、してくださいませ。

 わたくしにもレスター様の全てを……、く……くださいませ」


 たどたどしい口調でなんとか言い切った途端、目を伏せてエメラルドの双眸から逃れるように身を竦めた。


 淑女教育で、女性のほうから男性を求めるなど、はしたなく恥ずかしい行為だと教えられてきたシャロンにとって、今の言葉がふしだらではないかと心配になる。


 心臓をどきどきさせながら面を上げると、レスターが優しい笑みを浮かべていたので、ほっと胸を撫で下ろした。


(よかった……、自分からくださいなんて口にして、レスター様に浅ましいと思われたらどうしようかと思ったけど……、大丈夫みたい……)


 シャロンは、歓びに溢れたレスターを確認して、どうしても訊いておきたかったことを口にした。


「教えてくださいませ。

 なぜわたくしを妻にとおっしゃってくださったのですか?

 闇オークションでレスター様の邪魔をしてしまっただけでなく、お言いつけを守らず城から出てしまいました。

 レスター様のおけがはわたくしのせいです……。

 浅慮で愚かですわ。

 聡明なレスター様の妻として、ふさわしいとは思えません」


 シャロンの自虐的な問いに、レスターは即座に首を振って否定した。


「いいや、私はそう思わない。

 そなたが見せる気高さ、高潔さは、尊敬するに値する」


 思いもよらなかった手放しの賛辞に、シャロンの心に潜む自省と卑屈が、ふわりと天に舞い上がる。


「嬉しい……」


 レスターは、歓喜にむせぶシャロンの手を繋いだまま、そっと頬に引き寄せた。


「私はそなたを妻にしたい。

 私は私の直感を優先する。

 これまでもそうやって生き残ってきた。

 どのような局面でも自分の経験と直感を信じ、最良の結果を導いてきた。

 シャロンを選んだ決断を、正しいと確信している」


「レスター様……」


 心中で黄金の軍神として崇め奉っていた男性にここまで言われて、それでも自分を卑屈に思える女性がいるだろうか。


 シャロンは、天にも昇る気持ちになり、心が幸せで満ちあふれた。


「レスター様、わ、わたくしも……」


 シャロンは頬を赤らめ、レスターに愛を語ろうと口を開いた。


 でも、いざ口にしようとすると、気恥ずかしくて何も言えなくなる。


「あ……、わ、わたくし……も……、あ……」


 シャロンは思わず俯いてしまつた。


 どうしても恥ずかしさが先にくる。


(たった一言が、今は恥ずかしくて言えない。

 こんな近い距離で、お顔を目の前にして……。

 たった一言、愛していますと言うだけなのに)


 シャロンの躊躇を見て、レスターは繋いでいたシャロンの手に、再度唇をつけた。


 愛おしそうに、大事そうに。


 恭しい仕草で手の甲に口づけをする。


 シャロンは、レスターが見せる優しい愛の行為に、心の趣くまま自分の思っていることを口にする勇気を得た。


「あ……、愛しております。

 わたくしも、レスター様を心から愛しておりますわ」


 その言葉を心で受けたレスターが、至上の笑みを浮かべてシャロンを見つめた。


「今すぐシャロンを私のものにする。

 シャロンの全てが欲しい」


「はい、わたくしをレスター様のものにしてくださいませ。

 そしてわたくしにもレスター様の全てを与えてくださいませ」


 レスターが、ギシリと音を立ててベッドに膝を乗せた。


 シャロンの細腰を引き寄せ、強い力で抱き締める。


 すっぽりと大きな胸にくるまれたシャロンは、そっとレスターの背へ手を伸ばし、筋肉質な身体をかき抱いた。


 レスターがシャロンの顎を人差指と親指で支えると、頬に甘い息がふわりとかかる。


 ふっくらとした厚みのある唇がシャロンの唇に、ちゅっちゅっと掠めるように何回も触れる。


 唇と唇が当たるだけの軽い口づけを数回繰り返したあと、今度は上唇を咥えられた。


「あっ……」


 唇を唇で食まれ、左右にすり合わせたり甘噛みしたり、感じる場所をゆるゆると弄ばれ、シャロンは思わず息が上がりそうになった。


 厚みのある肉感的な唇と甘い舌に惑わされ、心臓の鼓動が最高潮に高鳴っている。


 頬にかかる湿った吐息も、シャロンを快楽へと導くのに拍車をかけた。


 するりと舌が唇を割って入り込むと、口腔の粘膜を全て拭い去るのではないかというくらい、器用に舌が蠢く。


 レスターの熱い舌が、口腔内を縦横無尽に駆け回る。


 レスターが、シャロンを強く抱きしめた。


 圧倒的ともいえる強靱な力に、シャロンは心も身体も取り込まれそうになる。


 シャロンは、艶やかなブラウンの髪を揺らしながら、熱烈ともいえるレスターの口づけに激しく翻弄されていた。


「ふっ……、うん……、ふぅん……」


 口づけは情熱を宿し、シャロンの心ごと奪い去ろうと吸い上げる。


 しばらくすると、ゆっくりと唇が解放された。


 甘い口づけの余韻に酔いしれながら、シャロンはうっとりと夢心地の心境を口にした。


「まるで夢の中のキスみたい。

 甘くて、熱くて」


 それを聞いたレスターが、困った表情を浮かべながら、くすりと笑った。


「シャロンは、あれを夢だと思っていたのか」


 そう言われて、シャロンは驚愕のあまり目を見開いてレスターを見返した。


「え……、だってあれは……」


 レスターは何も言わず、余裕の笑みを浮かべている。


 その表情は、夢の中の口づけが現実のものであったと肯定していた。


(夢ではなかったと……?)


 シャロンは途端に動揺し、あたふたと焦ってしまった。


 夢の中だと勝手に思い違えていたからこそ、唇と舌を淫らに動かし、火照った身体をあられもなく委ねてしまっていたというのに。


 夢うつつでも、心にしっかりと刻み込まれている。


 最初は差し入れられる空気を欲していたが、そのうち優しくて甘い舌に心地よくなり、自分から舌をなまめかしく動かしてしまったこと。


 口づけがあまりにも官能的で、恍惚も心も委ねてしまい、胸や腰を淫靡に揺らしてしまったこと。


 それら全てが現実で、レスターの秀麗な瞳に映されていたなんて。


「そ、そんな……、なんてわたくしは恥ずかしい真似を……」


「シャロンが私の口づけに悶えて淫らに振る舞う様は、寝ぼけているとはいえ愛らしかったよ。

 そう恥ずかしがることもあるまい」


(夢だと思えたから、あんなに大胆な振る舞いができたのに……。

 み、自ら唇を欲して……、いやだわ、思い出すだけで恥ずかしい)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ