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舌先が同じ質感の柔らかいものに当たると、歓喜を示してぬるぬると絡ませ合う。
つつき合い、左右の位置を変えて吸いあい、そんな淫靡な動きを繰り返す。
シャロンの下唇をペロリと舐め上げたり、上唇を舌先でつついてみたり。
そんな甘く潤いのある蠢きに、心がゆるりと取り込まれそうになる。
「ふうっ……、んん……、あぁ……ん」
ふいに声を漏らした拍子に、肉厚の濡れた舌が、再び口腔奥深くに入り込んできた。
くちゅり、くちゅりと唾液の絡む音を響かせながら、指が頬をくすぐり、髪をすき、耳朶を軽く引っ張る。
反対側の腕は頭部の下に回り込み、抱き寄せられるような姿勢になった。
安心できる胸の中で、シャロンはひたすら唇を愛撫され続けていた。
(これは夢の続き……?
そうよ、これは夢、夢だわ。
なんて甘美な夢なの……。
気持ちよくて安心できて……)
シャロンの強ばった身体が、ゆっくりと弛緩していく。
ゆるゆると開いた両脚の内側に、鍛え抜かれた強靱な身体が入り込んだので、思わず両手を出してかき抱いた。
巧みな舌の動きに、恍惚と身を委ねていると、もつともっと唇が欲しくなった。
(夢ならば、少しばかり奔放になってもいいわよね……)
シャロンは温かい腕と胸に包まれたまま、自ら濡れた舌をちろりと差し出した。
すると、滑る唇がシャロンの舌をするりと覆い包み込んだ。
舌先をつつき合い、左右から絡ませ合い、求めていたものを与えられて、ジンと腰に甘い痺れが走る。
シャロンの長い栗色の髪に指が差し入れられ、頭をぐいと押し上げられた。
反対側の手は腰下に差し入れられ、上半身を持ち上げられる。
もっともっと深い口づけを受ける体制になり、シャロンは心の思うまま身を預けた。
男性と付き合ったことのないシャロンは、こんなに深い口づけを受けたことがない。
けれど初めての行為なのに、まるで毎晩こうしてきたかのように、お互いの身体がぴったりと馴染み合う。
「……んん……、ふっ……、んんっ……、はぁ……」
空気を求めていたはずのシャロンは、繰り返される激しい口づけに息を乱し、すっかり最初の望みをどこかへと追いやってしまっていた。
華奢な肩を震わせ、細い腰を揺らし、煽られた情欲に従う。
血流が全身を駆け巡り、身体が熱い。
与えられる唇の熱で、全身が蕩けてしまいそう。
濡れた熱い舌先は、口腔を縦横無尽に嬲っていく。
舌越しに伝わる、ぬるりとした感触に、びくびくと全身を震わせる。
「……はぁ……、んっ、んんっ……、ぅ……ん、やぁ……」
「可愛い声だな」
そう言われて、恥ずかしさでいっぱいになったシャロンは、口づけをほどき声を発すまいと自らの手で口元を押さえた。
顔を左右に振り、羞恥の喘ぎ声を漏らさないように気を遣うと、そっと大きな手のひらがシャロンの手を外させた。
「もっと聞かせてくれないか。
その小鳥が啼くような可愛い声を」
ささめくように耳元で言われると、こそばゆさとはがゆさに、思わずびくびくと身体が震えてしまう。
許可されたのだと知り、心中にある見えない杭が抜けたように、喉奥から再びあられもない喘ぎ声が漏れた。
何度も何度も、お互いの舌先をまさぐりあい、角度を変えて唇を合わせる。
じゅるりと滑った音が鼓膜に響き、それが淫靡な刺激となって更に意識が高揚した。
(甘い、夢なのになんて甘いの……。
消える……、嫌な黒い靄が晴れていくわ……)
口端から流れていく唾液が混じり合った蕩ける甘い愛蜜を、シャロンは舌を伸ばしてぺろりと舐め上げた。
すると黄金の軍神も、唇を頬から顎に滑らし、流れる蜜を吸い取ってくれた。
そんな仕草にですら、ぞくぞくとした愉悦を感じ、体温が上昇し身体が疼く。
どれくらいの間、口づけを交わしていたのだろうか。
黄金の軍神が、シャロンからゆっくりと身体を離した。
(行かないで……、もっと傍にいて……)
シャロンはみだりがましくその逞しい胸に抱きつき、舌を伸ばした。
黄金の軍神の唇は、シャロンの心の声に反応するかのように、今度は頬、そして耳朶から耳朶へと沿うように流れていった。
こそばゆいような、それでいて性感を高められるような動きに、つい鼻から情欲的な息を漏らしてしまう。
「ふっ……、んん……。
ああ……ん、やぁ……あぁ……ん」
これは夢だというのに、与えられる快楽に肢体は過敏に反応し、触れられた部分は灼熱のように火照ってしまう。
いつの間にか、淫らに開いてしまった両脚の間が、やけに熱い。
太腿の内側、下腹部の奥が、与えられる口づけに反応しきゅんと疼く。
もっと決定的な刺激を欲して、はしたなくも黄金の軍神の下半身に、自ら脚を絡ませていた。
軽い笑いが、シャロンの頬に落ちてくる。
「もう何も怖くはないか?」
不意打ちのように耳元でそう囁かれ、シャロンの腰がびくんと跳ねた。
蕩けるショコラのような甘い響きに、下腹の奥がきゅんと引きしまる。
「やぁ……ん、いやぁ……、うぅん……、やん……」
唇の主が、ゆっくりと身体を離そうとした。
ふたりの身体に距離があると、そこから再び魔が入り込んでしまうかもしれない。
(嫌っ……、まだ怖い……、黄金の軍神様が近くにいれば、闇は私を襲わない……!)
シャロンは無意識に、厚い胸板を抱きしめた。
すると唇の主は離れていかず、シャロンの横に移動し、そのまま寄り添ってくれた。
安堵したシャロンは、深く呼吸をした。
ふわりと香る、爽やかな新緑と甘いムスクの混じり合ったフレグランスに、もっと心が酔いそうになる。
(なんて素敵な夢……、黄金の軍神様に抱かれて眠ることができるなんて)
温かい体温と、トクトクと服越しに伝わってくる鼓動が、シャロンを眠りに誘う魔法のようだ。
あやすように優しく頭をぽんぽんと叩かれる。
どこからか優しい声が降ってくるが、もう夢の中でまどろむシャロンには聞こえない。
「やっと落ち着いたか。
いい夢を、可愛いシャロン」




