第5話 王都の陰謀と異世界の扉
王都セレストリアの夜は、重苦しい空気に包まれていた。
王座の間で退けた貴族長は撤退したが、その陰謀は深く根を張り、王都の裏庭で密かに動いていることを、セリーヌは感じ取っていた。
「ロイ、情報網の再確認を」
セリーヌは手のひらに光の球を浮かべ、街全体を見渡す。
「了解……王都内部には、まだ数名の貴族派が潜伏しています」ロイの声には緊張が混じる。
「まずは、貴族たちの動きを封じること。そして異世界の門の接近を監視」
セリーヌの瞳が冷たく光る。前世の知識が、状況を正確に読み取らせる。
「シンラ、リアン、あなたたちには戦力と魔法監視を任せる」
異世界の剣士シンラは剣を握り直し、無言で頷く。
「王都の奥に潜む脅威は、俺の剣で切り裂く」
リアンは指先に魔法陣を描き、王都の内部魔法と異世界の影を探知する。
「前世で封印された魔王の気配……封印が弱まっています」
その瞬間、王都北門の上空に異変が起きた。
稲妻のような光が王都を裂き、空気が揺れる。
「門が……開こうとしている!」
セリーヌの声に、三人が身構える。
「ロイ、前に出ろ!」
騎士団長としての忠義心で、ロイは剣を抜き、先陣を切る。
「セリーヌ、無茶はするな!」
しかし、セリーヌは冷静だった。
「私の魔法があれば、王都の守りも貴族の策も……そして門も、なんとかなる」
手のひらの魔法球から、光の鎖が北門の方向へと伸び、門の開放を抑える魔法障壁を形成する。
その瞬間、王都の闇の中から、密かに動く影が現れる。
「……やはり来たか」
貴族の一人が、裏切り者として王都の陰で暗躍していたのだ。
「悪役令嬢が力を取り戻したこと、王都の民には知られずにすませてやろう」
セリーヌはその影を察知し、冷たい笑みを浮かべる。
「裏切り者……それも計算の内よ」
彼女は光の魔法を使い、敵の位置を封じた。異世界の門、貴族の陰謀、裏切り者――全てが彼女の戦略に取り込まれる。
「よし、準備は整った」
セリーヌの言葉に、ロイ、シンラ、リアンがそれぞれ力を込める。
王都の夜空に、魔法の閃光が舞い、異世界の門を封じつつ、貴族たちの陰謀に初の反撃を仕掛ける――。
その夜、王都の闇に立つ四人の影は、前世の痛みを乗り越えた覚悟と力を示す。
「魔法帝国の礎は、確実にここから築かれる――」
セリーヌの瞳に、決して揺るがない炎が宿った。
――しかし、異世界の門は完全には閉ざされていない。
その向こうで、魔王の復活を待つ黒い影が、静かに動き始めていた。