第3話 異世界の剣士と王都の陰謀
王都セレストリアの夜は、静寂に覆われていた。
だが、セリーヌ・ローゼンブルクの胸中は静かではなかった。前世の記憶と力を取り戻した今、王都を掌握する計画を練る必要がある。
「ロイ、王宮の北門から潜入するわ」
セリーヌは手のひらで光の魔法球を小さく浮かべ、街全体の動きを把握する。
「わかった。だが、用心は怠るな。貴族たちは我々の行動をすでに察知している可能性がある」
そこへ、突如として異世界の気配を帯びた風が吹き抜けた。
高く掲げた街灯の影から、一人の剣士が姿を現す。
「……誰だ?」ロイが警戒を強める。
その男は長身で、漆黒の剣を背に背負っており、鋭い眼光がセリーヌを射抜いた。
「俺はシンラ、異世界から来た剣士だ」
彼の声には威厳と冷徹さが混じり、異質な存在感を放っている。
「前世の力を取り戻したお前――セリーヌ・ローゼンブルクか?」
セリーヌは微笑み、光の球を手のひらでひと撫でする。
「そうよ、そしてあなたも――前世と異世界の縁で、ここに来たのね」
シンラは剣を軽く揺らす。
「俺の任務は一つ。王都に潜む闇の存在を排除することだ。だが、お前の力が必要になる」
その瞬間、背後の闇から静かな気配が忍び寄る。
「ご挨拶が遅れました――魔導師リアンです」
黒衣を纏った青年が現れ、魔法の印を手のひらで描く。瞳には秘密と知識の光が宿る。
「王都の裏庭で動く影を探っていました。セリーヌ様、私も協力します」
セリーヌは二人を見渡し、頷く。
「わかったわ。これで王都の改革は、少しだけ安全に進められる――かもしれない」
その時、北門の警備隊の動きに異変が生じた。
「貴族たち……動いている!」ロイが剣を構える。
広場に灯る街灯の影から、貴族の一団が静かに姿を現す。
「悪役令嬢が力を取り戻したと聞いてな。面白いことになりそうだ」
貴族の声には嘲笑と計略の香りが混じる。
セリーヌは光の魔法球を空に掲げる。
「準備はいいかしら、ロイ、シンラ、リアン?」
三人は頷く。
前世の知識、異世界の力、そして王都の情報網――それぞれの力を駆使し、セリーヌは王都の陰謀に立ち向かう。
「さあ、始めるわよ――魔法帝国への第一歩を」
――夜空に光の魔法が舞う。王都の貴族たちとセリーヌたちの戦いは、まだ序章に過ぎなかった。