オリーブ色の肌 追記
第44話「オリーブ色の肌とは」の追記です。
イギリスの児童文学『(ローマ帝国)第9部隊の鷲』を読んでいて、オリーブ色の肌がずばりと描写されているのを見つけましたので、追記。
The Eagle of the Ninth by Rosemary Sutcliffより
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ブリテン原住民との戦いで負傷し、退役を余儀なくされた若き百人隊長、マーカスは、ハイドリアの壁を越え、北のカレドニア地方へ進軍したまま霧の彼方に消え去った第九部隊の消息を訪ねる旅に出る。
マーカスの父親は第九部隊の指揮官の一人だった。
野蛮人の手に落ちた「鷲」の旗頭を取り戻すために。
父親の名誉を、回復させるために。
ローマの文明を拒否し、キリスト教の教えを拒否し、大地と精霊とともに生きる刺青に覆われた人々の棲む、未開の地へ。
ローマ帝国はすでに斜陽を迎えた時代が舞台。
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子供の出てこない児童文学なんて、珍しいと思って手にとりました。
ちょうど、対象年齢を下げた、古代を舞台にした冒険小説を書き始めていたので、どのていどの残酷描写が許されるものなのか、参考にと思って読み始めたんですが。
全体的に地味なクエストで、子供にはちょっと退屈なのではないかなと思いました。
で、オリーブ色の肌ですが。
当時、カレドニアと呼ばれていたスコットランドを旅するのに『北の金髪碧眼白肌の「野蛮人」たちの土地では、生粋のローマ人マーカスは、髪も目も「ダーク」で「オリーブ色の肌」はとても目立つけども「白人が入植する前からいた色黒の先住民」ほど黒くはない』という記述を発見。
ゆえに、彼はローマ人であることを隠して「ギリシア人の眼医者」としてカレドニアの原住民の村々を放浪します。地中海特有の容貌はどうしようもないので、ギリシア人がカレドニア人同様、アンチローマであることを利用したのです。
『オリーブ色の肌』とはイタリア人、ギリシア人、スペイン人など、地中海の日焼けした白人の肌を指すわけなのですね。
人種民族をはっきりとさせたこの描写。
長年の疑問が解決されて、すっきり。
地中海系の白人は、北方の白人よりも小柄で色が濃い、という特徴が一般に知られていますが、それは野菜や海産物を多食するからだ、という説にはちょっと眉唾。
だって、アジア人を例にとれば、肉食のモンゴル人が草食の日本人よりも大柄だ、という遺伝的証拠がないもの。
ローズマリー・サトクリフの、上の作品を第一部とする「ローマ・ブリテン4部作」のうち四部目の「Lantern Bearers:ともしびをかかげて」はイギリスの児童文学賞である、カーネギー賞を1959年に受賞しています。
カーネギー賞受賞作で日本でも知られた作品に、――ナルニア国物語・最後の戦い、ザ・ボロワーズ、黄金の羅針盤、ウォーターシップダウンのうさぎたち――などがあります。また近年、同性愛について正面から描いた「ふたつの旅の終わりに」も受賞するなど時代に柔軟な賞でもあります。