韓国人と日本人
冬が近づくと憂鬱になる。
次女九歳が上目遣いに食い下がる。
「お母さん、だから、ウッドじゃないでしょ、Woodでしょ」
「だからウゥッドゥ」
「違う、Wood。ちゃんと口をすぼめて」
「ヲウゥッドゥ」
「違うって、Wood」
延々とこんな会話を続けているのは、暖炉の前。薪を積み上げながら。
薪は「fire wood」
毎年、夫や長女やご近所の方に指摘されるけど、今年は次女だった。
私としてはがんばっているのだけどなぁ。
日本人には難しい発音のひとつだ。私には不可能なのかもしれない。
こちらの国に来てすぐ、ポリテク(短大・職業訓練校・専門学校の総称)の英語コースに通った。アジア人の移民や留学準備生で溢れていた。
数日後に入ってきた韓国人女性と意気投合。カタコトの英語でつるんで遊んだ。
さて、彼女は「Z」の発音ができなかった。
先生と向かい合っては
「Zoo」
「ジュー」
「違う。Zoo」
「ジュー」
先生は首を振る。彼女も、溜め息をつく。毎日十五分か三十分はやっていた。
彼女は「ズー」と言えるようになったのだろうか。
私は未だに「Wood」が正しく言えない。