やばい日本語
子供が生まれる前の話。
夫と付き合い始めたころのこと。
英語圏では、会話の最中に黙って話を聞いているのは失礼なんだそうだ。
私はとにかく聞き取るのに必死なので、さらに沈黙してしまう。でも、黙っていると、聞き流されているみたいで、相手によい印象を与えないとか。で、がんばって餅つき的に相槌を入れようと努力はした。
でも、苦情は減らない。
「君ね、相槌をうつときに、日本語で『ああ、そう』って言うの、やめなさい」
「え、失礼かな。でも条件反射なんだよね。こっちふうにアハ、とか、ンッフとか気恥ずかしさが抜けない」
「けんかを売ってると思われたり、人格を疑われたくなかったら言わないように」
「えっ?」
「asshole(肛門)に聞こえるから」
……滝汗。
英語の罵り言葉のひとつだ。ほんとうは伏字にしないといけないくらい。
You ass/arse. だと「まぬけ」「このばかやろう」的な。これに「hole:穴」がつくわけなので、さらに強調。
女性の口から出る言葉ではない。
とくに「あっ、そう」となると、まんまそう聞こえるらしいので、要注意だった。
おかげで、しばらくは知人友人との会話には緊張を要した。
相槌をうつたびに手で口を押さえたり、ポロッと出てから謝ったり。「ああ、そう、なんだ」と日本語でよくわからないフォローしてみたり。ますます会話に集中するのが難しくなった。
でも、恥ずかしがってないで「a-ha」を挟み込むのに、それほど時間はかからなかった。生れたのが二人とも女の子なので、言葉遣いには気を遣う。
子供と日本語で話すときは「おや、まあ」とか入れてみる。この言葉に似た俗語がないことは確認済み。