同時通訳の難しさ 映画「赤壁」
今回は熱く語ってしまったので、掌編におさまりきりませんでした。
ちょっと長いです。
日本人のお友達から、DVD「赤壁」を譲ってもらいました。中国時代ものはジャッキー・チェンやジェット・リーなどの影響で家族ではまっていますが、赤壁はなかなか手に入らなかったのですね。
長女十三歳がさっそくプレイヤーに入れて。
「お母さん! 英語字幕がない」
「え……」
中国語映像の日本語字幕のみ。
ううむ。
「君たち。どうせこれは大人向けだから、もう寝なさいね」
そんなことでは納得してくれません。
「お母さんが翻訳してよ」
水軍はネイヴィーでいいのか。Navyは海軍じゃないのかな。ううん。バトルシップとかなんとかでごまかす。
水牛が盗まれました「バッファロー? カウ(牝牛)? それともブル(牡牛)?」
曹操はツァオ・ツァオ、劉備はリウ・ベイと読んでしまうのに、なぜか周喩はジェネラル・シュウで、孫権はキング・ソンケンと読んでしまう。呉はゴ・カントリー、蜀もショク・カントリーとか言っておいて、漢帝国はハン・エンパイアとか、固有名詞の発音が中国と日本の間を振り子のように揺れる母。
かなり苦しかったです。
丞相って、プライムミニスターでいいのかな。わからないから飛ばす。
えっと、孔明は軍師だけど、軍師って英語でなんというのだ。
私「ほら、戦闘プランを立ててフォーメーションを組んだり、戦法を練るオフィサーって、英語でなんていうの?」
夫「……言いたいことはわかった」←知らないのか!
映画は容赦なく話が進む。
おおお、関羽だ! お母さんは関羽が大好きなんだよ。
金城武が孔明なのが死ぬほど嬉しいのだけど、ほんとは周喩を演って欲しかったんだ。
なんと孔明は中国語でもコーメイだった。
次女十歳「あたしこのコーメイ好き。ミンジョホ(出典:チャングム)のひと?」
母「いや、まったく別人。ミンさん演じたのは韓国人ね、コーメイはカネシロタケシという日本人だよ」
次女「おかあさんがオーランド・ブルームの次に好きな人だよね」
母「最近はカネシロ君が一番かなぁ」
私が十歳の時は俳優とキャラを切り離して考えることはできなかったんだけど、いまどきな彼女は問題ないらしいです。
次女「どっちが悪者?」
母「これは歴史を題材にしているからどっちが悪者と言うことはないと……」
夫「曹操だな」
まあ、話の流れではそうだけどね。
「八卦の陣」は「オクタゴン・フォーメーション」でいいのかな。
なんだか変身戦隊モノのナントカレンジャー的な某子供向け番組を連想しました。
いつのまにか、長女は母の下手な翻訳に飽きて退場。
字幕の文章が分節ごとに表示されて、固まっている母をがんがんせかす次女。
日本語と英語は語順が逆なので、最後まで読まないと翻訳できないんだよ~。
で、読み終わった頃には場面が変わっていて、翻訳終えたときには話が進んでいる。
今はどこで何をしているのか~。もともとの話や人物関係を知らなかったら絶対投げてます。
次女「誰が勝つの?」
母「赤壁は曹操が負けちゃうんだけどねぇ。歴史ではかれの息子が皇帝になって三国を統一したんじゃないかな(うろ覚え)」
次女「あ、お母さんの好きなひげのジェネラル」
母「キャラで一番好きなのは曹操だよ」
次女「え、曹操は悪役(bad guy)なんでしょ?」
母「そうだけどねぇ(……かれの俺様腹黒さの旨味は子供にはわかるまい)」
母は「戦略戦術兵器事典 古代中国編」を持ち出して「赤壁の戦い」の地図を夫に見せたり、次女に魏呉蜀の三国鼎立の地図を見せたり。地名はみんな漢字か日本語で書いてあるのですが。
「赤壁はこの辺らしくて」
「長江」をチャンチャンリバーにしてしまったのでは、長江河になってしまい、頭痛が痛い的な翻訳ではないだろうかと反省。
母のいいかげんな翻訳も、そろそろ限界なのが、赤壁の決戦を前に状況と戦略が曹操と呉蜀の両側から語られていく場面。つぎつぎに相互の視点が切り替わってスライド式に説明していくんだけど、早すぎてついていけず、頭が真っ白になりました。
電圧負荷限界値に、ヒューズが飛んだわけです。
映画の展開と関係なく、記憶をたよりにまとめて、かいつまんで説明してしまいました。
そもそも正しい英語になっているかどうかも怪しい。ときどき夫に訂正されるし。
明日は赤壁パート2です。脳みそが沸騰しそうです。
ウィキで地理的なものや戦況と使われた戦略について、該当英単語や表現を確認しておきます。
とりあえず、ウィキの英語ページ「三国志:Three Kingdoms」で、当時の歴史的展開と赤壁の戦いの概要を夫に読んでもらいました。
これで粗筋にはついていけるはず。
問題は次女。
続きも見る気満々です。
彼女はアクションシーンが見たいだけなのかもしれないのだけど、赤壁のレイティングって、十歳が見ても良かったっけ……。
戦争のシーンは「ナルニア国物語」や「指輪物語」とかよりも、かなり残酷な気がします……。
使っている兵器とか武器や戦術とか。
ファンタジーの勧善懲悪のチャンバラと違って、戦争としての群像を描いているので、いかに狡猾に戦うか、敵に対してどれだけ残酷になれるかみたいなところありますし。
でもこれでアジアの歴史とか文化に興味をもってくれたら母は嬉しい。
教材選びを間違ってるでしょうか?
ひとくち英単語メモ:軍師
戦略家・策士
strategist:ストラテジスト、tactician:タクティシャン
軍の参謀
staff officer:スタッフオフィサー、
アドヴァイザー、カウンセラー、ブレインとも。