一般常識選手権 選考結果 後編
帰宅するなり、次女ががっかりした顔でスクールバックパックをどさりと落とす。
「クイズ大会の代表に選ばれなかった」
「点数と順位は満たしてたんでしょ。なんで」
「代表は公平に選ぶんだってさ。私は今年の陸上大会とクロスカントリー(長距離走)大会とスペリング大会とトライアスロン大会の代表やったから、他の人にもチャンスを上げなさいって、ミセス・ライト(仮名)が言ったの。メイシー(仮名)が繰上げで代表になった。私より点数低かったのに」
……そういうのは公平と言うのだろうか。
学校代表とか、そんな理由で選んでいいのだろうか。
児童生徒が多すぎるというだけでなく、昼行灯でやる気のない小学生だった私はいかなる種類の代表にも選ばれたことはないが、そんな理由で実力もないのに選ばれても、嬉しくはないと思うのだけど。
がんばってクイズの本を読んで勉強していた次女に同情してしまった。
次女は「xx代表」という言葉に弱くて、選抜のために親にも理解できない努力をするのだ。
夕食時に夫にも話してみる。
「馬鹿げた方針だなぁ。ちっとも公平じゃない」
たいていのことを器用にこなす次女だけど「学校代表」が限界らしく、地区大会ではせいぜい決勝に残るくらいが精一杯だ。
勉強にしろ、スポーツにしろ、芸術にしろ、地区大会を突破するような子供は、才能が飛びぬけているだけでなく、親の経済力とか精神的・物質的サポートとか子供の成績に対する気迫が、まずフツーの家庭とは違うので、あまりお近づきにはなりたくないものだ。
そんななかで、趣味(かなり本気ではありますが)の投稿生活に浸りきりの私は、大会ぎりぎりまで次女が学校の代表に選ばれてるなんて知らなかったりする。大会エントリー費の請求や、学校の要請する、子供たちの運送に車を出したり、遠くの街への応援で一日がつぶれるなんて嫌だ~っていう最低な親だ。
親の知らないところで、子供が自力でもって最大限の努力で叩き出した正当な結果が認められないシステムは、公平といえるんだろうか。
先生の一時的な思いつきじゃないのか。
学校に抗議してやろうかな。モンスターペアレントと言われそうだけど。
その前に、確認。
「世界で一番高い山は?」
「エベレスト!」
「ピンポン」
「世界で一番長い川の名前は?」
「アマゾン!」
「ブー、ナイル川です」
「世界で一番大きな島は?」
「オーストラリア!」
「ブー、グリーンランドです」
「世界で一番大きな大陸は?」
「……えっとぉ」
「ブー、ユーラシア」
「え、どこそれ」
「ヨーロッパ(ユーロ)・アジアでユーラシア(ユーレイジアと発音)」
「古代四大文明の発祥の地は?」
「古代文明って?」
抗議は取りやめにしました。
というか、教育方針とかシステムよりも、うちの小学校のレベルって、どうなの?
転校させたくなりました。
次女の名誉のために。
母は「五年生の一般常識テスト」の出題範囲を把握していないので、このような質問攻めはちょっと「不公平」かもしれません。
しかも就学開始年齢が日本より一年早いこちらの五年生は、日本の四年生に該当します。
だから、古代文明を知らなくても問題はないと思うのですが。
とはいうものの、テレビのクイズ番組「あなたは10歳の子供より賢いですか」で、大人が10歳児を相手にクイズ対戦するのがあるのですが「こんな10歳児は嫌だ」というくらい博識で、早熟で、大人を論破する子供たちであふれています。
小さな子供を相手に玉砕する大人のほうが多いので面白い番組でした。