いつか英語の辞書に載るかも『茶色の親指』
ガーデニングが家事の必須項目とみなされる当地で、鉢植えひとつお世話できない妻とか、夫とか、恥ずかしい存在らしいです。
でも、得意苦手は誰にでもあるわけで、特にガーデニングの才能に優れた方を『緑の親指:Green thumb』と呼びます。
私の母は、団地のベランダに花壇を造ったり、死にかけた鉢植えを持ち込まれては、再び緑繁らせ、花を咲かせて持ち主に返してあげたり、正真正銘の『緑の親指』でした。
しかし、娘には遺伝しなかったようで……。
私の親指が触れるものは何でも枯れてしまいます。
ミニトマトは茎から折れる(間引きをしなかったから)
唐辛子は実がふくらむ前に腐る(水のやりすぎ)
レタスは萎びる(日差しが強すぎた)
花瓶の花はしおれる(水替えてるけど)
薔薇に触れて枯らすのはポーの一族……。
『とにかく簡単な鉢植え』を贈られましたが、水を上げなくても大丈夫な鉢植えは、かえって水をやるのを忘れてしまいます。半年くらい?
「で、ミユキはガーデニングはするの?」
と、素敵な庭をお持ちの両隣の奥様から訊かれると、夫は
「こいつはブラウン・サムだから、植物には触らせないようにしているんだ」
「ブラウン・サム? 何それ?」
私はにっこりと答える。
「なんでも枯らしてしまう親指。私が考えました。みんなで広めたら、十年くらいでCollinsやオックスフォードの辞書に載ってるかも」
日本人が発案した、新しい英単語。
『Brown Thumb』をどうかよろしく。




