「極光」 サザンライツ
寒い話題をもうひとつ。
真冬に夜の南天を彩る「極光:オーロラ」のことを、主人は「Southern Lights:サザン・ライツ 南の光」と呼びます。
緯度の関係なのか、気温や大気の組成の関係なのか、素人にはわかりませんが、南緯45度から見上げる極光は、揺れる極彩色カーテンの色や形をしていません。
地平の少し上のあたりから、透明な火焔が半天を赤く染めながら、天頂を目指してまっすぐに立ち昇っていく。
日本の古い文献に、東北で赤い極光が見られたことを記録したという記事を読んだことがあります。当時の天文学者は、それを凶作や悪天候など、不吉の前兆としたそうですが、なんとなくわかります。
濃藍の星空を焦がす昏い天の火は、凶々しいと言われればそうかなと思ってしまいます。
何も考えずに見ていれば、ただひたすらに美しいのですが。
この地に半世紀生きている夫も、片手で数えるほどしか見たことがないそうで、居住十年に満たない私が一度でも見れたのはたいへんな幸運でした。
でも、街の光の届かない郊外で、吐く息さえ瞬時にきらきらと結晶化してしまうような厳寒の夜に、わざわざ外に出ていることがそもそも稀なのですから。気象条件のかなう夜にまめに戸外に出ていれば、案外と見る機会は多いのではないかと思います。
と思いつつ、暖炉の半径二メートルから動くのもつらい氷点下の季節です。