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千羽鶴を折る
母が癌で入院しているという。いろいろな理由ですぐには帰れない。峠を越してから連絡を受けた。今は回復中とか。
なんとなく紙の切れ端を正方形に切って、鶴を折り始めた。こちらの国には折り紙はない。クラフト用紙は厚すぎて折り紙には向かない。普通のノートやコピー用紙を四角く切って鶴を折る。
子供たちが教えて教えてとつきまとう。
日本人の血を引いているのだから、日本語は忘れても、鶴くらいは折れるようになって欲しいなぁと思う。
熱心につきまとうので、教えてみる。
「角と角を合わせて」
「辺と辺を揃えて」
角が合わず、辺がずれるので、次女(九歳)癇癪を起こす。
「ここに指をあてて広げて起こして。ここを押さえて折る」
袋折ができない長女(十三歳)が癇癪を起こす。
……。
折り紙というのは、かなりな協調動作と繊細な指の動きと正確な折り方が要求される技術なのですね。
折り紙指導は根気と忍耐の試練。
いびつな鶴が増えてゆく。
心がこもっていればいいか。