サインランゲージと超能力
九歳次女が、学校で手話を習ってきた。
左手の握りこぶしを上げて、その横で縦に右手をくるくると回す。
「これ、映画ね」
右手の指を三本立てて、左手の肘に当てる。
「これ、音節がみっつって意味ね」
説明はそれだけ。
「お母さん、いまから私が言ってることあててね」
映画の動きをする。
三本指を立てる。
頭の上で山形の動きをする。冠らしい。
「プリンス・オブ・ペルシア」
「あったり~」
……音節が三つじゃなかったのか。それは単語が三つ。
「次いい?」と次女。
「いいよ」と母。
映画の動きをする。
四本指を立てる。
両手の拳をぶつける。
「そのぶつけるのなに? 拳が痛いとか?」
「ばん! って言葉、他の単語でなんてゆうの」
「クラッシュ。あぁ、クラッシュ・オブ・ザ・タイタンね」
「すご~い、おかあさん」
……やはり音節を単語の数と勘違いしている次女。
「もいっかいやりたい?」と次女。
……やりたいのは君だろう……。
「いいよ」
映画の動きをする。
四本指を立てる。
母速攻で
「ロード・オブ・ザ・リングでしょ」
驚愕する次女。
「なんでわかるの~? お母さんサイキック(超能力者)?」
わからいでか。