2.事件
あれからしばらく経ち、四乃森が言った通りに普通に日常に戻っていた。
え?時止め能力で遊んでないのかって?
…遊べる訳が無い。
そりゃあそうだ。
何せ四乃森には時止め能力が効かない。
理由は分からないが、そんな人間が居ると分かった状態で徒に時を止めたりしたら四乃森からなんか言われる。
それだけなら良いが四乃森に嫌われたら軽く死ねるな!!
だから今の所人助けにしか使ってない。
たまたま俺が見える範囲に居た人達が転んで怪我をしそうだとか、事故に遭いそうになってたりするのを時を止めて移動させてやることで回避させているだけなんだよな。
だが、別にそれでも退屈しなくなった。
何故なら……
「ただいま。」
「智昭お兄さんおかえり〜♪」
「…俺の部屋に入り浸ってて良いのかよ管理人さん。いや、嬉しいけどさ。」
「本日の業務は終了してるからいいの〜。
それに、嬉しいならなおさら良いじゃない♪」
そりゃあ、俺の方から『何時でも遊びに来て良いんやで』(意訳)とは言ったし、来る時はちゃんとメッセージアプリで事前告知はしてくれてるから良いんだけどさ……ただよぅ…?
「それはそれとして、部屋の住人の許可があるとは言え、毎回管理人のマスターキーで侵入すんのはどうなんだ?」
「じゃあ合鍵ちょーだい?」
「まだ作成中だ管理人。」
「ならまだしばらくはマスターキーだね〜。」
こんな感じでほぼ毎日四乃森が部屋に居る。
しかも四乃森の手料理付きで。
実質同棲じゃねーか。
孫がこんな事してて、爺さんはどう思ってんだ??
「ほらほら〜それより早くお風呂入っちゃいなよ!
その間に料理を温め直しておくからさ!」
「ああ、そうするよ。いつもありがとな。」
「ふふっ♪どういたしまして!」
にしても、四乃森の俺に対するこの謎に信頼度MAXなのは本当になんでなんだ?
いくら時が止まっていた中で唯一普通に動いていたのが俺だけだったから、にしても懐きすぎなんだよなぁ……本人の性格が無邪気で子供っぽいとは言え、大人の女性な訳だし。
しばらくして。
夕食も食べ終えてゆっくりした後、四乃森は帰っていった………
彼女の香りがまだ残る部屋には寂しさと静寂が支配する。
だが……
「ふぅ…流石に、夫婦どころか恋人同士ですらない四乃森を引き留める訳にはいかないよなぁ………
正直、ここまで懐いてくれる理由は分からなくとも一目惚れした女性だ。
最初から絆されてるんだからコレだけ積極的に好意を示されたら益々好きになるに決まってる。
これで四乃森の奴に恋愛感情が無くてそんなつもりじゃなかったとか―
「…言われそうだな。
アイツ、無邪気で子供っぽいって事は俺の事も良くて親友にしか思ってなさそうだ。」
なにせ四乃森だからな。
むしろ、異性として意識してたら男の部屋にそうそう来ないだろう。
ソレくらいの危機感はあっても良いはずだ。
だから告白はしない。
勘違い野郎になったら死ねるし。
「でもなぁ………
考え込みながらもソファーに座ると、
座ったソファーからふんわりと香る桜の香り。
「……多分四乃森の香水…だよな?」
お気に入りのソファーで寝転んでいたらしく、ここから一番四乃森の香りがする。
四乃森からはいつもその香りがするから彼女のお気に入りの香水…なんだろう。
もしくはシャンプーか?女性モノに詳しくない俺には判断がつかないが…
どちらにせよ、こうゆう所はちゃんと女の子してるんだから、始末が悪い。
「はぁ……四乃森の奴の考えが分からん。」
そう思いつつもソファーに倒れ込むと、
顔を埋めたクッションから濃い桜の香りがした。
彼女が寝転びながら抱きしめていたのかもしれない。
そう思ったら無性に恥ずかしくなって慌てて脇にどけた。
「クソッ…!変態かよ俺は!!」
だが四乃森も四乃森だ。
無邪気かつ無自覚に誘惑してくる…!
本人にそのつもりがなくてもコッチは理性がガリゴリ削られていく……その内、我慢が効かなくなる気もしているが……
「でも、遠ざける選択肢は無いな。」
こんなのばかりだ。
頭の中が四乃森の事ばかり。
いや、仕事はキッチリしてるし、敵に揚げ足取られる訳には行かないから相変わらず会社ではポーカーフェイスだが。
…そうやって疲れて帰ってきた時に四乃森のあの気が抜ける様な笑顔はかなり効く。
だから俺自身の為にも四乃森にはこのままで居てほしい。
なんて、グルグルとした思考で寝転んでいたら、フと違和感に気付いた。
「…時計の針の音がしない?」
そして時計を見ると…
「…秒針が動いてないな。電池切れか?」
やれやれ、面倒くさいな。
と思いつつ時計の電池を交換しようとすると―
バァァン!!
「智昭お兄さん!!
時間が止まってるけど何かあった!?」
―は?」
なんだって??
階段を駆け上がってきたらしい四乃森が息を切らして部屋に駆け込んできた。
慌てているしエレベーターを使わなかった辺り、どうやら、本当に時が止まっているらしい。
「いや、俺は何もしてないぞ?」
「はぁ…はぁ…う…ん、はぁ………時計……電…を変…
「とりあえず落ち着け?えっと、『時は動き出す』。」
カチ、カチ、
あ、動き出した。
どうやら本当に時が止まってたらしい。
と言うことは…?
カ…チ…
「…また止まった?」
「…お兄さん、今能力を使ってないよね??」
「ああ。つまりコレは…
「「他に時止め能力者が居る?」」
考えてもみなかった。
何故、時間停止能力者は自分しか居ないと思ったのか。
コレがゲームならこんなチート能力者は1人だけって設定になり得る。
だがコレは現実で、実際に俺は時間停止が使える。
だからこそ、俺以外にも時間停止能力者が居る事を考えるべきだった…!
と、ここで四乃森が慌てたような声をあげる。
「でもでも!わたし達にはその人の居場所なんて分からないよ!?」
「そうだな。」
それどころか迂闊過ぎた。
分かるのは、相手の時間停止能力者にも俺という時間停止能力者が居る事がバレてることだ。
そして、もし相手側に人探し系の能力者や未来予知系の能力者が居た場合、俺と四乃森が先制攻撃をくらう危険がある。
となれば………
「四乃森。闇雲に探しに行っても相手の場所がわからん。
今は慌てても仕方ない。」
「でも、もし悪い事に使ってたら!?」
「今はソレすら分からん。
もしかしたら今止まっているのも誰かの命を救う為かもしれない。
だとしたら悪と断定して時間停止を解除し続けるのは危険だ。」
「じゃあ…もし悪い事に使っていたら…?」
「今はソレを考えても仕方ない。そうだろ?
それとも、四乃森は未来予知か遠視でも出来るのか?」
「ううん…出来ない。」
(……?あれ??でも、占いなら…?)
「だろ?だから今は手がない。
辛いだろうけどさ。」
「うぅ…もやもやするけど、仕方ない、のかなぁ?」
(うーん…?出来そうな気がする………??)
「今はな。」
そりゃあさ、時間停止能力が使えると分かった時に俺が直ぐに考えた
『時を止めて強盗』とか『暗殺』、はたまた『強姦』を実行してる奴の危険性も無くはない。
ただ、どちらにせよ相手の居場所が分からないし何をしてるかすら分からないんじゃ、
手の打ちようが無い。
時間停止能力ってのは相手に同じ能力者とか時間停止無効の能力を持った奴が居たり、居たとしてもそいつらに自分の居場所さえ掴まれなければ絶対にバレない。
それだけ万能なチート能力だからな。
Side:???
―今、僕は突然目覚めた時間停止能力で前から僕を庇ってくれていたクラスメイトの女の子…学校一の美少女と呼ばれている子を犯していた。
いやぁーさっき勝手に時間停止が解除された時は焦ったなぁ〜
バックで犯してたから顔が見られなくて良かったけど!
まぁ、多分能力がまだ完全に制御出来てないせいなんだろうけどさ。
にしても便利な能力だよねこれ!
エロ漫画だとよくある能力だけど、実際に使えるとなるとかなり便利だ!
監視カメラも止まるから万引きし放題だし、気に入らない奴を階段から突き落としたり踏切で通りかかる電車の前に置いたりしても目撃されないから証拠が残らないし!!
お陰で僕を虐めていた奴ら全員に何かしらの復讐を出来たし、虐めのリーダーだったアイツを電車に轢き殺してもらえたし!
まぁ、一応イケメンだったしクラスの中心でははあったから異世界転生でもしたんじゃないかな?(笑)
あー!気持ちぃぃぃ〜ッ!!
虐めて来た奴を殺せた高揚感、好きな女の子を犯してる多幸感、色々含めた万能感による脳汁ドバドバで美少女を犯して満足した僕は、そのまま放置してその子の家から出ていく。
まさか自宅にいてレイプされるなんて思わなかっただろうけど、まぁ僕の事を庇ってくれていたって事は僕の事が好きなんだろうし、両想いなら実質和姦!
そもそも美少女に生まれたって事はそうなっても仕方ないって事で!
またしたくなったら犯してあげるね!
大好きな僕に犯されるなら本望でしょ?
僕は自宅まで帰ってから時間停止を解除して、満足感に満たされたまま眠りについた。
さぁて、明日からもこの力で色々やるぞ~ッ!!
あっ、最近見かけた銀髪に翡翠の瞳をしたあの子をまた見かけたら犯してあげちゃうのもありかな!
何せ今の僕は万能の時間停止能力者!!
無敵の時間停止能力者なんだからね!!
アーッハッハッハッハッ!!!
IF:本来の世界線の話.1
「ハッ。イキっててもその程度かよクソガキ。」
「ぐ…ぅぅ…!」
俺は、時間を止める前に、と言うかコレまで度々会う毎に仲間達から四乃森とか呼ばれて頼りにされてた銀髪翠眼でイケメンのガキを踏みつける。
他の奴らは時間を止めてナイフで心臓を一突きしたり、首の動脈を切ったり、と致命傷を与えといたから時間停止を解除した途端に血が噴き出すなりして死ぬだろう。
結局、コイツは皆から頼りにされていた所で【能力無効】の能力しか使えないんだからただの雑魚だ。
だから時間を止めて真っ先にコイツを殴り飛ばしたら後は仲間(笑)達をじっくりゆっくり殺してやるだけの簡単なお仕事だった。
後はコイツにナイフを握らせて遠くへ逃げた後で時間停止を解除すればコイツは立派な殺人鬼になる。
はぁーあ。今回もつまらん相手だったな。
主人公(笑)かと思って放置して“やってた”んだが。
とんだ期待外れだったな。
「じゃあな、正義感だけのクソガキ。
テメェの無力を嘆きながら死刑になっとけ。」
ホントに、世の中つまんねーな。