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IF:ラスボスが主人公になる世界線  作者: 音無 なの
あるラスボスだった男の話
2/6

1.主人公♀ちゃんに信頼されるラスボス♂さん

―部屋に入ってひとまず落ち着いたあと、出会って数分で仔犬みたいに無邪気に信頼してくるコイツに内心悶えつつ、自分の能力について話しても良いかを考えあぐねていた。

なにせ、能力についてコイツに話したら、俺が時を止めた犯人だって自供する事になるからな。

それでこの無邪気な信頼と笑顔が損なわれるのは嫌だ。


と言っても、そもそもなんでいきなり【時間停止】が出来るようになったのかも謎だが。

それでも今は俺が意図して時を止めたままにしているのは事実だからな。

ただ、フとその漫画の事を思い出せば……



―確か、時間停止した中で動けるのは同じく時間停止能力を持つ者だけ、だったか。」


「えっ?もしかしてそれって奇妙な冒険の話?」


「おっ、四乃森さんも知ってるんだな?」


「ネタ程度には?詳しくは知らないよ?」



そう言って首を傾げる四乃森。

可愛い。



「となると!もしやわたしにも時止め能力が!?

時よ止まれぇ〜っ♪」


「こらこら、既に止まってる状態で止めようとするな。」


「あ、そだった!失敗失敗…♪」



ワザとか?テヘペロするなあざとかわいい。



「こほんっ!それじゃあ…時は動き出すっ!」


「…!」


「しかし、何も起こらなかった!!」


「って自分で言うのかよ!?」


「だって実際何も起こらなかったし?」


「まぁそりゃそうだが。」



確かに今も静寂のままだ。

と言うか今は夏なんだが、時を止めてからは暑くも寒くも無いんだよな。


…それはともかく、この流れなら俺が時を動かせても大丈夫…だよな…?

コレだけ無邪気に信頼してくれてるんだから……


と、思っていたら………



「…あれ?わたし、カードなんて持ってたっけ??」


「は?あ、俺もか…?」



俺達の手に、いつの間にかカードが握られていた。

が、ソレが酷く奇妙だった。

いや、さっきの話に引きずられてる訳じゃないぞ!?



「…真っ白な…タロットカード??」


「多分…そうだな?」



手に持っていたのはトランプよりも縦長の長方形、占いなんかでよく使われるタロットカード、に形は似ている…と思う。

ただし、四乃森のは真っ白なカードだった。

俺の方は……



「…時計を持つ男、か?」



書いてある字は………



「…“The・Time”?」



記載されている番号はIX…9番か。

タロットカードに詳しくない俺は本来のカードが何かは知らないが。

と言うか何処ぞの奇妙な冒険だと時に関する能力って【星】か【世界】じゃなかったか?

アルカナの知識は某悪魔召喚の仮面ゲームでうろ覚え程度にはあるが、やはりうろ覚え程度だからな。

が、四乃森は直ぐに気付いたようだ。



「…?9番って【隠者】のカードじゃなかった??」


「そうなのか?」


「うん、わたしは趣味のタロット占いの為にタロットカードを持ち歩いてるから分かるよ。」


「マジか。占い師かよ四乃森さん。」


「あくまで趣味の範囲だけどねー。」



そういった四乃森がカバンから取り出したカードケースからは、何枚かのカードと更に別のカードケースが出てきた。

にしても別のカードケース?

タロットカードってそんなに多いのか??



「…多いな??確かタロットって21枚じゃなかったか??」


「…えっ?

基本的に使う大アルカナだけでも22枚で、56枚ある小アルカナを含めたら全部で78枚だけど…どのタロットの話をしてるの??」


「すまん、ただの無知だ、忘れてくれ。」


「…ゲーム知識?にしてもだけど。」


「忘れてくれないか!?」


「くすくす♪いいよ〜。」




はぁ………うろ覚えはダメだなホントに。

でもまぁ、四乃森に笑われるのは別に気にならないな?そもそも微笑み程度だし。



「とにかく………はい、コレが本来のⅨ番のカードだよ。」


「…一応似てるなぁ…?」


「…そうだね?ランプと時計の違い…?」



そんな四乃森が見せてくれたカード…俺が持つThe・Timeと同じⅨと書かれたカードには【The・Hermit】、つまり【隠者】と書かれていて、その絵柄は黒いローブをまとい、カンテラを掲げた老人だ。



「…四乃森さんは流石に俺のカードがなんでこんなカードなのか、までは分からないよな?」


「うん…わたしはタロットの作者でもその子孫とかでもないから…

そもそもわたしのなんて真っ白だよ?

所謂ブランクカード…ってやつだけど。」


「…本当に訳が分からないな。」



ただ、コレなら逆にこのカードのせいに出来る…か?



「まぁ、ものは試しだな。」


「ん…?お兄さん??」


「『時よ動け』。」



俺はわざとらしくカードを構えてそう言った。

まぁ、半日の実験でカードが無くても能力は使えていたんだが。

だから当然の様に時が動き出した。

時計の針を刻む音が部屋に響き始める。



「お〜!動いた!動いたよお兄さん!!」


「そうだな…?」



が、なんだろうが?

実験中より若干楽に能力が発動した様な気がする。

それに……



「な、なんだ…?カードから文字が…!?」



ホログラム…か?

俺の持つカードから少し浮いた位置に文字が現れていた。

そこには


【Lv.1:時間停止・時間始動】


と記載されていた。



「ん…?なぁにこれ。」


「俺に聞かれてもなぁ……ただ、何となくだが俺はこの力が使える様になった、って事か??」



我ながら白々しい事この上ないな。

だがこれで四乃森の目の前で時間停止を使っても違和感がない状態にはなったから都合が良い。



「そうなの?ならちょっと試してみてよお兄さん!」


「お、おう。」



むしろ四乃森の方から言ってきたよ。まぁ良いけどさ。

キラキラと目を輝かせてるの可愛いし。



「『時よ止まれ』。」


「わっ…!静かになった!!」



そしてベランダ側のガラス戸に駆け寄り開け放つ四乃森。

と言うかやっぱり四乃森は俺の時止め能力の影響を受けないらしい。


おいおい、それにしても無防備にも程があるぞ。

まぁ、パンツルックだから下着が見えたりはしな…


チラッ


…くはない…!だと…!?ふむ…ライムグリーンか。


って!そんなミラクルは要らない…!健康的な白い脚も見せつけられるこっちはたまったもんじゃない!!

コレだけ無邪気なのに肌は白いとか

何なんだよコイツ!?日焼け止めでも塗ってんのか!?←(?)

マジで襲うぞ!?


と、内心荒ぶっている俺の事なんかつゆ知らず。

四乃森は相変わらずの無邪気な笑顔を俺に向けてくる。



「すごいすごい!本当に車とか電車が止まってる〜♪

ね、ね!次は動かしてみて!?」


「『時よ動け』。」


「お〜!動いた〜♪」



はぁ…………実験してこの能力を確信した時の俺よりはしゃいでら。

まぁ、悪巧みをしていた俺と違って純粋に面白がってるみたいだが。



「すごいっ!すごいよ智昭お兄さん!!

それに、お兄さんが時使いでよかったぁぁ〜♪

無事に動き出したし、これで普通の生活に戻れるよ!」


「お、おう…?」



いやいや、こんな意味不明の能力が突然生えてきたとか絶対に非日常の入り口だろ。

まぁ、確かに何処ぞのラノベだと異能が出てくるのに日常系、なんてのもあったが。



「さて〜…すっごく長い時間がたった気がしたけど、実際は止まってたからまだ14時…だけど疲れちゃったなぁ……今日はもう帰ろぉ~……


「…送っていこうか?」


「あははっ、いらないよぉ~!

まだお昼だしわたしは大人だよ?

ここからなら歩いて帰れるし、お兄さんも疲れてるでしょ?だからゆっくり休んでね?

それじゃ、今日はありがとね~バイバ〜イ♪」


「えっ、あっ!おい!?」



すげぇ!?

遠慮なく部屋に入った時と同じくらい素早く出てったぞ!?

引き留める間も無かった!!


ってか連絡先聞いてねぇ!?

いきなりの事に数秒呆然としてから慌てて追いかけて靴を履いて外に出るも、俊足なのか既に姿が無かった…!


…エレベーターがタイミングよく来てたのか、はたまた階段を駆け下りていったのか…ココは10階だが、元気っ娘なアイツなら平気で駆け下りて行きそうだし…どちらにせよ、エレベーターを待ってたり俺も階段を駆け下りたところで見失うのは確実だ。


くそぅ……折角、このツマラナイ日々を変えれそう、かつあり得ない程可愛い子に出逢えたのにコレで終わりなのか…?

はぁ………やっぱり世の中クソだな……



俺は、憂鬱な気分になりながら部屋に戻っ―



「あっ!お兄さん!!わたし連絡先聞き忘れてた〜♪」


「って!反対側の階段かよ!?」



―ろうとしたらいつの間にか扉越しの後ろに四乃森が居たーっ!?

いやなんで!?階段は両サイドに有るとは言え!普通、扉が開く側とは逆、しかもこの部屋からは遠い方の階段に行くとは思わないだろ!?

何なのこの子!?



「なんで左側から来んのお前!?」

※扉を開けたら右側が開くので


「ほぇ?

だってわたし、()()()を出る時は何時も、()()()()()()()に向かって出ていくからついクセで〜。」


「は?」



この家??左側??

と言うか、出口?え?


と、俺が混乱していると、四乃森は何か察したのか“ぽんっ”と手を叩いて続けた。




「あっ、わたし、このマンションの1階、管理人室に住んでる管理人だよぉ〜。

おじいちゃんが引退する為に引き継ぎを始めたから今年の4月からの見習いなんだけどね?

と言うわけで改めてよろしくね?智昭お兄さんっ♪」


「はは…ははははは……マジかよ。」



と言うかそれならそれで既に3ヶ月以上経ってるのに会った事無かったんだが?

どんな巡り合せだよ……


だが、どうやらコレは退屈な日々から何かが変わって行きそうな予感がする。

そう思いながら、四乃森と連絡先を交換したのだった。



オマケ


風花「あっ、そういえばココに戻ってこなくても管理人室からお兄さんの部屋に内線電話をかけれるんだった!」


智昭「そっちの方が心臓に悪いわっ!」


風花「へ?なんで??」


智昭「理由は察してくれよ管理人見習い………


※内線は基本的に家賃や光熱費が未払の時の催促の電話に使われる




【才城智昭のカード発現】

【Ⅸ:The·Time】


本来なら【隠者】のカードだが、そのカードと違い、黒いローブの老人が持つ物がランプから懐中時計に変わっている。


Lv.1…時間停止・時間始動

自分の意思で時を止めたり動かしたり出来る。

ただし、時間を巻き戻したりは出来ない。



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