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IF:ラスボスが主人公になる世界線  作者: 音無 なの
あるラスボスだった男の話
1/6

プロローグ:掛け違えた出会い

鏡に映る冴えない男の顔を見ながら俺は思う。


“―こんなツマラナイ世界は滅んだほうが良い”と。


まぁ、それは俺の言葉ではなく、何処ぞの誰かがそう言ったってだけだが。

だが、あぁ、確かに世の中ツマラナイ。

クソ程ツマラナイ。

楽しい事なんか何もありゃしない。

ただ、毎日を怠惰に生きているだけの退屈な日々だ。


何か楽しい事でもあれば、夢中になれる何かがあれば、もう少し違ったかもしれないが。


ただ、俺に関しては恋だとか友情だとかが点で分からなかった。


親に言われるがまま、勉強漬けの日々で、元々頭が良かったらしく常に学年1位の成績で、良い大学を出て良い会社に就職し、周りを蹴落としながらのし上がる以外は何でもない日常を生きてきた。


他の奴らから言わせれば、それに何の不満が有るんだ、エリート街道だし充分刺激的だろって話だろうけどな。

俺には不満しか無い。

何やっても手応えがない。

必ず成功するし誰にでも勝てる。

周りにたかってくる奴はそんな俺のおこぼれに預かりたいだけのクソな奴らばかりだった。


だからそんな俺に、夢中になれるモノなんか何一つ無かった。


そんなある日の事だ。

俺に、超能力が目覚めたのは。



キッカケは些細なこと。


『なーんか面白いこと起こらねーかなぁ―』


と休日にやる事が無い俺が手持ち無沙汰を感じつつ、借家であるマンションの一室からボーっと雲を眺めて居た時のことだ。

ふと、思い付きで昔見たアニメみたいに『時よ止まれ』と呟いてみた時のことだ。



「…なんてな…ハッ、そんなんで時が止まるかよ。

そんな装置すらねぇわ。」



と、吐き捨て、さて、何をするか。

と思って居たら……



(…ん?なんかやけに静かだな。)



…そう。

静か過ぎたんだよ。

さっきまで聞こえていた車の走行音なんかの、町の喧騒が一切合切、聞こえなくなったんだから。


最初は耳がおかしくなったか夢でも見てるか、兎に角気の所為だと思ったさ。


が、マンションの外に出ようとして先ず気付いたのはエレベーターが動いていなかった事だ。

そして、階段を使い、いざ外に出てしばらく歩いてみて改めて気付いた。

人が、車が、鳥や飛行機ですら、何もかもが―



「止まってる…?」



そう、止まっていた。

まるで時間が停止したみたいにな。


流石にこの俺でも現実とフィクションの違い位は分かるぞ。

時間停止なんて、創作ではありふれた事象だが、こと現実世界においてはそんな事はあり得ない。


時間は不可逆で、停止不可の理だ。


それを止めれるとしたら、世界の理に反する力だ。



「ははっ。まさか。そんな。」



俺は試しに近くに居たサラリーマンに声をかけたり、別の人や子供、そして犬や猫にも声をかけてみた。

が、誰も彼もが動かない。

反応しない。

植物も揺れたりしない。


が、試しに草を千切ってみると普通に千切れた。

犬を持ち上げて、手を離してみたら空中に固定された。

転びそうになってた子供の体勢を変えて近くのベンチに座っている状態に出来た。


…そして何より、俺が『時よ動け』と言えばまた動き出し、『時よ止まれ』と言うと再び止まった。


体感で半日程の間色々と試し、そこまでやって、やっとコレが夢じゃないと確信した。



―ははっ!すごいすごい!!なんだコレ!?コレは面白いぞ!?」



その時の俺の目は、久々に輝いていたと思う。

そして、ソレをどんなふうに使って遊んでやろうかと思っていた事も認める。


あぁそうさ、認めよう。

あと一歩、何かのキッカケがあれば俺は間違いなく道を踏み外していた。


が、現実はそうはならなかった。

何故なら―




「あっ…!やっと動いてる人を見つけた!!」


「っ…!?」




俺の目の前に、銀髪翠眼で泣き顔の天使が舞い降りたからだ。


自意識過剰かもしれないが、きっと、俺がこの天使に出逢わなかった場合、

そして、その天使が俺にとって大切な人にならなかった場合。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()





















IF:ラスボスが主人公になる世界























「あのっ…!突然皆が止まっちゃって!わたし、怖くって…!」


「……………。」


「…あれ…?うぅ………やっぱりお兄さんも動かないの…?わたしの勘違い…?幻覚…?

うぅっ…やだよぅ…もう…一人ぼっちはいや……うぁぁあん…!!」



俺があまりの衝撃に思考停止していると、俺も時間停止に巻き込まれた側だと勘違いした天使がへたり込んで泣き出してしまった!



「はっ!しまった!?可愛さのあまり思考停止していた!!

俺もまさか動いてる人間に出逢うとは思わなかったんだよ!!」



ので、意図せず考えてた事がそのまま口から飛び出してしまった!

普段の俺からは考えられないポンコツっぷりだ。

が、その言葉で天使が顔を上げてくれた。

うっ……泣き顔可愛い……抱きしめたい……ってなんだこの感情は!?



―ぐすっ…かわ…いい…?

げんちょう…?」


「違うっ!今のは間違いなく俺の言葉だ!!」



いやいや、冷静に考えたら見た目年齢推定女子高生な女の子相手に何言ってんだ俺!?

普通に事案だわ!!

でも良いか…

今の所、俺とこの子以外皆停止してるんだし。

ただ、何故かよくあるエロ漫画みたいに俺達しかいないしヤッてやるぜ!とはならなかった。

この子が純粋無垢な見た目と言動をしてるからだろうか??


と言いうか顔を真っ赤にしてるの可愛い。

なんだろう?

守護(まも)らねば。』

って言葉が頭に浮かんだ。


そう思って感涙していると、そんな俺の様子を見てやっと安心したのか天使が泣き笑いの顔になる。



「よ、よかったぁぁ〜!やっとマトモに動いてる人に会えた〜!!」


「っ!?」



そう言って無遠慮に抱きついてくる天使。

()めないか、華奢な身体の割に豊かなモノが当たってるんだ。お前と俺の体の間で潰れてるんだ。

俺の理性が鋼鉄じゃなかったらそのままお持ち帰りだぞ。



「……とりあえず状況が分からんしお前も家に来るか?」


「うんっ!行くっ!!」



お持ち帰りしてた。

いや待て、どうした鋼鉄の意志。

と言うか天使も即同意するな。

もっと危機感を持てJK。

いや、言動の幼さ的には見た目年齢が女子高生な中学生の可能性まであるが。



「……。」


「あれ…?どうしたの??えっと……あ、お兄さんのお名前なぁに??」



と、考え事していたらまたもや停止した俺に首を傾げる天使。

だから止めないか、一々可愛いの暴力だ。

そんな彼女に戸惑いながら俺は答えた。



「あ…あぁ。俺は智昭(ともあき)才城(さいじょう)智昭、今年で27になる会社員だ。君は?」


「わたしは四乃森(しのもり)風花(ふうか)!

20歳の大学生!!」


「嘘だろ…?」



まさかの合法ロリかよ。

いや、豊かなモノ的には納得の年齢だが。

と言うか20歳で大学生って事は結婚可能じゃん。


とか頭を過った俺は悪くない…多分。


ただ……



「ホントに20歳なのかキミ?」


「あ~っ!キミも疑うんだぁ~!!

まぁコンビニでお酒買おうとしたら毎回免許証見せてって言われるから慣れてるけどさ……



そう言って頬を“ぷく〜っ”と膨らませる四乃森。

そうゆうとこだと思うぞ。

そう思いつつ頬をつつくと“ぷしゅ〜っ”と空気が抜けた。

だからさ、そうゆうとこだと思うぞ?


ただ、その童顔低身長(俺より頭1つ分位は小さいから多分150cm前後)にはお似合いな仕草なのがなぁ………


と思いつつ渡された免許証を見たら………




「まさかのホントに20歳かよ。」


「だからそう言ってるでしょ!!むぅ〜っ!!」




再び“ぷんすこ”しだす四乃森。

それを可愛いと感じる俺もどうなんだ?ロリコンだったのか??いやでも本物の子供は苦手だしなぁ……?

と自問自答したくなるが、あまり思考の海に沈むとまた四乃森が泣きそうな気がするから止めた。

なお、その間無意識に四乃森の頭を撫でてたがニコニコと嬉しそうにしていたので問題ないだろう。

周りの目とか気にしてもどうせ、皆停止してるしな。

………それにしても俺の手を握って頭を擦り付けるな。

あざとかわいいなオイ。









と言うわけで(マンション)に連れ帰って来たは良いが……



「お前マジで警戒心ゼロかよ……


「えっ?そうかな??」


「普通、初対面の男にホイホイ付いていかないぞ。

【知らない人について行ってはいけません】って学校で習わなかったか?」


「えっ?自己紹介し合ったし智昭お兄さんはもうわたしの知り合いでしょ??」

(それに…お兄さんとわたしは今日初めて会った訳じゃないよ…?)


「距離の詰め方エグいなお前!?」


「???」

(もしかして、わたしの事を覚えてないのかな??)



あー…この子のコレは天然モノかぁ……そこがまた可愛いなぁ…………

とか思う俺、一目惚れ補正がヤバ過ぎる。

てかホントに可愛い。

童顔なのは日本人らしい顔立ちだが、銀髪…プラチナブロンドの髪色やペリドットの様な鮮やかな緑眼の配色、肌が新雪の様な透き通る感じなのは多分北欧系の血が混ざってるんだと思う。

それでいて垂れ目で可愛らしい顔立ち、どこかでモデルでもしてるの?って位にスタイルも整っている。

腰くらいまであるロングヘアに低身長なのも相まって、まるでよく出来た人形…ビスクドールの様な女の子。


でもその服装はラフなTシャツにハーフパンツ、それにスニーカーを組み合わせた活発な印象を受ける姿。


そんな子がこんな近くにいて今まで出逢わなかったのが不思議な位だ。



「……まぁ、とにかく上がってくれ。」


「はーい♪おじゃましま〜すっ!!」


「はぁ………



なんだろ、俺もヤキが回ったのか?

このシチュエーションならコイツを無理矢理手籠めにする位は造作もないはずだろう……?


だが、やはり手を出そうとは思わない。

だって、そうしたらその1回で終わりじゃないか、とかゲスな思考もある。

が、ソレ以前に……



「ねぇねぇっ!それじゃあ智昭お兄さん!

どうしてこうなったのか考えてみよーよ!」


「……先ずはお前のそのやたら信頼のこもった瞳が考察対象だわ。」


「へ…?」

(うーん…わたしがお兄さんの事を信頼してるのは、あんな事があったんだから当然なんだけど…やっぱり忘れてるよね…?なんで??)




部屋に入って靴を脱ぎ散らかしながら振り返り、俺に無邪気な笑顔と信頼を見せる天使。

コイツとなら、このつまらなかった日々を変えられる気がした。

そう思いながら俺も玄関のドアをくぐり、俺もまた、靴を脱ぎながらドアを閉めた。








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