六話
白ちゃんとの同棲が始まり一ヶ月と少しが経ち今日も今日とで一緒に仲間探しのお散歩です。
お昼によくお散歩することで外気にもなれ暑さにも慣れてきました。夏になると話は別ですがまだ六月後半です。
引きこもり生活を開始してそろそろ二ヶ月、体重が気になり始めました。少し増えた気がします。成長期もあるので気にする事では無いとは思いますが。
「最近暑くなってきたにゃー」
「そうですねー。幽霊も暑いんですか?」
「暑いにゃーよ。特に毛があるからにゃー」
「猫さんは暑そうですもんね」
熱中症対策にペットボトルのお茶を持ち街を巡回します。今日もお家の周りでお仲間探しです。何回かのお散歩で私達の中でも決まりが出来ました。
白ちゃん一人の時は遠くへ何時間か、二人の時は近場で一時間程度歩き回るという決まりです。
今回は初めてのお散歩と同じようなコースを歩きます。
いつも行くスーパーが見え今日はスルーして奥まで向かいます。すると白ちゃんが急に立ち止まりキョロキョロと辺りを見渡します。
「どうしました?」
「呼ばれてるにゃ」
そう言い白ちゃんは駆け出していきます。私もその後を一生懸命置いてかれないように走ります。けれど白ちゃんのスピードには追いつけず少しずつ離されていきます。
「ここにゃ」
やっとの思いで到着して立ち止まった白ちゃんに追い付きます。白ちゃんが呼ばれていたのは初めて散歩した時に休憩した公園でした。
「ここに誰かいるんですか?」
周りを見渡しますが公園には人っ子一人おらず私の目には何も映りません。
「誰も居ないにゃ」
残念そうな顔をする白ちゃん。その姿を見て私もつられてしょんぼりしてしまいます。他にも幽霊達がいるならお話してみたかったのですが。
仕方ないので戻ろうと二人で話し公園の入口を跨ぐと、地面がゆっくりと揺れ始め段々と強くなってきます。私は慌てて白ちゃんを抱きしめ公園のフェンスにしがみつきます。
白ちゃんは怯え私の服に爪を立ててしがみついてきます。
なかなか揺れが止まらず怖くなっていると公園の中心が水面のようになり中心が水しぶきをあげます。
そして地面が段々と盛り上がり私の背を超えお家を超えマンションを超えていく大きな石の塔が産まれました。
「なにこれ!?」
私は突然の物理法則を無視した現象に驚いて地面に座り込んでしまいます。
「中から呼ばれてるにゃ」
白ちゃんはそう言い、私の腕の中かぴょんと飛びでて大きな石の塔へ歩いて向かいます。
近くで見ると私なんかが押してもビクともしなそうな立派な石の塔。その中は暗くなっており外からでは全く何も見えません。
「この中からですか?」
「そうにゃ」
白ちゃんは石の塔へ入るギリギリまで近付きしっぽをピクピクさせて後ろを振り向きます。
「怖いから先に行くにゃ」
「私だって嫌ですよ!」
一応私も白ちゃんの横まで行きますが、光の通らない暗闇の入口には怖くて行く気になれません。
けれどビクビクと体を震わせる白ちゃんを見ていると、飼い主としての使命感を感じ拳を強く握り締め一歩また一歩と足を進めます。
「行きますよ!白ちゃん」
「舞子!!」
いつもはねぇとかしか言わないのにこんな時ばっかり名前を呼んでずるいですね。
私は石の塔の入口へ目を強く瞑って入ります。するとそこには広大な自然あり目を奪われました。木々が一定の感覚で生えており地面は踏み固められた通り道にその周りは芝生が茂っています。
「すっごい!」
「わぁーおなのにゃー」
数秒遅れて入ってきた白ちゃんも驚きの様子を隠せません。私は驚きタイムが終わりやっと現実に戻ってきて今回の目的について訪ねます。
「この中にいるの?」
「ん?あっうん多分。ここに入るまでこっちに来てって呼ばれてたんだけどこの中に入ったら声が聞こえなくなったにゃ」
こうして二人はまたしばらく立ち尽くして唖然としていると空から私の頭に何かカードのようなものが落ちて来ました。白ちゃんはというと角が刺さり痛そうにしています。
そのカードには私の名前とゲームでよくあるステータスという表示に称号が書かれていました。
レベルは一でステータスは、体力、知力、力、耐久、魔力、器用、敏捷と七項目ありオールFでした。称号にはファーストアタッカーとダンジョンに愛されし者にテイマーがあります。
私達は確信しました。称号にあるように公園に出来た大きな石の塔はダンジョンであると。