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廃墟の箱庭  作者: 相川美葉
第二章、全ての運命を変える音
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邂逅

 今日はとある小学校での単独任務だった。

通常、最低でも二人以上で任務に行く。理由としては一人が窮地に追い込まれた時のサポートや、リピットとの戦いで亡くなった時の証言者になるからだ。だが今日は小学校という建物内であること、リピットの数が比較的に少ないということ、私が狙撃手ということもあり、支部長直々に単独任務を許可したという。


 護送車で小学校へ行き、校庭や校内を探索する。四階建ての校舎は外壁の塗装が剥がれ、草木は伸び放題、窓は本来の役割を果たせない程割れていた。

 四年一組と書かれた教室に入る。教室の壁には子供達が描いたであろう黄ばみ破れた絵が貼られていた。何枚かは埃を被り床に落ちていた。それを拾って埃を払い、教壇に重ねて置く。

窓に近付き、黒に染まった空を見上げる。

今から此処は戦場になる。だたの学び舎が生死を分けた戦場となるなんて旧時代を生きた人々はそのことを何人が予想出来た?

 校庭にはリピットが四体。月明かりで照らされているので撃ちやすい。

焦点を合わせ、脳幹を撃ち抜く。何度も何度も撃ち抜いていく。撃ち続けていくうちにリピットは消えた。

後は校内だけ、そう思った時、あることに気付いてしまった。

 音が、気配が、しないのだ。

「動かないで」

 澄んだ声がした。

近くにある窓の反射で状況を確認する。

 背後にいる女性が短剣を私の首に当てている。銀色に鋭く尖った刃が喉を正確に狙っている。短剣を持った女性の手は震えていなかった。恐らく戦闘慣れしている、、、、そう確信した。

この女性には気配というものがなかった。完全な無であった。民家に忍び込んだ鼠の方がまだ気配はある。

「、、、、何で私に短剣を向けているの?」

その問いに女性が静かに答える。「ルナさん、本部に来てくれませんか?本部長が少し話したいとのことです」その女性は完全な無であった。感情などを感じさせない、虚無な声。

短剣はすっと下ろされ、私の首は自由になった。後ろを振り向き、女性を改めてまじまじと見る。

黒いパンツスーツに身を包んだ女性だった。

長い黒髪をひとつに結わえた静かな女性。あまににも綺麗で、あまりにも感情が感じられなくて、生きた人形のようだ。

「私はアヤメ。本部長に使える情報員です」

 情報員とは他支部との情報をやり取りする情報の運び屋。機密性で重要性の高い情報を管理する。言わば情報機関の管理者だ。殆どの重要情報はオペレーターから情報員を通して本部長に伝わる。

私の名前を知っていたのも予め調べたからだろう。

「良いけど、、、一応報告はしないといけないから」このままじゃ支部長が心配するので、護送車の運転手に「ちょっと本部に行ってきま〜す」と支部長に伝言を頼むように伝えると驚いていたが、アヤメさんから言ってもらうと快く引き受けてくれた。

アヤメさんの護送車に連れられてやって来たのは栃木県にある『リピット対策本部』だった。

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