ことほぎさん
Q、ニスタフ伯爵家の現状
A、目立たない役職ながら、今もルカイオス公爵派閥の中堅どころ。
アーシャへの扱いで皇帝が処分を下せたのは、財務に所属するニスタフ伯爵次男のみ。それも一財務官の不手際に連座させる形で、出世レースから落とした。一時帝都外に出向させる左遷処置がされたが、今では帝都に戻っている。
この処分について対外的な評価は、皇帝の政治能力のなさを笑われただけ。次期財務長官に手の届くところにいた身内を失脚させ、自らの手足となる者を切ったことは、ルカイオス公爵派閥の中からも皇帝に対する反感となった。
アーシャの派兵に関しても、財務に皇帝の声を届けられるニスタフ伯爵次男がいれば、皇帝の個人的な伝手で止められた可能性はあった。軍事費という予算の計上を遅らせれば、派兵の時機を逸することもできたため。
現在のニスタフ伯爵家は、皇帝を養育したという過去の実績は消えずにいるが、あまり優秀な皇帝ではないという評価のため、ルカイオス公爵派閥の中でも発言力は低くなっている。ただニスタフ伯爵自身の能力はなんら変わっていないので、ルカイオス公爵にはそのまま用いられている。
Q、八百年前の天才の年齢と性別、封印状況
A、二十歳で才能を認められ、四十代で黒犬病、七十代で亡くなっている。
、性別は男性。八百年前は女性の学問への道はないに等しいため。
水底に封印図書館を沈める時には、もう封印図書館の中に天才は籠っていた。危険であるため、アーシャたちが使う罠だらけの道は使ったことがない。ただし、バックヤードの水底を貫くトンネルで外と連絡は取っていた。
実はダム湖で小舟を出す人物が、封印図書館の守り人。一族で代々ダム湖の管理をする家長一人に口伝されていた役割で、ダム湖の中の人物が水車近くの扉から出入りすることを知っている。天才の生前では必要な物資の受け渡しや、世情の報告を担っていた。八百年後の子孫であるダムの管理人は、水車の修繕や管理をしており、そこに目をつけてダム湖の小島へ向かった者たちに開封の予感はあった。
封印図書館の発見後、一度管理人は水車近くでナイラと初会話。口伝の事実を実感するとともに、学のない自分ではできることはないとナイラの異常性を感じ、ただただ変わらずダムの管理と、ダム湖の小舟で渡し守をしている。
Q、異世界でのアーシャ自身のスペック、体や環境による底上げの有無
A、地位や魔法のような前世と違う部分は比べられないが、大抵下がっている。
、勝っていると言えるのは、異世界に適合した健康な体と物作りに関する才能くらい。
そもそも異世界の生育環境は、現代日本よりも劣っているため、どうしても身体的には摂取カロリーから栄養素まで十分には取れない。身体で優れているところと言えば、無病息災な健康面のみ。
祖母が頑丈でなければ生き残れない農村育ちの上、母は兄弟の半数が若くして亡くなってなお生き残った生存能力の高い人物。結果、アーシャは生まれてから風邪もひいたことがない。
知性面もまた、前世ほどに情報量が多くないため育ちようがない。平民なら一生で触れる情報量は新聞の一面程度。貴族でも読み書き計算が苦手な人はざら。
マルチタスクをこなせる思考の使い方も習得していない人々の中で、前世電話しながらメールをチェックし、一日の予定を組み立てるような頭の使い方をしてきたアーシャは、情報処理能力がずば抜けていると言える。
工業化されていない世界なので、図工技術は必要にかられて前世よりも上がっている。それと共に、アーシャの生まれ持った能力としても器用さは前世よりも優れている。
Q、アーシャの側近三人の出会いから今までや印象
A、・ウェアレル→ヘルコフ
皇帝に相談されるくらい頼れる人という印象は、出会いから今まで変わらない。
・ウェアレル→イクト
物静かそうだと思っていたが、実際はけっこう口が悪く手も早いと思っている。
・ヘルコフ→ウェアレル
頭でっかちかと思ったがそうでもなく、澄ましてる割に情にもろい。
・ヘルコフ→イクト
だいぶ世渡りを覚えたが、いつか面倒がって気ままな狩人に戻るかと思っていた。
・イクト→ウェアレル
善悪を臆面もなく語れる苦労知らずだが、現実を知らないわけではない。
・イクト→ヘルコフ
軍人の割に偉ぶらない明るい人から、影を持った諦めた人になった。
ウェアレルはニスタフ伯爵家にいたので、ヘルコフの存在は皇帝自身から聞いていたが、会ったのは宮殿にあがってから。
イクトについては配属された宮中警護だと思っていたところを、ヘルコフによって皇帝とも既知であることを教えられる。
ウェアレルも学問一辺倒ではないため、ヘルコフとイクトが腕一本で生き抜いた強者であることは察せられた。
自分が能力を発揮できるのは魔法と学問であると役割を自認したものの、アーシャとセフィラがその上を行ってしまったため、年上二人に慰められる立場になる。
ヘルコフは軍に所属していた頃、魔物専門の狩人に酒をおごり、情報を得ることをして安全策をとっていた。
部下を同席させることもあり、イクトとの情報交換の際に後の皇帝を伴ったこともある。
皇帝からウェアレルの人となりを聞いていたが、伯爵家が第一皇子を見捨てた時には伯爵家側かと疑ったこともあるが、ウェアレル本人が一番気に病んでいたので慰めることをした。
イクトとは大陸中央部でまだ駆け出しの狩人をしていた時に、遠征してきてた軍人として出会う。
腕は良いがまだ経験が足りず、話し方もニノホト訛りのある田舎者だったイクトに、上京したての自分を重ねて遠征の間は面倒を見た。
狩人をしていたイクトは、ヘルコフとは数年に一度顔を合わせるという妙な縁ができた。
ヘルコフが妻を亡くしてから影ができたと感じる。
帝都で貴族になってからも数度会っており、軍を辞めるという話を聞いた時には、自分も位を返上して職を辞そうかと迷っていた。
皇帝の指名で第一皇子の宮中警護になると、平民出身者ばかりで居心地は良くなり、必要なら貴族のまま今の職も続けようと思い直す。
ウェアレルも話せば気兼ねなく意見を交わせ、他の宮中警護から嫌な顔をされるような乱暴な手にも力を貸す、いける口だと知った。