3話
説明多め
「メグ・・・」
「こんにちはリョータ、悪いけど手を放してくれないかしら、こんなクズでもとある家の子息なのよ」
メグ・ハミルトン。アメリカ合衆国所属のロード級サイキッカーである。藤原とのやりとりを見てもわかるように二人は顔見知りである。時には手を取り合い、時には対立し、藤原のサイキッカー人生の中でも割り方長めに付き合ってきた人物である。対立はしたが、メグ本人がどうこうというわけではないので藤原もその時は絶対相手を殺すマンにはなっていなかった。そんなこんなで今を生きているわけだが、メグにとって藤原は顔を知っている友人という感覚なのだろう。そこはアメリカ人らしいフレンドリーさだ。だが、少々キマっていた藤原にとっては相手が誰であろうが関係ないとばかりに言葉を放った。
「メグ・・・いつから俺に意見できるようになった?」
―――メキメキ
「ぐぁあああ!」
藤原は顔面をつかんだその手に力を込めて、男の頭をつぶす勢いで握りしめていた。その圧力に戦っていた男が悲鳴をあげる。
「リョータ、わかってるわ。彼がどれだけ迷惑をかけているか。でも彼を殺すと、彼の家がうるさいのよ。今回は私が彼を連れて帰って、しっかりと罰を与えるわ。」
メグが今回の出来事に対して罰を与えると藤原に伝えるが、藤原はこいつらのこの能天気さに静かに苛立ちを覚えていた。思わず手に力が入る。
「ぐっぁああ!」
「リョータ!」
メグが抗議するように叫ぶが藤原は改めてメグに言い放つ
「お前らはいつも何か勘違いしている。罰を与える?何の権限があって俺からこいつを奪う?既に俺が罰を与えるところだ。お前がどうこうする以前にな。」
「だから!彼の家がうるさいのよ!」
「それはお前らの都合だ。その都合の中に俺と周りに振りまいた罪は清算されない。」
藤原がメグの言い分を真っ向から切って捨てる。襲い掛かってきた男はどのような理由でさえ、所属する国の人間として藤原に対して暴力を振りまいた。その行動に、男自身への罰を与えることには何ら文句はないし、勝手にしてもらえばいいが、それは男側の人間たちが勝手にやることである。ようするに、アメリカ側は何かしら罰を与えてもいいし与えなくてもいい、それはそちらの都合によるものだ。だが、当事者である藤原から見たらそれは全くどうでもいい話である。自分にかかってきた災難を振り払い、その清算をさせるのは、他の誰でもなく藤原が持つ権利である。なぜなら、サイキッカーたちを守るものは法律でも何でもない。己の力だけだ。
「お願い、私は彼を連れて帰らないといけないの」
「だったら最初からこいつをぶん殴って止めた上で連行すればいい話だろう、覗きの趣味でもあったのか?」
「クッ・・・」
藤原は最初からわかっていた。メグがいたことも様子見をして二人の戦いを監視していたことも。だが藤原もこの話は平行線になることをわかっていたので、相手に身柄を渡すことには了承しようと思っていた・・・・返した本人の状態は考慮しないが。
「別に返すのはやぶさかじゃない。ようするにこの惨状に対する誠意はどうなんだ?という話で、きわめて簡単なものだ。」
「何を求めるの?」
「俺はお前らに何も求めない。ただバカがやらかす前にしっかりと手綱を握ってもらいたいのさ。教育してもらいたいのさ。そして改めて記憶させてほしいのさ。・・・・いったい誰に手を出しているのかってな。」
―――ぼ、ぼぼぼ、ボウッ!
「ぐぁぁぁあああああ!」
藤原が弱火の炎を生成して、男の全身に浴びさせた。
「ちょっと!!」
―――バシャッ!ジュゥ・・・
「俺への罪の精算はここらへんでまけといてやる。こいつは見せしめだ、改めてその脳裏に刻んでもらうためのな。」
炎で男を炙った後にメグが焦って藤原に言葉を投げるが、ほぼ同時に水を生成して焼かれている男にぶっかけた。男はもはや虫の息だがそれでも生きている。風を生成、操るエアロキネシス、炎を生成、操るパイロキネシス、更に水を生成、操るハイドロキネシス、藤原はそのどれもを瞬く間に操り展開できるサイキッカーである。更にはこれらの言動、まるで魔王と呼ばれても言い返せないであろう。藤原が敵の男を半レア状態にしてメグに渡す。この状態で返されてもどうしようもないと思うが・・・。
「・・・一応感謝はしておくわ」
「見舞いの品は気にしなくていいぞ」
「・・・我々の組織はステイツからの指揮系統からは完全に外れているわ。それでもこの惨状に何かしらのモノを言う者たちも現れるわよ。我々に利害関係なんてあって当然なんだから」
「ははっ、その時は――」
「私自身はあなたに敵対なんてする気持ちはこれっぽっちもないわ・・・じゃあね」
―――カッ!
そういいながらメグは男を連れて、光となってその場から消えていった。サイキッカーの世界でも珍しい光を支配し操る、フォトキネシスの使い手である。彼女が移動の際によく使うもので、ワープではない。ただ己や他者を光の粒子として変換させ、光と同等の速度でその場から離れていっただけである。
「君が敵対しなくても、ついた先が泥船じゃないことを祈るよ」
誰も聞いていない言葉をつぶやいた藤原は、髪の毛を元通りにして気持ちを元に戻していった。ひとまずやらないといけないことは、この大惨状が発生している場所から撤退しないといけないことだろう。遠くで成り行きを見つめていた二人に急いで駆けつける。
「すまん、遊びすぎた」
「この星の人間もなかなかやるじゃねぇか」
レオナルドが興味を持ちながら語り掛けるが、そもそも地球にこういう人間がいるのが稀なのよ・・・・
「ここから離れたほうがいいのではないのか?」
ラミアティスと戯れているリオンが確認をしてくる。もちろんそうなので、藤原としても早く逃げ出したい気持ちではある。なるべく原状復帰させてからがいいと持っているが、どこまでできるか。
「そうだなぁ、リオン、この出してくれた木々は元に戻すことはできないのか?」
津波の被害から防波堤の役割をしてくれた木々を指しながらリオンに確認をとる。
「可能だ。精霊界に戻せばいい」
「やってくれ」
「ミア」
リオンがラミアティスに頼んで、顕現させた大自然を消していく。ガラスが粉々に散っていくように、木々は跡形もなく消えていった。その場には少し荒れた海だけが残り、他は元通りの砂浜へと変わっていった。
「よし、すでに遠くから騒がしい音も聞こえてきているので、撤収!二人はすまないけどついてきてくれ」
藤原の号令でその場を後にする三人。遠くからパトカーのサイレンが聞こえ、消防車や救急車は現場へと向かっているところであった。藤原は二人についてくるようにお願いし、同時になるべく周りから確認されにくいように道を通っていく。その際にレオナルドには迷彩のような機能が本人も使えることがわかったので、それを使用してもらい、リオンには他人への認識を阻害するような魔法を使用してもらう。藤原は、普通のサラリーマンとして町中に溶け込みながら全員で家を目指していった。
「ただいま」
そういいながら藤原たちは家にたどり着いていた。別段誰かいるわけでもないが、日本人の性だろうか、あいさつをしてしまうのはご愛敬である。
「かわいらしい家じゃねぇか」
「たぶんレオナルドとは文字通り住んでいる世界が違うんだろうな~」
なんとなく藤原はレオナルドがいいところの人なんだとは想像がついているため、住んでいる場所も別荘並みなんだろうなぁ・・・とか考えている。
「良い家を持っているな」
「まぁこの国では割とありふれた大きさの家だよ」
一方でリオンとしては豪華な家として認識しているのだろうか?それも話を聞けばわかることかもしれない。
「とりあえずこっちの国では靴はそこで脱ぐんだ、そのあとに入ってきてくれ」
玄関で靴を脱ぐように促すが、二人ともさすが異なる世界からの人物たちだけあって、取り扱い方も予想外だった。
「セリウス収納だ」
「・・・これでいいか?」
レオナルドはセリウスに収納させるような指示を出したかと思うと、来ていた服装が変わり、家の中で着用するような私服へと変わっていた。靴も収納済みである。リオンは、どうやったのかわからないが、同じように来ている鎧のようなものも消え去り、普段着のようなものへと変化していた。藤原は苦笑いをしながらも二人を招き入れる。
「いらっしゃい、さっきのどうやったの?」
「ん?こいつはただのクローゼットだぜ?いちいち着替えるのも、部屋に置いておくのも面倒だろ?」
レオナルドが使ったのは未来のガジェットで持ち運べるクローゼットのようだ・・・。どうやら銀河の果てでは他の衣服への着替えは、VR内でのアバターを変更するくらいの簡便さでできるようだ・・・・朝起きてから着替えるのも楽そうだな。
「特定の次元を創り出し、そこへ収納する魔法だ」
一方で、リオンは定番のような魔法を使った収納方法のようだ。ようするにアイテムボックスというやつだろうか?
「ええなぁ、さすがにそこまでの技術はないからなぁ」
とりあえず二人をリビングへと案内し、ソファーへと座ってもらう。大したものはないが、お茶とちょっとしたチョコレート菓子を提供する。
「おう、わりぃな。これは何て飲みもんだ?不思議な香りだな」
「スキャンの結果、毒性は検出されませんでした。覚醒作用を促す成分が少々及び、中枢神経興奮作用緩和を促す成分が入っておりますが、無害レベルです。」
「大地の香りがする・・・」
二人に出した緑茶を不思議そうに聞いてくる。他文化交流だからな・・・・他次元世界と異世界との・・・いつまでも話が進まなそうだ。あとセリウス、いちいちスキャンするな。
「この国で栽培している茶葉で、緑茶というものさ。そいつは特に水出し用の葉を使っているからな。普通の緑茶よりはまろやかな味わいになっている、結構好きなんだ。それはさておき・・・」
とりあえず色々と話を聞いていこうと改めて藤原も腰を椅子におろし、話を進める。
「はぁ・・・頭が重い感じはするが、改めて二人はどういういきさつでここにたどり着いたのか聞いてもいいか?」
藤原が二人の状況の確認をとるために、各々の境遇を聞いてみることにした。まずはレオナルドから始める。彼が定期的な掃除として宙域の海賊を一掃していたことや、途中で特殊な鉱物を使われて離脱したことや。ワープ中の出来事によって意識をなくしたこと、気づいたら地球に突っ込んでいたことなど。
「――――――――ってぇわけよ。ったく面倒なことになりやがったぜ」
「重大な任務でもあるのかと思ったよ。その嵐っていうのは良く起こることなのか?」
「いや、稀ではあるぜ?ただゼロってわけでもねぇ。俺らだってまだ仕組みのわからねぇ世界はあるさ」
レオナルドの境遇を聞いた藤原がワームホールやワープ中の嵐について色々と聞き出す。嵐自体は稀に起こる現象で、これに遭遇する人らも少なくはない。運がよければ抜けるし、ワープアウトしたとして、途中までの宙域に降ろされるだけだ。ただ、レオナルドの場合は特殊だった。ブラックアウト時に何があったのか。セリウスに聞けばわかりそうなものだが、同時にその時間帯の記録が残っていない。
「俺らの国では言われてんだ、門出、だってな」
「門出?なんでだ?」
「そいつにとって、何か必要なことがあったときに遭遇すると伝えられている。」
「そりゃはた迷惑な嵐なこって・・・戻ってきた者はいるのか?」
「古い文献に戻ってきた、って言われている伝承はあるが、詳しくは知らねぇ。」
どうであれ、うまく座標を見つけ出して帰れるようにしてやりたいとは思う。藤原はそう感じながらも、それでも困難が多すぎるなと思っていた。単純に旅路という意味ではなく、地球へとやってきたこの状況が地球人にとっては、もはや同じような日々を過ごす毎日ではなくなるだろうから・・・せっかくなのでお偉いさんなのかも気になったので聞いてみることにした。
「ちなみにレオナルドは、ちょっとした立場の人だったりするの?」
「なんだぁいきなり?」
「いや、最初に会った雰囲気はなかなかのモノだったからさ~」
レオナルドも別にいいかと思いながら身分を明かす。
「オレはマクシムス・アウレリウスとセリーヌ・ベラクルスとの間に生まれた子だ。」
「おー、親御さんか?」
「そうだ」
藤原がレオナルドの話に少しわくわくしながら聞いている。異なる銀河の文化圏はどういう感じなのか?社会的な仕組みも結構気になるタイプである。だが実際に話を聞いてくると嫌な予感しかしなくなってきた。
「レオナルドの名前はミドルネームがあるな?アウレリウスだっけか?」
「家名がアウレリウスだ。それとは別にアルカディウスの名をもらっている。」
「へぇ、先祖からの名みたいなもんか」
「アウレンシア帝国の建国者、アウレリウス・アルカディウスからのようだぜ?」
藤原はここから先を聞きたくないなぁと思ってしまった。そう考えたが、残念ながら聞かないということにはならないだろうなと、意を決して確認する。
「・・・・・親御さんは何している人たちなの?」
「あん?現アウレンシア帝国の皇帝と皇后だが?」
「あぁ・・・うん・・・」
思いっきり頭を抱えてしまった藤原である。こちらの世界で言うなら何かしら身分の高い人か、昔で言うなら貴族のような立場かと思ったが、まさかの全部すっとばして頂点にいる方とは思わなかった。どうしてそんな人が宇宙をさまよったりしているのだろうかと、大艦隊引き連れて地球を侵略しにこないだろうか?と、変な考えを巡らせていた。
「お前・・・マジで頼むぞ・・・」
「あぁ?言おうとしてることはわからなくもねぇが、オレもしらねぇような銀河だ。気にするこたぁねぇよ。」
「レオナルド」の名は「強く勇敢なる獅子」という意味がある。彼は帝国を象徴する、強い意志と勇気を持つ人物であることが期待されている。また、「アルカディウス」は、「帝王の住まう場所」という意味があり、その名を継ぐレオナルドは将来的に帝国の指導者として、自分が生まれ育った場所である帝都にとどまらず、帝国全体を見渡す立場にあることを示唆しているものである。果たしてそのような重大な名を受け継ぐ者が、気にするなと言っても本国では大慌てではないのだろうか・・・・藤原が自分の眉間をもんで頭痛を抑えようとしていた。レオナルド自身にも何かしらの秘密があるのだろうか?それを知ることができるのはまだ先の話である。
お腹一杯になりつつあるが、とりあえず次にリオンの話も聞いてみることにした。
「リオンはどうなの?」
「・・・・私は成り行きでこの場所にいるが、あんたを信じられるかどうかわかっていない。この隣の男についてもな。」
「ハッ、肝がちいせぇな」
割と警戒心の強い人なんだろう。リオンはこの状況になってもまだそこまで心を開いてくれてるわけではないようだ。レオナルドと比べたら対照的だな、と思いながら説得をしようと試みる。
「まぁ、こればっかりは信用してくれとしかいいようがないな。こんなこというのもなんだけど、出会ったのが俺でよかったと思うよ。この星の人間も、優しい人ばかりではないから。」
「・・・完全に信じているわけではないが、私から肩を並べた者だ―――――はぁ・・・話そう」
そういいながらリオンがある程度の成り行きを話していった。自分が勇者としての称号を持ち、異世界で魔王と戦っていたこと。王国から裏切られて転移陣を使われて飛ばされたことや、気づいたら藤原と出会っていたことなど。
「―――――――――――――気づいたらあそこにいた。」
「うーん、勇者か~。定番ではあるけど・・・リオンって強いんだなぁ」
「強くはないさ・・・真実さえも見通せなかった」
「結局どうして飛ばされたんだ?そもそも転移陣ってのは違う世界に飛ばすようなものなのか?」
リオンが置かれた状況の核心ともなる部分を聞き出し始める藤原。リオンも自分が既に裏切られたような形になっているため、この秘密ともなる部分を明かしても良いかと思っている。話を始めて自分の中に溜まったものを吐き出したら幾分か気持ちが楽になったというのもある。
「転移陣は世界間を繋ぐような作用はないはずだ・・・わからない。ただ、聞いてしまったんだ。あの夜・・・・王は精霊たちの力を、国のために使おうと考えていたようだ。」
「ん?魔王を倒すためじゃないのか?」
「魔王の脅威は本物だった。街は荒れ、人々は悲しみに暮れていた。そして私が選ばれたんだ。精霊の力を使い、魔王の脅威を取り除くために。」
リオンはどうやら選ばれたようだ。それが勇者となるための条件なのか?どういう基準なのだろう、気になった藤原はもう少し詳しく聞く。
「勇者として選ばれたってことか?それまでは何してたんだ?」
「私はエルミンタル王国の首都から少し離れた小さな村で生まれた。父の名はジョン・ハーシュ、木工職人で母はアンナ・ハーシュ、裁縫師をしている。200人ほどの小さな村だが、皆いい人たちだ。ある日王国から遣いが来て・・・・父上、母上・・・このようなことになって申し訳ないな・・・」
この中では一番若いリオンだ。色々あったのだろう。話をしていて警戒も薄れてきているのか、自分が住んでいた村の話もぽつりぽつりと零れるように語った。藤原も気を使いながらも、話を続けていく。
「精霊の力というのは、ラミアティスと呼んでいたあの子とかか?最初別のを呼ぼうとしていたようだけど、あれは?」
「調和を果たしていた精霊とも何柱かは交信できなくなっている。多分超えられなかったのだろう。」
「ラミアティス・・・その子は一緒にいるじゃんか?」
「ミアは特別だ・・・幼いころより一緒に居た。私と深いところでつながっているのだろう、故に一緒に超えられた可能性がある。」
聞きたいことが多すぎて話が飛びそうになるのを我慢する。とりあえず聞いていいかわからないが、知ってしまった秘密を聞こう決めた。
「聞いてしまった秘密っていうのは何だ?そんなまずいもの?」
リオンが真剣みを帯びた表情になり、王国の成り立ちなどを聞かせてくれた。
「・・・エルミンタル王国は、長い歴史の中で精霊たちとの協力関係を築き上げてきた。彼らは自然と深いつながりを持ち、エルミンタル王国の発展に欠かせない存在となっている。精霊たちは豊かな自然を守ることに力を注ぎ、王国と協力して自然と調和した文化を築き上げてきた。王国にとっても、精霊との協力関係は国の発展において重要な役割を果たしていた。精霊の力を借り、農業や建築、医療などの分野で大きな進歩を遂げた。また、精霊たちが守護する森や湖、山々などの自然資源を豊富に活用することで経済的にも繁栄した。」
「・・・つまり精霊の力をどうこうしようとしているってことか?」
核心に迫る
「王家は精霊たちと密接な関係を持ち、それによって王国を支配していたといわれているが、王家はかつてほどの力を失った。そのための精霊御子でもあるが・・・」
「精霊御子・・・?いや、ちょっと置いておこう。それで?」
「精霊を従属させようとしていた。対等の関係ではなく、国のために動かす歯車として。」
「そういうことか・・・」
「そのために必要なのは私だった。多くの精霊と調和を果たした私を精霊界との交渉・・・いや、侵略し従属させるための計画だったのだろう。」
ひとまず、簡単ではあるが二人の状況は聞き出せた。茶をすすりながら休憩をはさむことにする。リオンの問題はどう対応したらいいのか・・・そもそも世界を渡れるようなことが可能なのか?一方通行だった場合はここに残ることになるのだろうか?リオンがいないと成り立たない計画を放棄した場合、どのような手を使ってくるのか・・・、自分に境遇を置き換えたら多分どうにかしようとするだろうなぁ・・・。
「ふぅ・・・少し気持ちを入れ替えよう。テレビでも見ますか・・・」
その場の空気を少し変えたいという意味もあるが、あの後現場がどうなっているかを確認したかった。多分今頃はニュースもトップで報道しているだろう――――案の定テレビの先に映った内容は、キャスターが興奮交じりに現場の説明をしている場面だった。