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2話

「ここで死んでもらうぜぇ!日本人!」


そういいながら西洋人風の男が藤原めがけて突撃してきた。一見無防備に突撃しているだけにように見えるが、周囲から相手の右手に集まっていく何かがある。藤原も相手を迎え撃つため、髪の毛をオールバックに流して戦闘モードに切り替える


「砂鉄か、少なくともテレキネシスのエクストラクトまでは行えるレベルか―――シールド」


相手が集めた砂鉄を用いて小型の斬撃武器のようなものを作成したのちに藤原にぶつかりながら攻撃を繰り出してきた。シールドを生成してその攻撃を受け止める。突撃してきた慣性を全て受け止めると、その衝撃と風圧が後ろに流れていき、砂塵を舞わせた。藤原の後ろにいたレオナルドとリオンは涼しい顔をしながら正面の出来事を見据えていた。


「手伝うかぁ?」


レオナルドが藤原に問いかける


「いい!すまないけど危ないかもしれないから後ろに下がっていてくれ!」


既に二人を巻き込んでしまっていることに申し訳なさを感じているが、藤原がこれ以上二人を巻き込むことを恐れて下がってもらおうとしている。敵の男は次いでとばかりに仲間だと思っている二人をも標的にした。


「クァハハハ!でめぇのお仲間はどうでもいいが!せっかくなので一緒にあの世にいってもらうぜえ!」


そういいながら空いているもう片方の手を使って、集めた砂塵を球状に固めてレオナルドとリオンめがけて撃ちこんできた。まだノって(・・・)きていない藤原がヤベ、というような顔をしながら攻撃が飛んで行った後方を確認するが。


「ハッ、きかねぇわ」

「ミア」


だがこれしきの攻撃はそよ風のような出来事なのか、二人は一歩も動かずに敵の攻撃に対処していた。レオナルドはハニカム構造のような不規則に光るバリアのようなものを展開しており、相手の攻撃が刺さった所は受け止めたように若干凹んでその形を変えているが、本人はいたって無傷。リオンのほうは、精霊を使って花を咲かせ、幾重にも重なった花弁のようなものが攻撃を受け止めていた。思わず藤原もホッとするが、敵は顔をしかめて攻撃を防がれたことに苛立ちを覚えた。


「クソガッ!クロロキネシス使いか!?もう一人は物質・形状変化までこなすってことはロード級かァ?」


後ろに下がりながら体制をととのえた敵が藤原たちの分析をしていた。


「悪い!自分以外いるところでやるのは久々なんでなまってた!」


藤原が言い訳を言う。


「かまわねぇよ」


「自分の身くらいは守れる」


レオナルドとリオンは藤原にあっけらかんと返し、すまないな、という顔を向けていた藤原も敵を見据える。敵はこの状況にいらつきながらも再度藤原に猛攻撃を仕掛けた。今度は遠距離から砂鉄を飛ばしつつ、周りの木々などをサイコキネシスで引っこ抜きながら大質量を投げつけてきた。藤原はこともなげにシールドで防ぎつつ、飛んできた木々を躱し、時にはいなし、様子をうかがっていた。


「クハハハ!!なーにが超越者だァ!手も足もでねぇじゃねぇかァ!!」


―――ピクリ


藤原が相手の発した言葉に反応を示した。この世界に踏み込んでから多くのやりとりをしてきた。時には暗躍し、時には戦い、すべからく歯向かう者には同じ暴力と理不尽を与え続けてきた。なぜなら、そうしなければいつまでたっても自分に平穏は訪れないと分かったからだ。下手に出ていた時もある。そうしていたら相手はつけあがってきた。結局全員滅ぼしたが。そういう時代を多く潜り抜けてきた藤原は、その世界ではこう呼ばれていた―――超越者。サイキッカー達が済む世界では、彼らの能力を等級別にわけている。その中でも上位に位置するプシオロードと呼ばれる者らは、その気になったら一国を相手に善戦することもあるだろう。それでも疲れはするし、限界もくる。その際物量で押された場合はロード級のサイキッカーでさえもやられる可能性がある。藤原の場合は、なんてことなく一国を滅ぼして、鼻歌交じりにもう一国も滅ぼしに行くだろう。そんなレベルである。何でそう呼ばれるのか、どうしてそうなったのか。口を閉ざしてより鋭い目つきになった藤原が相手の男を見るが、気持ちがハイになった敵は気づかずにいた。


「クァハハ!!大層な二つ名を持ちながら大したことねェならァ!!倒しちまって俺様がもらってやるよォ!!」


そう敵が叫びながら藤原に更なる猛攻撃を続けていた。

一方でレオナルドとリオンの二人は、後ろから藤原のヒリつくような変化を感じ取っていた。


「こりゃあとんだ仮面を被ってやがったな」


レオナルドがその気持ちを滾らせながら藤原を見る。同時にセリウスから状況の補足が入った。


「藤原良太の心拍が低下、あまり見ない水準で安定しています。周辺の電磁波にも乱れが生じています。」


藤原の静かな変化とともに、リオンが使役するラミアティスの花も、すこしその元気がなくなってきているようにしなれていた。


「魔気に近いものを感じる・・・これは・・・?」


リオンが藤原からの影響について考えるが、かつて魔王が放っていた瘴気に近いものと比べたら精神汚染をきたすようなものではないと判断。それでも顕現する精霊界へと影響を与えていることに驚愕を覚えていた。


「アァ?なんだぁ?・・・っつッ、クソが!」


敵が少々変わってきている空気感に疑問を感じた瞬間、一瞬頭が割れるような頭痛を感じた。

藤原が相手を凝視しながら静かに語る。決して大きくはないその声は、距離が離れているにも関わらず減衰することなく直接耳に届いた。


「・・・たかがナイト級風情がよー、ただでさえ殺そうとかほざくのもイライラするが、名をもらうだぁ?」








―――――――――――――――――――――――――なめてんのか?







藤原がそういった瞬間、すべての音が消えたと錯覚した。

鳥のさえずりも、風の声も、海が奏でる音色も、人の呼吸も、自分の心臓の鼓動さえも・・・・敵が事の次第に固まってしまっている中で、藤原が言葉を続けていく。


「俺はそういうのが嫌いだ。分をわきまえない人間は争いの種だ。だから摘んできた、降りかかる火の粉を。」


ゆっくりと相手に語り掛けるように


「お前の記憶を覗いた。いつからステイツは俺に楯突くようになった?そうしないように散々言い聞かせてきたつもりだが―――――潰すか」


そう言った瞬間、藤原のサイキック能力として持つ圧力が、物理的な現象としてその場に発現し、ただの風圧として一気に周辺と藤原を見据える敵にたたきつけてきた。


「ぐっ、記憶を読むだァ!?接触しないでそんな芸当ができるかァ!!」


これまでとは違う雰囲気の藤原に冷や汗が顔を滴り落ちる。また記憶を読まれたことにも驚くのも仕方ない。メンティス―――相手の記憶を読むようなサイコメトリーは本来接触を前提とした能力である。多くのサイキッカーが初期能力として発動するものであるため、中堅が別の能力を発動し始めるころにはその存在を忘れてしまっていることが多い。しかし、上級のサイキッカーたちはその能力がいかに重要かを理解できている。そのため読ませないためにマインドコントロールをしたり、バリアに近いものを発動してそれを防ぐようにしている。そして、能力を極めていったものは、例え接触をしなくても、相手の思考などを読むことが可能となる。これの難しいところは、コントロールを外すと不特定多数のすべての思考を無差別に読んでしまう可能性があるところである。もちろん下手な能力者はこの時点で頭が焼き切れることもある。言うのは簡単だが実行させるのは非常に難しい、それも特に戦闘中ともなるとである。

藤原の感情が静かに高ぶっていく中、敵に言葉を投げ続けた。


「言ったはずだ、何かあったら俺は遠慮なく潰すと。記憶させたはずだ、その代償がなんたるかを。」


その言葉に恐怖を感じたのか、焦燥感をあらわにしながら敵が吠えだした。


「バ、ばかなばかなァ!!眉唾ものじゃなかったのかァ!?」


敵が叫ぶが藤原が更に言葉をかぶせてくる


「嘘だと思ったか?ただの噂だと思ったか?世界で語り継がれていく脅威がただのお伽だと思ったか?」


裏の世界では知らないものはいないとされている藤原良太のサイキッカーとしての本当の顔が現れた。一人の敵に向けてその存在のすべてを叩きつけた。


「テレパスター、サイキックナイト、そしてその上位に位置するプシオロード。そのすべてを虫けらの如く扱うことの許された存在として俺は君臨した。おかげで多くのサイキッカーに畏怖の念を込められこう呼ばれている――――――オーバーロードとな。」


藤原の言葉がゆっくりと浸透していくにつれて敵が驚愕に顔をゆがませていく


「改めて名乗ろう。超越者―――藤原良太だ・・・遊んでやろう」


もはや形勢逆転とは言わないだろう、ここから始まるのは一方的な蹂躙であった。


「纏い・内気功―――纏い・外気装・・・いくぞ」


――タンッ


そう言った矢先、相当離れていたはずの二人の距離を一気に縮めて藤原が肉薄した。


「ンなっ!」


余りの速さにうろたえた敵は、とっさに後ろに飛びながら離れようとしたが藤原からは全部筒抜けであった。


「拙い技術と弱い精神だ、手に取るように考えがわかる・・・右、左、後ろ、ほら右に上だ。」


相手が逃げていく方向に0秒の遅延で同時に方向を変えていく藤原。見ている敵が全く変わらない距離に驚きを隠せないでいた。


「ナゼだっ!!」


なんてことないように藤原が告げる


「サイキッカー同士の戦いで上位に位置する者たちは、如何に考えを読ませないかという事から始まる。思考も読めずジャミングもできない青二才が、いっぱしのサイキッカーとしてやりあえると思ったか?」


「手も触れずにそんなことがっ!!」


敵は通常では使わないであろう能力を戦闘として活用しているのがあり得ないと思ったようだ。それもそうだ、それができるかできないかでも等級が変わるのだ。


「それができるからこそロード級なんだよ。さて、ウォーミングアップもここまでだ。防いでみろ、サイキッカー」


そういうと藤原が一気に距離を詰めて敵に攻撃を開始した。


「ふんっ!!―――ショット!」


「ぐあっ!―――くっ、シールド!!」


―――ピシッ


一発目に、己の肉体の活性度を高めた藤原が勢いのある単発のパンチを繰り出して相手にクリーンヒットした。すぐさま、サイキック能力のショットで追撃をかけるが、それは敵のシールドによって防がれてしまった・・・それでも一気に相手の防御にひびが入ったわけだが。


「邪魔なものは除去だオラァ!!」


―――バキッ


そういいながら右の貫手を放って自分の手を相手のシールドにめり込ませた。その勢いのまま相手の胸倉をつかみ上げて藤原が恐怖の権化のようなニヤついた笑顔を見せつけてきた。


「つ~か~ま~え~た~」


「ヒッ」


状況に恐れをなしてしまっている敵だが、藤原はさらなる追撃をかます。


「軟弱なシールドなんてな、腕二本あればぶっ壊せるんだよ!!」


―――メキメキメキ・・・バリィィイン


もう片方の左手をシールドに突っ込んでいる手で出来た穴の縁に置き、おもいっきり握りこんで指をめり込ませ、いっきに腕を左側に開くことでシールドを破壊した。その後ついでとばかりに、相手を引き寄せ、右手を離して手のひらを相手の腹に向けて能力を使った


「ショットガン」


―――ボコォ!!


「ぐぼっ」


ショットよりも少し大きめの塊が複数相手に突き刺さり、敵は真っ赤な血をまき散らしながら音の壁を破壊していき、猛スピードで地面へと吹き飛ばされていった。その威力はショットと比べて複数が集約しているため殺傷力も高いが、そんなことよりもそもそも力を少々(・・・・)出している藤原が放つ弾丸のような力は、普通の比ではない。何発かが漏れて何もない地面へと到達するが、その瞬間に、爆撃でもあったのかと思うほどの衝撃が発生し、地面はえぐれ、砂塵が舞った。


「おーおー、あの一発一発が俺の左と同等の威力かよ」


レオナルドが感心したようにこの戦いを見ていた。藤原が放った威力を計算しながら自分の左腕の一発と同等だと呟いていた・・・・レオナルドの左腕も相当なもののようだが。


「ガハッ・・・ゼェァ・・・ゼァ・・・・」


息も絶え、這う這うの体で見上げる男は全身を血まみれにしながら藤原を見ていた。歯ぎしりをしながら悔しんでいるが、最後に振り絞るように力を出そうとしていた。


「クソが!!つかいたくねェが、てめぇを殺すならなんでもいい!!!」


そういいながら相手の周囲に蜃気楼のようなものが現れた、少しずつ周囲の水分が蒸発していくような様が見られる。藤原がちょっとだけ感心しながらその光景を見ていた。


「へぇ、青二才の割には等価変換ができるとは・・・パイロキネシスか」


そう言った先に男がだんだんとその能力によって炎を生成していた。その大きさは落ちてきた宇宙船ほどではないが程よく大きい火の玉となり、上空に浮かび上がって藤原に狙いを定めていた。


「くたばレェ!!ファイアボール!!!」


敵がそういいながら放った攻撃は、まっすぐ藤原へと向かっていってたが、気づいた時にはその大きな火の玉は真っ二つとなって左右に分かれていった。更に突風が吹き荒れるとともに、分かれていった火の玉も竜巻のような乱気流にその存在をかき消されていった。


「あ・・・が・・・・・エアロキネシス・・・だと・・・」


男が驚愕の顔で藤原を見たら、藤原は持ち上げた腕を思いっきり振り下げている姿勢だった。


「スラストナイフ、あーんど、パイルトルネード」


そう言った藤岡が見せたのは、風の力で生成したナイフのような攻撃。これが相手の火の玉を真っ二つにした現象である。また、空気を圧縮・乱気流のような回転を加えた風球を使って分かれていった火の玉を消し去った、という寸法である。未だに驚愕して固まっている男に藤原が接近して、その顔面をわしづかみにする。


「んぐッ!」


アイアンクローをされた男がもはや残っていない体力でもがきながら、藤原の手から逃れようとしている。それでも遠慮のない藤原は、最後とばかりに男に声をかけた。


「さて、落とし前はお前の命で償ってもらう。パイロキネシスの使い手のようだが、消し炭になる気分は味わったことはあるか?」


「っっ!」


そういいながら藤原が炎を生成するために能力を発動する準備を始めたが―――


「ハァイ、ストップ。そこまででお願いできないかしら?」


そういいながら現れたのは、男と同じような人種であろう。西洋風の白人の女性が横に降り立ち、藤原に対して笑顔を向けていた。


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