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1話

スローペースでお付き合いください

「と、とりあえず・・・自己紹介しよっか」


藤原が少し気落ちした心のまま二人に問いかけるが、なんとも言えない空気がとりまいている。右を向くと、急に表れたタッパのあるガサツそうな人物が俺様オーラを出しながら佇んでいた。左を見ると、この三人の中では一番若そうな優男のリオンが先ほど現れた男性に警戒心をあらわにしながら、キリっとした目を睨ませながら無言の圧力をかけていた。


その二人を見据えながら、きっかけがなければ中々アクションが起こらないだろうと感じていた藤原である。仕方ないなと思いながら自分から話の流れを作ろうと考えていた。


「・・・俺は藤原――「よい!」・・・へ?」


自己紹介を始めようとした矢先に右側のイケメンから藤原の言葉を遮るように力強く言葉が発せられた。


「我から名乗るべきであった、許せ」


先ほどから見せていたオラついた雰囲気から一変して、威厳を持たせたような声と真剣みを帯びた表情で男がそう切り出した。皇族の血が流れていることは飾りではない。外交モードに雰囲気を切り替えた男が話す。


「我はゼファー星系、アゼリウスより参った。レオナルド・アウレリウス・アルカディウスである」


堂々たる自己紹介である。もうこのまま流れに乗るのがベストだと判断し、藤原も続けて発言する。


「慣れてるなぁ、改めて俺は日本人の藤原良太だ、どうぞよろしく」


レオナルドと藤原が残る人物に目を向けて続きを促すような目線を投げかける。はぁ・・・と気が抜けながらも最後の男―――リオンが自己紹介をする。


「・・・エルミンタル王国所属、リオン・ハーシュだ。」


裏切られた身だがな・・・と少し疲れ気味に付け足しながら、これでいいか?といったような目線を二人に返す。レオナルドが軽く頷きながら先ほど起こった出来事に軽く謝罪をする。


「二人を含め、他の民にも迷惑をかけた。我が招いた不始末を取り繕ってくれたこと感謝する」


そう言ってレオナルドは二人に向けて軽く腰を折り、頭を下げた。それを見たリオンは若干興味なさそうな目で静かに受け止めていたが、藤原は最初に感じたレオナルドのイメージとは違った誠実さや信念の強さを感じていた。


(どうやら思った以上に話ができそうなやつだな)


唯我独尊、違う銀河からやってきた我儘ボーイだったらどうしようかと思っていたところだが、これなら穏便に今の状況を把握していけそうだと安心した。一方で謝罪を終えたレオナルドは纏ったオーラを消散させた。最初に会ったような雰囲気に戻ってから藤原に話を振った。


「まぁ正式なのはこれくらいでいいじゃねぇか。リョータでいいかぁ?ききてぇことがたくさんだ」


そういいながら手を肩に回してきながらフランクにしゃべりかけた。


(人が変わりすぎだろ・・・でも先ほどの雰囲気はなかなかのものだった。お偉いさんか?)


胸中は色んな事が渦巻くが、ひとまず藤原が話を続けた。


「聞きたいことは全員が、だろうなぁ」


「そこの若けぇのは従者か?」


「いやいや、彼もレオナルドと多分一緒だよ」


「あん? エルミンタル王国は聞いたことがねぇが」


レオナルドがリオンを藤原の従者か何かと勘違いしている。藤原が訂正するが、言葉足らずの説明では理解はしづらい。藤原の言葉を聞いて自分と同じ星系の者かと疑問を持ったレオナルドだが。


「そうじゃなくて、こことは多分違う場所から来たって意味で、だろリオン?」


藤原がそうなんじゃないかなぁ、という思いも込めてリオンへとバトンタッチするが。


「・・・王国の近くに海はない。大陸の向こうにあるアイデルフ帝国の者か?」


リオンはマイペースに今の状況を分析していた。自分がやってきた場所がどこなのかという思考と、同時に空から飛んできた何らかの技術とそこから出てきたであろう人物を総合的に評価しながら答えを探そうとしているが、そもそも前提が違っている。リオンはあくまで自分の世界のどこかに飛ばされたと思っており、藤原とレオナルドは同郷のような者なのかと思っていた。リオンが発現した帝国名にレオナルドが反応する。


「アイデルフ帝国?きいたことねぇなぁ」


「大陸随一の技術国ということだが・・・」


ピク――


リオンの発言にレオナルドが反応しながらぎらついた表情を見せながら答える。


「へぇ、アウレンシア帝国とどっちが進んでんだろうなぁ!」


藤原は二人のやりとりを見ながら、多分全員色んな勘違いを起こしているんだろうと思っているので、まずは思考をリセットしてもらって皆が置かれている状況を把握させたほうがいいと考えた。


「いや、たぶん全員の考えにはすれ違いが起きているはずだ、まずは前提を合わせたほうがいい。ここは天の川銀河系、太陽系第三惑星の地球という星だ。二人とも聞いたことある?」


藤原の説明に二人は別々の反応を示す。


「しらねぇなぁ」

「星・・・?どういうことだ?」


この発言で藤原は大まかな状況を確認できた。例え完璧で無けれども当たらずは遠からず、と言えるはずだ。まだこの後に控えているであろう問題があるので、さっさと二人に情報を与えることにした。


「よし、遠からずもこの状況を説明できるから聞いてくれ、あまり時間もない。まずレオナルド、あんたは多分違う銀河系から流れてきたようだ。ちなみにこの星はある程度栄えているが未だに宇宙を自由に闊歩できるような技術は持ち合わせていない。次にリオン、ここは多分あんたがいた世界とは違う次元の世界だ。この星にはエルミンタル王国は存在しない。お互いから見たら全員違う世界の住人だ。・・・・くそ、未知との遭遇もいいところだ、改めて言うと頭が痛くなってきた。」


自分が言ったことに頭を抱えながらも、とりあえず言い切ってやったぞと思っている藤原と、それを聞いた二人は各々の考えをよぎらせていた。


「・・・精霊と交信しづらい理由にも繋がったな」


リオンは自分と調和を果たしている精霊たちとの交信が難しい状況の理由を探していたが、その原因もわかったことで少し納得していた。一方でレオナルドは相棒との通信を開始していた。


「おう、聞こえたか?今の話の信ぴょう性はどれくらいだ?」


「現在この惑星及び周辺の星々をスキャンしました。街と見られるものが星全体に広がっています。星近郊の宙域には多数の人工物が見受けられますが、宇宙船のようなものは皆無です。またG型主系列星を中心に他の天体が軌道を描いて回っています。我々の星系には見られませんし、銀河系外縁部のゼロ・スペースまでマッピング情報を重ねても類似した場所は見つかりません。」


「ったく、ワーム(ワームホール)にでも食われたか?嵐の所為で散々だぜ。」


やりとりをしている一人と一機?をよそに、急に新しい声が現れたことにびっくりしたリオンと、あんだけでかい宇宙船を動かしているからクルーの一人くらいはいるだろうなぁ、という思いから聞いていた藤原だが、後の自己紹介でびっくりしてしまった。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。わたくしインフィニオン社製・戦術思考型万能AIであるセリウス・アルタイルと名を頂戴しております。どうぞよしなに。」


そう自己紹介をしながらホログラムが浮かび上がった。見えている映像からは小型ロボットのような見た目でよろしく手を振っているように見える。


「ファッ・・・AIだったの・・・」

「ゴーレムか・・・?」


藤原とリオンで別々の驚きをしているが、それはさておいておこう。


「敵性反応はありませんでしたのでそれほど気にはしませんでしたが、一応皆さんのスキャンもさせてもらいました。申し訳ありません。」


「わりぃなぁ、クセみてぇなもんだ」


レオナルドとセリウスが申し訳なさそうにするが、仕方のない事だろう。別に何とも思わない藤原だが、ついでにセリウスが確認をしてきた。


「そちらに寝ておられる方も確認しましたが、怪我をしておられるようです。治療いたしますか?」


「あ」


言われてそういえばと思い藤原が顔を向けると、この騒動の前に藤原に危害を加えようとしていた暴漢の姿が横たわっているのが視界に入った。


「あちゃー忘れてたわ・・・」


「逃げ遅れか?」


次から次にパニックが起こったもので、途中からすっぽり存在を試行から消してしまっていた藤原だ。問題が一つ増えたが、さっさと済ませてしまおうと思い、レオナルドとセリウスに返事を返しながらも行動を始める。


「いや、あいつは大丈夫だ。こちらの都合でね、対処していた途中だった。」


そういいながら暴漢のほうに近づいていき、いまだに気絶しているが男の頭に手を近づけ、サイキッカーとしての能力を発動させる。


「サクっと終わらせるからちょっと待っててくれ―――メンティス」


藤原がサイコメトリーを使用して、対象者の思考や記憶を読み取ることを始めた。サイキッカーの初心とも言える能力である。サイキッカーとして目覚めるきっかけとして授かる能力であるサイコメトリーはこの世界に踏み込むための登竜門である。人によってはこれだけで一生を終わる。それでも等級区分としては下級のテレパスターになるが。これに加えてテレキネシスなどが扱えるようになると、より中位の等級であるサイキックナイトとなり、エネルギー変換などの複雑な処理が可能となるサイキッカー達は上級の等級であるプシオロードと呼ばれる。藤原の能力はいかほどか?既にその片鱗は見せているので想像はできると思われるが・・・


「うし、終わり。ただのバカの暴走っぽいな」


そういいながら藤原が相手の記憶を読み取り、その背後関係を調べた結果、そこまで裏のあるような出来事ではなかったことを知る。ついでに藤原がサイキック能力を使っている時にセリウスはひそかに観測をしていた。


「未知の波動を検出。レオ、落下時の出来事と類似性の高いものです。」


「あぁ?そいつぁ改めて礼を言わねぇといけねぇなぁ」


二人が上空で遭遇した藤原の支援にあたりをつけたので、後程またそれについての礼をしないといけないなとレオナルドが考えていた。藤原が二人のもとに戻ってきながら話しかけた。


「すまん、もういいぞ。」


「敵か?」


リオンが聞いてくる


「敵と言えば敵かな?まぁ俺の敵ではないんだけど」


自分に敵意を向けられたということで、敵ではあるが。対処できるものなのでこれといった問題にはならないと藤原は思っている。それよりもこれから対処しなければならない別の問題がすぐに発生するので、それの説明を早くしようとしていた。


「とりあえず、二人には慌ただしくなって申し訳ないが、これから問題がたくさん発生する予定だ。この惨状だからな。警察はくるだろうし、場合によっては軍が収拾をつけにくるだろう。空から降ってきた火の玉は宇宙船だったというとんでもニュースがもうすでに報道局あたりには駆け回っているだろうしな・・・」


そういいながらこの先日本・・・というか世界はどうなるんだろうかと、問題を誰かに投げつけたい気分の藤原である。


「ちっ、面倒になるってことか。セリウス!クローク発動しとけ!」


「クローク起動。各種電磁波および大気等の影響を遮断します。」


レオナルドがセリウスに命じると、すぐに宇宙船に変化が現れた。徐々にその船体が透明になっていき、空中に浮かぶ巨大な塊は、忽然とその姿を消したようにいなくなってしまった。


「なるほど、ステルスか」


藤原がその効果を呟く。これなら少しは時間が稼げるかなと思った。


「リオン、動けるか?落ち着いた場所に移動したい、そこでもうちょっと話を詰めよう。俺も二人の話を聞きたいしな。」


「わかった」


津波を防ぎ切ったリオンが疲れているかなと気を使って聞いてみただけだが、やはりちょっとは無理をしていたのか。なるべく早くどこかで休ませたい。もう少しふんばってもらって、あとは全員を連れて離脱するだけか、と思っていたところ―――


「オイオイオイオイ、クソどーなってやがんだこれはよぉ!」


そういいながら西洋人寄りの風貌の男が現れた


「クァッハハ!クソにも役に立たねぇ野郎だったな!しかもクソ騒がしくなって何事かと見てたが、クソわけのわからねぇことになってるしなぁ!」


そういいながら現れた男は空中に足場を作っているかのように、少し上空に立っていた。大きな声で語りかけながら3人の方を見据え、特に藤原を見ながらニヤついた表情を見せつけていた。


「テメェが藤原のクソ野郎かぁ!!噂もあてにならねぇなぁ!クァハハハッハハ!」


「かーっ!面倒なときに・・・」


暴漢の記憶を読んだ時の見た内容のままの相手がそこに立っていた。べらべらとしゃべる男にあきれながら肩をすくめる藤原だが、回避できない一触即発の事態のようだ。


「ここで死んでもらうぜぇ!日本人!」


―――突如としてサイキッカー同士の戦いが始まろうとしていた。

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