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レオナルド・アウレリウス・アルカディウス

がんばります

遥か彼方の宇宙空間で、レオナルド・アウレリウス・アルカディウスは燃えるような赤い瞳を光らせながら、自分の乗る宇宙船を操っていた。


「システムエラー発生。エンジンが過熱しています。」


「過熱しているなら冷やせぇ!」


AIの声が鳴り響き、レオナルドは考えていることを、意味もないということを知りながらも大声を出しながら指示していた。

――ニューロン接続型・高速機動戦闘艦「ランサーソード」


声に出さず、操作をせずとも脳神経と接続することで直接コントロールを可能とするハイエンドモデルの宇宙戦艦。戦闘機としての性能に特化したもので、高い機動性と攻撃力を持っており、操縦者の力量にもよるが、中小規模の小競り合いでは遭遇したら逃げろとまで言われるじゃじゃ馬船である。これを乗りこなしているのが現在大規模戦闘の真っただ中に身を置いているレオナルド・アウレリウス・アルカディウスーーーアウレンシア帝国の皇子である。


「しゃらくせぇ!どっから湧いてきやがる!?」


バルカン粒子砲、シーカーミサイル、グラビティバースト・マイン。光が飛び交い、重力場変動により相手を圧殺していく中で、途絶えるよりもレーダーに更に増えていく敵影が目の前の3次元マップに表示されていく。


「どこのバカがタルタロスの霊結晶を使いやがった!!」


底知れぬ深さがあるとされている冥界の牢獄から湧き出る、この銀河でもっとも忌み嫌われる異なる世界から現れるとされる生命体が、周辺の他の宇宙船(・・・・・)を飲み込み、浸食させながら他の生命にさらに取りつこうと暴れだす。


もともとは宙賊を始末するだけのルーティンのはずだった。

中規模の船団だとしても、うまく宙域を確認して戦略を練って、相手を踏みつぶしていくことでゼファー星系を守護していく・・・それが使命でもあり、レオナルドの役割でもあった。


窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ)・・・鼬の最後っ屁(いたちのさいごっぺ)・・・どうやら追い込まれた宙族がとった行動は、取扱禁止指定鉱物であるタルタロスの霊結晶を砕くことであった。たとえ、自分たちも巻き込まれると分かっていたとしても、よほど恨みがあったのか、今では知る由もない。


「宇宙を漂うウジムシどもがっ!貴様らにくれてやるタマなど一つもないわっ!」


レオナルドは、憤慨しながらも、集中力をより高めていった。同調するように光る船体とコックピットであふれる粒子が神秘性を高めている。迫りくる冥府の亡者たちから機体を高速で回転させ、敵の攻撃を避けつつ、搭載している兵器で迎え撃つことを続けていた。


しかし、どう足掻いても敵の圧力は衰えず、酷使を続ける宇宙船の動力部も過熱を続けてしまっていた。


「腹をくくるしかないか・・・前方に障害はない!次の接敵を回避してこの場から離脱する!」


急激な加速と減速、旋回がレオナルドの身体に大きな負荷をかけていくが、その踏ん張りもあってか敵の猛攻が一瞬途切れた。

レオナルドは急いで超光速跳躍の計算を始めた。あまり余裕がない時間の中、設定できるのはたった一つの方角、その距離もおおざっぱに決めて天運に任せるしかない。行きつく先は知らない銀河系か、はたまた地獄か・・・


「ぐぉおおお!!!次出会ったら必ず駆逐してやる!!」


最後に特大の戦略級兵器をぶっ放し、大量の敵の死骸を作り出していく中、戦艦は宇宙の彼方へと消えていった。


「・・・くそが」


周囲の光が線となって流れていき、ワームホールのような空間を泳いでいる状況でようやくレオナルドも一息入れることができた。跳躍中の船体は、ワープアウトするまでは基本的にはやることはない。


(そら)のゴミクズどもがぁ・・・・どこで手に入れやがった・・・」


宙族が手に入れていた霊結晶、本来なら手にすることも拝むことすらほぼ不可能である品である。あのやっかいな生物を呼ぶ鉱物である。どのように生成されるのか、どこに誕生するのか全く分かっていないものである。今では宙族もいない、自分もあの宙域からは逃げているため、考えても仕方のない話であった。


「とにかく、うまくいってくれよぉ・・・ぐっ!」


基本的に安全ではある跳躍中でも例外はある。ワープストーム、ときたま発生するワープ中の災害のようなものである。宇宙空間に存在する微小な粒子が、光の速度で移動するワープの中で激しく衝突することによって発生する。これらの粒子は、通常、宇宙空間に漂っている宇宙線や磁気場の影響で遅い速度で移動しているが、ワープ航行中には船体の周りに発生する強力な磁場がこれらの粒子を加速させ、光の速度で移動するようになるため、船体と粒子が衝突すると、放出する強いエネルギーが不安定なワープ空間に災害レベルの影響を及ぼす。運が悪いと感じた時は、それが続くことがままある。レオナルドは再度、運よく不運に見舞われた。


「くそ!どうにもならねぇ!常に予測線を計算させていても回避できん・・・ぐあっ!」


船体が大きく揺れる中、レオナルドも思わず身構えた。上下左右も判別できなくなった嵐の中、高負荷を受けていたレオナルドはブラックアウトしてしまった。


レオナルドが目を覚ますと、既に船体はワープアウトをしていた。

すぐさま頭を覚醒させ、周囲を見回し遠くに見える星の配置から自分がどこにいるのかを推測した。しかし、彼にとってはまったく馴染みのない星座ばかりだった。

光速に近い速度で移動を続ける船体を操作するためにニューロン接続を再度試みたが、更に問題が発生していた。


「コネクトしねぇ!」


レオナルドは目を血走らせながら船体との接続を行おうと試行を続けた。嵐の影響で船体も傷ついたため、一時的に機能がシャットダウンされている状態である。


「システム、リジェネレートモード」


傷ついた船体が使い物にならないか、というとそうではない。インフィニオン社が開発した特殊な素材を用いて船体を造ることで、AIが船体を自己診断し、破損個所が自己修復されるという特別仕様である。主要機関でもない限りはその修復も早くーーー


「システム、フルリブート」


「ったくおせぇんだよ!・・まぁ信用してたけどなぁ!」


このままノーコンで突き進んだらどこに突っ込んでしまうかもわからない状態である。早速機能を回復させた船体にニューロン接続するため、意識を集中させていたがーーー


「・・・・おいおいおいおい!」


主観的に見た場合まだまだ遠い距離に思われるが、宇宙空間での距離で換算すると、気づいたら目の前には・・・という状況である。見えてきたのは一つの星系・・・・の中に存在する星。青く輝くその惑星には、大陸のような形が見え、白い大気が覆っている。暗くなっている場所からは光がいくつかの場所にまとまり放たれていた。


「まずいまずい!!!はやくコネクトしろ!!」


青い星に突っ込んでいくさなか、何かしらの物体のようなものがいくつも周辺に存在しているのも発見したが、もはやそれが何かを考えるよりも、船体を制御しなければ自分はよくわからない場所に墓標を建ててしまう・・・という認識から、ただひたすら接続することだけに集中を高めていった


「バイタル、オールグリーン、コネクトレディ」


「おらぁああ!!!!!」


AIからの応答後、即座に船体にブレーキをかけるべく全力での制御を試みる。しかし残念なことに、レオナルドが制御下に置いたタイミングで船体は大気圏を突入していき、大きな火の玉を作りながら地上まで落下を開始していた。




――――レオナルド・アウレリウス・アルカディウス、地球との遭遇である

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