妄想の帝国 その79 ニチハン友好裏事情
隣国ハン国のパン総理と繁華街ギンギンザで豪遊するニホン国キジダダ総理。テレビカメラの裏での二人の会話は…
ニホン国3月中旬。春先は思えぬほどの暖かさのなか、隣国国首相の久方ぶりの訪問に首都トンキョーの繁華街ギンギンザは賑わいをみせていた。
“10年ぶりのハン国パン首相の訪問です!我がニホン国キジダダ総理と公的会食の後、私的にも会合、このギンギンザにおいて何軒もの店をめぐるという親しさで…”
生中継のテレビカメラに笑顔で答える両首脳。
“お二人の和やかな会合、これでニチハン関係の改善が図られ”
というアナウンスに、プッと吹き出すハン国パン首相。
「あーキジダダさん、あいかわらずバカバカしいですねえ、ニホンのテレビ。トップが税金を使って私用で豪遊しているというのに批判もしない。まじめなハナシアイなら昼間の会議で行いますよ」
マイクが拾えないように小声でいうパン首相にキジダダ総理は
「何をおっしゃるパン首相、ハン国でのあの国際野球試合でのニホンへの対抗意識の煽り。あれは、前の旧態依然の身内主義、権威主義的なやり方に戻ったことへの国民の不満をかわすためでしょう。あなたこそ、うまくマスコミを使ってますよ」
「まあ、ニホン国への敵意をかきたてることで、国内の不満をかき消せます。ニホン国だってそうでしょう、前のアベノさんやガースさんがよくやってたように。だいたい、われわれトップどうし、特にわが党とニホン国はいろいろつながりがありますから。それなのに、その辺の裏事情をわからないで、ハン国の真の独立、国際社会の地位向上なんて目指すから、前のムンは」
「そうですよ、パン首相。前のムン首相は本気で改革にとりくみ、男女平等とか、財閥解体なんぞやろうとしたから、本当にやりにくかった。ニチハン関係の見直しなんぞやられ、アジアでの新秩序構築なんぞやられたら、困るんですよ。我々世襲の先祖の罪がバレバレになって、両国の政治家の多くが引きずりおろされるし。第一アメリカ様の御威光に逆らうことになりますし」
「そうなんですよ、キジダダ総理。表向きは適当に対立してますがね。本当はパン国政治家とニホン国与党政治家は密接な協力関係にありますから。真面目にハン国がニホン国依存を脱却したらお互い不味いことになります。以前からの裏取引、その利益がなくなってしまう。それだけじゃなく、国民をわざと争わせ、防衛予算だのを増やし、関連会社を儲けさせ、リベートをもらうことができなくなります、軍関係者も失業です。とくに隣国との関係は緊張でいいんです。下手に統合したら…」
「軍事費増強はナシ、関連企業は倒産しかねない。今までの秩序が全く変わります、ハン首相、与党のあなた方も今までのうまい汁は吸えない、下手するとアレコレがバレて、刑務所行き、それは嫌でしょう。それに安価で能力のある労働者が一気に入ってきて、産業ほかでハン国の景気がよくなりすぎたら、我が国も困るんですよ。ハン国を下にみることで、自分らの凋落から目をそらしてるんですからニホンのネトキョクウどもは。それがなくなったら、国が悪い、政府が悪いってこっちに矛先が向きかねない。奴らは論理矛盾、支離滅裂な主張を平気でやる。気分で動くから、いつ我々ニホン国政府与党ジコウ党に敵意をむけるかわからない」
「国民をそういうふうにしたのは、ニホン国政府そのものだってムンがいってたらしいですけどね。まあ、そういう風に教育してメディアが誘導してますから。それがニホン国の前のアベノさんやガースさんが特にそれをやっていた。表向きは周辺国の対立をあおって、国内の貧困や差別問題を矮小化させ、国民の管理を強める制度を強行させた。防衛費を増やすのは実は中抜きや賄賂横行の軍事産業を儲けさせ、アメリカ軍の武器を下取りすることでアメリカ政府の歓心を買い自分たちの立場を安定させるためでしょう?それをあたかも国民のためといいやすくしたわけですから。実は自分らを脅かすミサイルを自分ら政府が撃たせてるなんて、ホントにおめでたい国民ですねえ」
「あまり言わないでくださいよ。そういうのに支持されていることになっているんですから、私たち与党は。まあ、実態は大企業やら組織の動員、地方の封建的社会のなれ合い、それとハン国の宗教団体モドキの組織票なんですけどね。ハン国が上、ニホン国はその下などという団体ですが、まあ使えますよ」
「あれは正式にはハン国の宗教団体ではないですよ、うちは認めてませんから。だいたいあいつらは北にも貢いでいるという話ですし。それこそハンニチ団体で、それと与党が結びついて、報道もされているのに、ろくな追及もしないなんて、マスコミが甘いというか」
「ふふふ、アベノ総理から放映法を曲解して、マスコミの締め付けを厳しくしてますから。世界中でこんなヒドイ、あべこべ法はないんですけどね。真実追及を目指す、特に政府の嘘をばらすのが目的のマスコミを逆の目的、政府を守り、国民を骨抜きにして従順な奴隷にするほうに協力させているんですから」
「ああ、それでダカイチとかいう女が追及されている国会中継から目をそらさせているんですね。あいつが自分たちマスコミに対して違法な締め付けをしたのだから、それこそ追及してあの連中を丸ごと追い落とせば自由に真実を報道できるというのに、ニホンのマスコミも愚かですねえ」
「国際大運動大会だの国際野球大会だのの放映権という一時の金儲けに目がくらんでいるんですよ。だいたい真実の追及や検証なんて面倒くさいし、頭がよくて緻密な人じゃないと難しいじゃないですか。おバカで努力しなくてもアナウンサーです、報道記者ですってかっこいい頭のよいフリが出来たら、その方がいいでしょう。政府に従っていれば見かけだけは知的マスコミ人のフリをできるんですから、才能もない凡人でも。国民だってグルメ番組とスポーツ中継でいい気分なれるんですから」
「パンと見世物ですか。それで本質的な問題から目をそらし続け、ローマは滅んだんですけどねえ」
「滅びる前に我々だけは逃げればいいんですよ、そうでしょう」
「それもそうですね、だからこそアメリカだの中国だのに太いパイプをつくるんですよ、先祖のように戦犯だの国の裏切り者といわれようと、生き延びれればいいんですよ。どうせ国民も忘れる」
「そうですよ、ニホン国民を御覧なさい、ウイルス対策の大失敗も株価低迷、種々の値上がりなども、もう忘れてるし。重要法案や与党議員の不正など、自分たちの生活の関わる問題は脇において、野球中継に夢中になってますよ」
キジダダ総理の指さす先には、ビルにつけられた液晶テレビから流れる試合の画面にくぎ付けになる聴衆たち。足元には“マイマイナンバー保険証義務化”書かれた新聞が踏みつけにされ、“米国銀行破綻金融危機到来か”の号外が散乱していた。
どこぞの国は国会の重要法案審議も、大臣のトンデモ言動の追及も、金融危機も、スポーツ大会での優勝ですべて吹っ飛んでいるようですが、ついでにトップの目玉外交も飛んで行ってしまったようですねえ。鼻薬を各所に効かせ過ぎて、効果120%ってな感も無きにしも非ず。