美少女の体重はA4サイズの紙
道中は僕の方が移動速度が速いから、何度か振り返りながら行く必要があった。クエストの詳細に書いてあった通り敵は容易に避けられるほど少ない。
特に戦闘になることも無く村が見える所まで辿り着くことが出来た。
「シャー」
「ふぅ……ついにですね……」
目星を付けておいた村長の家へと行きたいけど、村の中を警戒してる村人が邪魔だ。流石に尻尾で叩きつけたりするのは可哀想だから音で誘導する。
「シャァ」
「ん? 何だ?!」
「シャ」
「は、はい……?」
僕たちから離れた木に魔法を放った。村人はまんまとそっちの方向へと行ってくれる。ルーフにも何とか意図が伝わったから良かった。
こっそりと行きながら、やっと目的地の近くへと辿り着いたのだ。とりあえず先ずは村長の家に入りたいけど……窓開いてた。
「シャー……」
「……?」
でも少し高いから、無理矢理入ろうとしたら物音を立ててしまうかもしれない。僕は持ち上げて欲しい旨を伝えることにした。
「シャっ、シャァー」
「白蛇サマ何やってるんですか?」
ルーフも背丈はそこまで大きくないのと、暗いせいで窓が開いてることに気付いてなさそう。とてももどかしい……。
鳴き声も最小限で済ましたい。誰も来ないことを祈りながら体を伸ばして壁を顔で突いたり、尻尾で優しく叩いたりする。
数分後、諦めかけた時にやっと伝わった。言語の偉大さと、身体の色の見えやすさがよく分かる。夜目が効かないルーフがここまで来れたのも僕の見えやすい白を目印にしてたからだ。
「せーのっ」
「シャァっ」
慎重に窓枠に体を引っ掛けて、部屋に誰も居ないことを安堵する。次はルーフを部屋に入れさせなければならない。
「シャ」
「白蛇サマ……分かりました」
ルーフは僕の身体をロープ代わりにして登る。思ったよりもおm……これ以上はよくない。何にせよギリギリ成功した。
部屋の中はどうやら物置のようだった。特に役立ちそうな物は無さそうだ。
「扉は……?」
「シャァっ」
「そっちですね」
僕じゃ上手いこと開けられないから扉はルーフに開けてもらう。でもここで扉に聞き耳を立てなかったのは失敗だった。
開けた目の前に人が居たのだ。
「だれd」
「シャ!」
「ひっ……?!」
僕は反射的に尻尾で叩き付ける。村人は前に倒れるけど地面と激突するギリギリで僕が支えてあとは立てずに済んだ。
咄嗟の事だから力はそこまで入ってなかいから生きてる、よね?確認すると息はしていた。
「あ、ありがとうございます」
「シャァー」
油断、慢心、ダメ絶対。今は何とかなったけど次は分からない。気を付けなければ。廊下は左右に続いている。
右は階段と扉が二つ、左は引き戸が複数連なっていた。悩んでる時間は無いから勘で右に進む。階段はここから見る限りだと屋根裏へと繋がっていそうだ。
一つ目の扉に顔を当てる。
「アイツが帰ってくる前に……を決めてしまわないとな」
「しかし遅いなぁ、小便だろ?」
「まぁアイツも酒飲んでたしな」
一部聞き取れなかったけど何やら不穏な会話をしていた。てか僕がさっき気絶させた奴って……早く地下室探さないと。
大抵こう言うのは離れた所にある小屋とか、寝床に隠し扉的な物があるのがセオリーだ。小屋は無さそうだったから寝床だろうか。
残りの扉に聞き耳を立てる。
「ずず……ずー……がっ……ず……」
汚いおっさんのイビキが聞こえた。ルーフの方を見ると顔を顰めながら頷いたからここが村長の寝床で間違い無いだろう。
静かに開けてもらうと小太りのおっさんが酷い寝相で寝ていた。イビキのお陰で少しくらいなら物音を立てても問題無さそうだ。
ルーフと一緒に色々探すと、物入れの中に階段がある事が分かった。
「白蛇サマ凄い、隠されてたのに……」
「シャ、シャー」
セオリー通りとは言え勘もあったとは言えない。そもそも話せないけども。階段は松明が付けてあったから躓くことはない。
下まで着くと、かなり開けた場所へと着いた。奥には大事そうに飾られた、僕が付けてる宝石を数十倍にも大きくした物を嵌め込んだ木の杖が飾ってある。
「あ、あれは私の……」
「シャァァっ!!!」
ゲーマー特有の嫌な予感がした。僕はルーフを後ろに突き飛ばすとその瞬間、背後から爆音が鳴り響く。
「魔造石像起動、命令ニ基づいて対象ヲ抹殺シマス」
「シャァ?!」
「え、あ、何が?!」
「シャー!」
「白蛇サマ?!」
「シャァ……」
「は、はい……!」
ルーフに後ろに下がるように体を押し付け、直ぐに逃げてくれた。敵は石で出来た十メートルはある動く石像。
巨大な拳は直撃すればタダじゃ済まない。ルーフを追おうとする魔造石像を止める為、挑発を使う。
「シャァァァァ」
「!!!」
成功したのか視線が完全に僕の方へと向く。圧は双突獣以上だ、でも不思議と恐怖心は湧いて来ない。僕は繰り出される拳を避け、目の前の敵を睨んだ。絶対にぶっ壊してやる。
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