笑顔を見たいから!
少し短めです
無事に潜入出来た僕は早速色々漁る事にした。中は洋風の古そうな家だが、家具などはしっかりと綺麗にしてある。誰か来たら困るから早く漁らないと。
机とかには何も無し、なら引き出しかな。口で取っ手を引っ張ると中に革のポーチが入っていた。何とかして開けると中には一枚の手紙がある。コレが目的の物だろう。
「シャー、シャ?」
とりあえず元に戻……せない。手紙のままアイテムとして取ろうとしても取れなかった。白蛇じゃこう言うことがとてもやり辛くなってる。
「おーい、誰が居るのか?」
しかも運が悪い事に扉から村人らしき声が聞こえる。早く戻さないと……!
「一応確認しておくか……盗人が居たら困るしな」
居ないよー、誰も居ないよー。だから帰って欲しい。少なくとも僕は盗人ではない。だけどここを見られたらどうなるかは火を見るより明らかだ。
ここをこうしてこう、よし出来た。扉が開く音と同時に戻す事に成功する。僕は急いで穴へと入り、窮地を脱した。
「誰も居なかったな……」
「シャ……」
その後は寄り道せずルーフの元へと帰った。僕は怪訝な目を見られながら、革のポーチを出す。
「これは……お母さんの?」
「シャー」
ルーフは手紙を読み始める。少しした所で何故か口に手を当て、泣き始めてしまった。そう言えばお母さんって一体どこに……。
「お母さん……わたしを置いていかないでよ……」
勘が鋭くない僕でも分かる、リーフのお母さんは死んだってことを。その時、雰囲気をぶち壊すかのように特殊クエストの表示が出る。
『特殊クエスト、【涙の無い旅の準備】が開始しました。詳細を開きます』
【涙の無い旅の準備(推奨レベル3〜)】
時間制限:3日
達成条件:ルーフの???を回収、ルーフを死なせずに村からの脱出
失敗条件:3日経過、ルーフの死亡
達成報酬:不明
追記:ルーフの空腹度にも注意。なお鍵を壊してからは森の敵が数が少なくなる代わりに、クエストを達成するまでは安全な場所が無くなる。
また時間制限だ、しかも今回はルーフにも危険がある。レベルも足りてないしかなり頑張らなければならない。
空腹度もしっかりと減るみたいだから猶予はそこまで無いだろう。確認し終わると、泣き終えたルーフが目を赤くしながら話しかけてくる。
「……白蛇サマ、わたしに協力してもらえますか?」
「シャァ」
「怖いけど頑張らないと……村に行くときは鍵を壊してください、それを合図にします」
「シャー」
「不思議ですね……わたしがお母さん以外に頼れる人が白蛇サマなんて」
「シャ?」
「しかもわたしの言葉が通じてる、まだ絶望するときではないのかもしれないです」
確かに言葉が通じる白蛇は不思議だろう。ゲームのキャラと言われても信じられないほど自然に動き、喋る彼女を見て僕は一つ決心する。
ルーフに笑顔で居て欲しい。まだ分かってることは少ないけど少なくとも、ただのNPCだと思って接することは僕には出来ない。
それに現実では冴えない僕でもゲーム中くらいは格好付けたい。僕と言う不思議な存在に会えたルーフには少しでも楽させてあげたい。
ついでに僕の名前も呼んで欲しい。何とかしてそれだけでも伝える手段を探さなければ。
「シャァー」
「白蛇サマ……?」
目標は決まった、僕は一鳴きしてからレベル上げへと向かった。
読んで頂きありがとうございます、良ければブクマやポイントをお願いします




