思ったよりも話が重い(遠い目)
三つ目の忌子……文字通りのことなんだろう。絶対に良くないモノだよあれ。
「白蛇サマ……お礼にこれをどうぞ」
「シャァ?」
僕の顔から少し下辺りに、紐が倒された小さい青色の綺麗な宝石を付けてくれた。多分これが少女の御守りだ。装備の詳細を確認する。
少女の御守り(特殊装備)
レア度:A+
装備効果:魔法威力30%上昇、24時間に1回だけ致命傷を防ぐ、少女に対して僅かに意思が通じやすくなる
多分ゲームを始めて一時間ちょいの初心者が手に入れて良い物じゃない。最後の効果が一番大きいと思う。
「あ、あの、お母さんからもし白蛇サマがわたしを助けた時に渡してって言われてる物があります」
美少女、ルーフは袖からさっき見た小さな木の板と似た物を取り出して僕の前に置いた。それはまた蛇語で書かれている。勿論問題無く全部読むことが出来そうだ。
『白蛇サマへ、私の娘を助けて頂きありがとうございます。使われる言語はまだ勉強不足で拙い部分がありますがご容赦を。早速ですが本題に入ります、白蛇サマには娘と共に村まで行って……を回収させて頂きたいのです。ですが意思疎通は娘との困難と思われます。なので先に白蛇サマには私の家に行き、渡し損ねた手紙を取って頂きたいのです。分かりやすい様にマークは付いています。無事に回収出来れば娘の……が……でしょう。どうかお願いします。場所は村長の家の地下室です、手遅れになる前にお願いします。そして愛娘のルーフをどうか、どうかお願いします。
母より』
「シャァ……」
わぁ……一気に展開が進んだ。それに所々肝心な所が読めないし。
「本当に白蛇サマはわたしを食べないのですか……?」
「シャァァ」
「良かった……」
ルーフはそう言って疲れたのかその場で寝始める。立ち直れば結構強い子だった。僕も休憩がてらログアウトをする事にした。
するとログアウトボタンの下に、サポートルーム(ハク専用)と言うのがあった。試しに僕はそれを押すとチュートリアルの時の空間に戻って来たのだ。
「お疲れ様です、大丈夫ですか?」
「大丈夫……って喋れてる?! それにその姿は……?」
「折角なので運営を締めるついでに、馴染みやすいように身体を貰って来ました。どうですか?」
「美人」
「それは有り難いですね」
綺麗なロングの黒髪に、大和美人で落ち着いた緑色の着物を着た百七十センチくらいの大人な女性が浮かんでいた。
「私の事はリョクとでもお呼び下さい。ここはハクのメンタル面の癒しや愚痴を吐く部屋となっておりますから」
「ふむふむ」
「姿も元の人間へと変われますので安心してくつろいでください」
「僕だけこんな色々して貰って良いの?」
「何も問題ありません、セクハラは困りますが」
「しないよ?!」
「ふふ、ハグなどは許されてるのでどうぞ」
リョクさんは両手を広げて僕を待っている。何か背徳感があるけど折角だから人の姿になって近付く。決して下心は無い。
「落ち着きますか?」
「うん」
「良かったです、よしよし……」
「ん……」
優しくハグされると良い匂いと共に包まれる。とてもふんわりとしてて、頭を撫でられるたびに心が落ち着いて行く。
「本当に体をもらって良かった……管理AIに後でお礼を……」
管理AIさん本当に何者なのだろう。割とノリノリなのかな。ずっとこうされたいけどこれ以上されたら駄目になる気がする。
「ログアウトしないと……」
「あら……名残惜しいですがさようならです。離したくない……」
「ありがとう、また今度来るよ」
「いつでもどうぞ、待ってますから」
リョクさんから名残惜しそうな視線を受けながらログアウトする。水分補給だったり昼食を取ったりしてまたゲームに戻る。
ログインしようとすると、サポートルームに飛べることが分かった。だけど今は用がないし、何となく次は離してもらえなさそうな気がしたから行かない。
「シャァ」
「お、起きましたか」
ログアウトしてる時はどうやら僕は寝てる事になってるらしい。消えるわけじゃないから外でログアウトしたら不味そうだ。
僕はステータス画面を開くと、空腹度がまぁまぁ減っている事に気付く。ルーフもまたお腹が空くはずだから色々取ってこないと……。
僕が穴から外に出ようとすると声がかかる。
「また外に出られるのですか?」
「シャァ」
「お気をつけてください」
「シャー」
ルーフからは不安が込められた視線が向けられる。だけど御守りもあるしミニマンモスじゃない限りは問題無く勝てるから大丈夫だろう。
とりあえず僕は森に入る前に、社全体を見ることにした。正面へと回り、全体を見ると古ぼけてはいるけどちゃんと手入れされたり修復された跡がある。
引き戸には南京錠が付けてある。アレを壊せばルーフも出られるはずだ。だけど今は壊さない方が良い気がする。
そして僕は村探しも兼ねて前行った方向とは反対へと進んでみる事にした。
読んで頂きありがとうございます
日刊十二位まで上がれました、勢い十割ですが一位目指して頑張ります