美少女のために!
森に終わりは見えない。現実だとこう言う場所は減ってきてる。綺麗だしちゃんと色々見てみたいくらいだ。
僕を抹殺しようとしてくる敵さえ居なければだけど。
「シャァァァア!!」
「ピィイイイ!」
大体二メートルはあって体は緑色に黒色の尖った嘴を持った怪鳥が木の上から襲いかかってきたのだ。今の状況は木の枝に立たれて噛み付く事が出来ない僕を、怪鳥が嘲笑うかのように鳴いている。
「シャァァ……シャア!」
「ピィ?!」
MPの消費は出来れば抑えたかったけど仕方ない、魔法を使うと怪鳥は避け切れずに火の粉を散らしながらフラフラと墜落した。
僕はチャンスとばかりに毒牙で噛みついて、また飛ばれないように身体を巻き付かせる。怪鳥は暴れてるけど僕の拘束を解き切れずにアイテムへとなった。
落としたのは怪緑鳥の羽、鶏肉の二つ。鶏肉は食べれそうだけど……どう調理するんだろ、火球とか?
それとさっきの怪鳥、改め怪緑鳥が立っていた所を見ると何やら巣のようなモノが見えた。……蛇って木登り出来るのかな。
僕は木に身体を巻き付けて力を入れる。そしてちょっとづつ上に移動を試みた。
「シャー……」
出来ちゃった、しかも案外余裕だ。巣まで辿り着くと大きめの卵が一つある。触れると回収出来て、怪緑鳥の卵と言う名前だった。
これならあの美少女でも食べれそう。だけど卵一個で腹を満たせるとは到底思えない。枝から飛び降りて別の食糧を探す。
数分後。
「シャァァァアっ?!」
「ブォオオオッ!!!!」
後ろからは凶悪な二つの角を僕に向けて、重い足音を響かせながらマンモスを小さくした獣が串刺しにしようと迫っていた。
何故そんな事になっているかは分からない。一つ心当たりがあるとすれば偶然見つけたブルーベリーをハンドボール程に大きくした果実を取ったことだろうか。
何にせよ僕は悲鳴を上げながら余りのリアルさに恐怖し、逃げ回っていた。ゴブリンとかは大丈夫だったけど今回は耐え切れない。
このままだと先に尽きるのは僕の方だろう。怖いけどとても逃げ切れるとは思えない。僕は進行方向を見て打開策を考えた。
「シャァ?!?!」
「ブモォッ……?!」
「シャー!」
進行方向にあった物、それは太い木だ。さっきの木登りで僕の身体でも可能と言うのは分かっていた。それとミニマンモスに急停止が出来ないと踏んだからだ。
こうして賭けに勝った僕は、目を回している隙に惜しみなく魔法を使う。噛み付いた方が良さそうだけどそこまでの勇気は無い。
幾ら物理耐性があると言ってもあんな突進は受けたくない。ってかこの間ずっと攻撃してるけど全然倒れてくれないんだけど。
MPが半分以上無くなった頃にやっと倒れてくれた。二度と戦いたくない……。幸い果実は多く取れたし、時間もそろそろ危ないから戻らないといけない。
逃げ回ったり探し回っていたせいで道は覚えてないけど、親切な事に表示される範囲は狭いけど自動マッピング機能はあるから帰る事は出来る。
通った道を辿りながら社の中へと僕は戻った。制限時間は残り十分を切っている。早く渡さないと。果実と卵をドサっと置くと美少女が反応する。
「な、なに……白蛇サマ……」
「シャァ、シャー」
「食べ物……? 高級品の怪緑鳥の卵もある……」
「シャっ」
「なんで……?」
「シャァァ……」
「……わたしが食べるの?」
「シャァ」
美少女の察しが良くて助かる。土下座もしてないから美少女の顔を拝みたいけど食料を顔で美少女に近付けて、問いかけに肯定するように鳴く。
「た、たべます」
美少女は恐る恐る卵を床に打ち付ける。さてと……ご褒美として顔を見てもバチは当たらないだろう。僕は見上げて美少女の顔を見た。
「シ……」
声が無くなるレベルで綺麗で、儚く、整っていた。小顔で目は黄色、シミの一つもない。でも額にそれを邪魔する意思があるようにしか思えないモノが付いていた。
「三つ目のわたしが……卵を食べれる……」
それは紫の煙を出している真っ黒の目。ギョロギョロと気持ち悪く動き、見るものを恐怖させるだろう。何でこんな美少女にこんな禍々しいモノが。
唖然としているとクエストを達成した旨が出る。
『特殊クエスト、【少女の腹を満たせ】をクリアしました。隠し条件の達成も確認しました、報酬を開示します』
報酬:SP10、少女との絆、少女の名前
隠し報酬:少女の御守り
美少女の巫女服から何かが落ちた。それは小さな木の板だった。よく分からない言語で何か書かれてるけど何故か僕には読めた。
三つ目の忌子、ルーフ、と。
日刊二十二位です、ブクマとポイントを投げてくださりありがとうございます