どうにでもなれっ!
「読み終わりました」
「シャ」
「ぼぁー……」
白桜が時々身体を擦りつけて来るからちょっとだけ暑かった。何でそんな寂しそうな目するの、僕はずっと近くに居るでしょ。
「この街は丁度商業ギルドと共に出来た街で、代々仲がとても良いそうです。ですから突然来られても匿うことが出来たんだと思います。なのでリリアと今の領主、カヤナ=ルーブドルはお互いの秘密もある程度公開してるはずです」
この街本当に大丈夫なの?こんな事実が表に出れば暴動が起きる。
「当たり前ですが領主邸の間取り図はありません。行った時に確認するしかないですね。他に大事そうな情報は無かったので後で二冊とも私が返しに行って来ます」
「シャー」
それはとても嬉しい。流石に本棚に差し込むのは無理だから最悪窓から放り投げようと思ってたところだ。ルーフは一人で図書館に行ったから暇になった。
特に街の外に行くつもりもないからやることがない。強いて言えば白桜と意思疎通を試みることくらいだ。
「シャー」
「ぼぁー?」
「シャ、シャァーシュゥゥゥ?」
「ぼぁあ!」
……なるほど分からん。領主邸に行くことになったけど今の気持ちは?と言ってみたけど伝わる訳がなかった。仮に伝わってても今度はこっちが分からない。
そうこうしている内にルーフが帰って来た。
「あの図書館本当に大丈夫なんですか? 私が話しかけても起きませんでした」
「シャァ……?」
盗み放題だろうけどそう言う事件が起こってないところを見るに、治安が良い街なのだろう。リリア関係以外は。
「さて……白蛇サマ、白桜ちゃん、領主邸への突撃は明日にしますか? そうするなら今から準備をしなければなりませんが」
猶予はまだ二日ある。だけど時間に余裕があった方が気持ち的にも楽だから早めにやっておいた方が良いかな。白桜は僕の方見てるし。
「シャァ」
「分かりました、侵入経路方ですがぶっちゃけ正面から入るしかありません。どの道これが終わればわたしたちはこの街に居れないです」
「シャ」
「ぼぁ……」
「シーナの実は今日中に買っておきますから」
「……ぼぁ」
本能的に好物が食べられなくなる可能性を悟ったのか、悲しそうな鳴き声をあげた。確かに食料問題もなんとかしないと。
後焼き鳥が食べられなくなるのは僕も困る。
「白蛇サマと白桜ちゃんは……一旦置いておくとしてわたしは顔が隠せる物を付けないといけません。それと荷物はほぼ白蛇サマに持ってもらいます」
「シャー」
「ぼぁー?」
僕たちに合う物がないからそれは諦めた方が早いだろう。リリアにはもうバレてるし。
「わたしは買い物や準備をするので、白蛇サマと白桜ちゃんはゆっくりしてても大丈夫です。出来れば素材は少し欲しいですが。領主邸への突撃は夜の時間にします」
「シャー」
「ぼぁー」
ルーフはそう言ってまた宿屋から出る。この街も後少しでさようならか……短い間だったけど色々あった。僕は街の外に出て少しだけ素材を集めたりして、時間を潰す。
そして次の日、遂にその時がやって来る。
「結局良さそうなのが木の仮面しか無かったんですよね……」
「シャ」
「ぼぁ……」
視界と呼吸だけは確保されてる素朴な仮面をルーフは付けていた。ちょっとだけ面白いのは内緒。色々準備はしたけど少し緊張する。
僕たちは宿屋から出て、領主邸の前へと行く。敷地への入り口は二人の兵士が立っており、当然止められた。
「お嬢ちゃん、ここから先は行っちゃダメなんだよ」
「ちょっとそこに物を落としちゃって……」
「駄目駄目、てかなんだその仮面は」
「白蛇サマ」
「シャァっ!」
「何d……」
片方の門番は僕の尻尾に反応出来ずに気絶した。もう一人は何が起きたかは分からず呆然としていた。その隙にルーフは杖を出して思いっきり振り上げる。
「ごめんなさいっ!」
「がふっ……」
「仮面のことはわたしも気にしてるので触れないでください」
顔を隠すためとは言え羞恥心はあったみたいだ。僕は周りを警戒して、誰も来ないことを確認する。もしかして中で待ち構えてるパターン?
門番が立っていた先の扉は閉まっていた。頑丈そうだけど多分壊せるはず。
「白蛇サマ、行きますよ!」
「シャァ!!!」
開けろ!デト◯イト市警だ!心でそう叫びながら杖と尻尾を叩きつけると、扉は簡単に吹っ飛んだ。
「客が来たぞ! 相手にしてやれ!」
「随分な歓迎ですね……」
「ぼぁー……?」
中は広く、大勢のチンピラみたいな風貌の敵が各々武器を構えて威勢よくかかってきた。領主サマはこう言う奴らも金で雇ってるのかな?
「シャァア!」
僕はそれに炎槍で応え、領主邸での戦いの火蓋が切って下された。
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