図書館は警備がザル
はい皆さんこんにちわ、僕は今死んだ目で授業を受けております。ゴールデンウイークが後一ヶ月続けば良いのに。
昼食の時間は一人で弁当を黙々と食べながら、真横で繰り広げられるガールズトークを聞き流している。
「シードワールド勝った?」
「買った買った」
「まだお金ないー」
「バイトもっと入れよって」
他にもチラホラとシードワールドオンラインの会話が聞こえてくる。このゴールデンウイークでプレイヤーも増えたってのは知ってるけど。
何事もなく学校は終わり、リョクの所へと行った。ハグがとても恋しい。
「学校疲れた!」
「お疲れ様でした、ハク。お知らせを確認しますか?」
「うん」
「ではこちらです」
渡されたものを見ると、プレイヤーがなった種族の割合や近況報告が書いてある。ふむふむ……やっぱり人間が一番多いと。
次に森半人と獣人種が多い。僕みたいなのは……うん、知ってた。割合はお察しの通りほんの僅か。
「プレイヤーの動きは……ん?」
「何かありましたか?」
「僕の壁画バージョンみたいなのがあるんだけど」
内容は新しく発見された遺跡で白蛇みたいなのと四体の悪魔みたいなのが戦ってる壁画が発見された、と言うものだ。
問題なのは構図がそのまんま過ぎる。ルーフと白桜は無いけど悪魔に関しては僕が倒したのと同じだ。どうして……。
「私は詳しく答えられませんが……ハクにとっても他のプレイヤーにとっても重要な情報かもしれませんね」
「何それ怖い」
一通り読み終えてリョクのハグをしっかり満喫した後、ゲームの方にログインする。
「シャー!」
「ぼぁー!」
「おはようございます!」
ルーフは小物作り、白桜は日向ぼっこしてた。僕は気になることを調べに行くために早速図書館へと向かう。
図書館の場所は商業ギルドの近くにあることは分かってる。問題はどうやって入るかだけど、それは考えてある。
そろそろ見慣れて来た裏路地を移動しつつ、図書館の裏へと着く。商業ギルドに強盗……じゃなくて拝借しに行った時にここに窓があることに気づいた。
ちょっと高いけど都合良く置いてあるゴミ箱に乗り、少しだけ隙間がある窓から中を覗く。そこは机や椅子があるスペースだった。特に人は居ないから入っても大丈夫そう。
細い身体を生かしてコッソリと中へと潜入し、直ぐに物陰に姿を隠す。調べたい物は商業ギルドの成り立ち、悪魔、領主の三つ。
少なくともリリアは姿は人間だから歳は若いはず。だから前任者が居るはず。動き回る前に司書さんが居る位置を確認しなければ。
少しずつ動きながら見てみると、入り口の横に司書さんらしきNPCが座っていた。てか寝てる。防犯意識がガバガバだけど今はそれがありがたい。
入ってくる人もほとんど居ないのか、スムーズに悪魔以外の書物は見つかった。当然字は読めないからアイテムボックスに投げ込む。
窃盗?後で返す予定だからきっと許してくれるはず。悪魔についてはいくら探しても無かった。もっと探し回りたいけどバレたら大変なことになるから仕方なく撤退した。
「シャっ……」
とりあえず僕はルーフの前で二冊の本を出し、先ずは商業ギルドの方を咥えて膝に置いた。
「ぬす……いえ、きっとそんなことはありません。これを読んで欲しいんですか?」
「シャァ」
「分かりました」
「とは言え少し分厚いですね、少し時間をください。要点だけ纏めます」
二十分ほど待つとルーフから背伸びをしながら手招きして来た。
「ふぅ……読めたので要点だけ言いますね」
「シャ」
「この商業ギルドは今から百年前に十人の大商人の一人、マルクと言う人物がこの街で立ち上げました。他にもあるみたいですが大事なのはマルクはリリアの父と言うことです」
「シャ?」
「母親については何も書かれてませんが、どうしてかは心当たりがあります。それは後で解説するとして、マルクの死後はリリアが直ぐにギルドマスターになっています。ここで不思議なのは心臓が抜き取られた状態で死んでいると言う点です。当然殺人事件として調査はされましたが、犯人は捕まっていません」
「シャァー……」
「リリアは父譲りの経営術と人脈で反対意見を押し潰して満場一致で現在もギルドマスターを務めている、と言うのがこの本の内容です、ここまでは分かりましたか?」
「シャ!」
明らかにキナ臭いパターンだコレ。それに心臓が抜き取られてたってまさか。
「さて白蛇サマ、悪魔の心臓について覚えてますか?」
「シャ」
この前潰した奴のことだ。多分あの心臓はマルクさんのモノなのだろう。
「アレは悪魔の力と人の心臓が合わさって出来た最悪の能力増幅装置です。それで能力が強化されてたのはリリアで間違い無いと思います。とは言え無事に潰せたので大幅に弱体化してるはずです」
なるほど、ルーフの言う通りなら今は僕たちにとってかなり有利な状況だ。
「それと母親の方は……恐らくわたしの予想が当たっていれば領主邸で生きてるはずです。出来れば救出しておきたいですね」
「シャ……?」
「ですが当たっていればの話なので、第一目標はリリアの撃破です。領主邸の本もありますか?」
「シャー」
「ありがとうございます、こちらも少し時間がかかります。」
ルーフはそう言ってまた読み始めた。色々情報が増えたけど分かったことも多い。僕は白桜と一緒に日向ぼっこしながら待つことにした。
読んで頂きありがとうございます




